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第十話 断罪
しおりを挟むカリーサが実家に帰省してから3日が経った。
いつもと変わらない。
いや、補佐をしてくれているカリーサがいないことが変わっているな。
そんなことを考えながら、書類の整理を行っていると左手首につけていた魔法が大きな音を出しながら赤く光ったのだ。
その大きな音で私に視線は集まったが、それらを全てを無視し、席から立ちあがった。
そして、転移魔法を展開した。
あまり知られていないことだが、魔王様の側近の秘書官には危険を知らせる為の魔法具を身につける義務がある。
理由としては機密情報を守るためだ。
そんなことを考えていた私は転移魔法の光に包まれた。
光が晴れるとそこは何処かの建物の中だった。
周りを見渡すとそこには怒りを覚えるような光景が広がっていたのだ。
いつも仕事着ではなくおめかしたカリーサが知らない男に襲われている光景が。
何かを考える前よりも体を動いた。
カリーサのことを襲っていた男を外に投げ飛ばしたのだ。
そして、直ぐにカリーサに駆け寄った。
駆け寄ったカリーサの目には涙が溜まり、頬には涙が流れた後があったがのだ。
すまない、カリーサ。
遅れてしまって。
そう思いながら、私はカリーサの涙を拭いた。
カリーサの涙を拭き終わると目を開けたのだ。
目を開けたカリーサは驚きの表情を浮かべていたのだ。
「えっ、グリークス様?なんでここに。あ、この魔法具ですか」
「そうだ。そして、済まないな。直ぐに助けにこれなくて」
「い、いえ。助けに来てくれただけで十分です」
「そう言って貰えて助かる。この場は私に任せてくれ」
そう言い、私はカリーサから離れ、襲っていた男を吹き飛ばした出来た穴から外に出た。
「グ、グリークス様。な、何故このような場所に」
「このような場所にか?簡単な話だ。私の秘書官のカリーサを救いにきただけだ」
そう言い、私が周りを見渡すとカリーサの家族らしい者達を見つけたが、失望するしか無かった。
その腕には金が握られていたからだ。
それだけで充分だ。
「さて、これより断罪を始める」
その言葉に驚きの表情を浮かべていた者達は更に驚いた表情を浮かべていたのだ。
「だ、断罪ですか?」
「ああ、そうだ。罪状は人身売買だ」
「じ、人身売買などしておりません」
「では、その金はなんだ?明らかにカリーサを売ったという証拠だろ?」
その言葉に外にいた者達の顔は蒼白になっていたのだ。
「お、俺様を吹き飛ばしてやがって。舐めるなよ、俺様はウィッチの中でも上位な……グ、グリークス様が何故このような場所に?」
「お前には人身売買の容疑と強姦の罪がある。覚悟することだな。どちらも死刑になり得る重罪だからな」
その言葉にカリーサを襲っていた男の顔は真っ青になっていたのだ。
「待ってください、グリークス様」
罪状を確定させる前にカリーサに声を掛けられたのだ。
「人身売買の罪だけは問わないようにしてください」
「いいのか?」
カリーサは黙って頷いてくれた。
「分かった。被害者の意見を無下にするわけにいかないから、人身売買の罪だけは問わない」
その言葉を聞いた者達は皆安心したような表情を浮かべていた。
「ですが」
その言葉によって、カリーサに視線が集まった。
「私の元家族との縁切りと接近禁止をお願い致します。それを罰にしてください」
「分かった」
その言葉にカリーサの元家族は絶望の表情を浮かべ、他の者は安心したような表情を浮かべていた。
「おい、お前。何安心したような表情を浮かべているんだ?カリーサが罪に問わないのは人身売買だ。強姦の罪は問われるからな」
その言葉に男は涙を流しながら謝っていたが、カリーサは許すことは無かった。
その後、公的な書類と必要な手続きを済ませ、カリーサは元家族との縁切りと接近禁止令を施行させた。
そして、カリーサを襲った男は強姦の罪で起訴され、死刑が言い渡された。
しかも言い渡された死刑の内容は1番重いとされているものだった。
男の死に様は惨かったらしい。
これは風の噂で聞いた話なんだが、カリーサの元家族は親戚から見放され、困窮に陥っているみたいだ。
そして、あの男の実家は犯罪者が出た影響で没落した。
まぁ、全て私には関係無いことだがな。
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