魔王の側近はお暇を頂く

竹桜

文字の大きさ
上 下
10 / 17

第十話 断罪

しおりを挟む

 カリーサが実家に帰省してから3日が経った。

 いつもと変わらない。

 いや、補佐をしてくれているカリーサがいないことが変わっているな。

 そんなことを考えながら、書類の整理を行っていると左手首につけていた魔法が大きな音を出しながら赤く光ったのだ。

 その大きな音で私に視線は集まったが、それらを全てを無視し、席から立ちあがった。

 そして、転移魔法を展開した。

 あまり知られていないことだが、魔王様の側近の秘書官には危険を知らせる為の魔法具を身につける義務がある。

 理由としては機密情報を守るためだ。

 そんなことを考えていた私は転移魔法の光に包まれた。

 光が晴れるとそこは何処かの建物の中だった。

 周りを見渡すとそこには怒りを覚えるような光景が広がっていたのだ。

 いつも仕事着ではなくおめかしたカリーサが知らない男に襲われている光景が。

 何かを考える前よりも体を動いた。

 カリーサのことを襲っていた男を外に投げ飛ばしたのだ。

 そして、直ぐにカリーサに駆け寄った。

 駆け寄ったカリーサの目には涙が溜まり、頬には涙が流れた後があったがのだ。

 すまない、カリーサ。

 遅れてしまって。

 そう思いながら、私はカリーサの涙を拭いた。

 カリーサの涙を拭き終わると目を開けたのだ。

 目を開けたカリーサは驚きの表情を浮かべていたのだ。

 「えっ、グリークス様?なんでここに。あ、この魔法具ですか」

 「そうだ。そして、済まないな。直ぐに助けにこれなくて」

 「い、いえ。助けに来てくれただけで十分です」

 「そう言って貰えて助かる。この場は私に任せてくれ」

 そう言い、私はカリーサから離れ、襲っていた男を吹き飛ばした出来た穴から外に出た。

 「グ、グリークス様。な、何故このような場所に」

 「このような場所にか?簡単な話だ。私の秘書官のカリーサを救いにきただけだ」

 そう言い、私が周りを見渡すとカリーサの家族らしい者達を見つけたが、失望するしか無かった。

 その腕には金が握られていたからだ。

 それだけで充分だ。

 「さて、これより断罪を始める」

 その言葉に驚きの表情を浮かべていた者達は更に驚いた表情を浮かべていたのだ。

 「だ、断罪ですか?」

 「ああ、そうだ。罪状は人身売買だ」

 「じ、人身売買などしておりません」

 「では、その金はなんだ?明らかにカリーサを売ったという証拠だろ?」

 その言葉に外にいた者達の顔は蒼白になっていたのだ。

 「お、俺様を吹き飛ばしてやがって。舐めるなよ、俺様はウィッチの中でも上位な……グ、グリークス様が何故このような場所に?」

 「お前には人身売買の容疑と強姦の罪がある。覚悟することだな。どちらも死刑になり得る重罪だからな」

 その言葉にカリーサを襲っていた男の顔は真っ青になっていたのだ。

 「待ってください、グリークス様」

 罪状を確定させる前にカリーサに声を掛けられたのだ。

 「人身売買の罪だけは問わないようにしてください」

 「いいのか?」

 カリーサは黙って頷いてくれた。

 「分かった。被害者の意見を無下にするわけにいかないから、人身売買の罪だけは問わない」

 その言葉を聞いた者達は皆安心したような表情を浮かべていた。
 
 「ですが」

 その言葉によって、カリーサに視線が集まった。

 「私の元家族との縁切りと接近禁止をお願い致します。それを罰にしてください」

 「分かった」

 その言葉にカリーサの元家族は絶望の表情を浮かべ、他の者は安心したような表情を浮かべていた。

 「おい、お前。何安心したような表情を浮かべているんだ?カリーサが罪に問わないのは人身売買だ。強姦の罪は問われるからな」

 その言葉に男は涙を流しながら謝っていたが、カリーサは許すことは無かった。
 
 その後、公的な書類と必要な手続きを済ませ、カリーサは元家族との縁切りと接近禁止令を施行させた。

 そして、カリーサを襲った男は強姦の罪で起訴され、死刑が言い渡された。

 しかも言い渡された死刑の内容は1番重いとされているものだった。

 男の死に様は惨かったらしい。

 これは風の噂で聞いた話なんだが、カリーサの元家族は親戚から見放され、困窮に陥っているみたいだ。

 そして、あの男の実家は犯罪者が出た影響で没落した。

 まぁ、全て私には関係無いことだがな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

未来人が未開惑星に行ったら無敵だった件

藤岡 フジオ
ファンタジー
四十一世紀の地球。殆どの地球人が遺伝子操作で超人的な能力を有する。 日本地区で科学者として生きるヒジリ(19)は転送装置の事故でアンドロイドのウメボシと共にとある未開惑星に飛ばされてしまった。 そこはファンタジー世界そのままの星で、魔法が存在していた。 魔法の存在を感知できず見ることも出来ないヒジリではあったが、パワードスーツやアンドロイドの力のお陰で圧倒的な力を惑星の住人に見せつける!

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

おちこぼれ召喚士見習いだけどなぜかモフモフにモテモテです

盛平
ファンタジー
召喚士見習いのアイシャは召喚士養成学校の勉強についていけずおちこぼれまっしぐら、でも何故かモフモフの霊獣に愛されまくり。背中に翼の生えた不思議な黒猫や、狼にもなれる獣人のシドを助けてお友達になる。シドの仲間はギガルド国という極悪な国に囚われていた。アイシャたちはシドの仲間を助けにギガルド国に乗り込む事にした。

楽しくなった日常で〈私はのんびり出来たらそれでいい!〉

ミューシャル
ファンタジー
退屈な日常が一変、車に轢かれたと思ったらゲームの世界に。 生産や、料理、戦い、いろいろ楽しいことをのんびりしたい女の子の話。 ………の予定。 見切り発車故にどこに向かっているのかよく分からなくなります。 気まぐれ更新。(忘れてる訳じゃないんです) 気が向いた時に書きます。 語彙不足です。 たまに訳わかんないこと言い出すかもです。 こんなんでも許せる人向けです。 R15は保険です。 語彙力崩壊中です お手柔らかにお願いします。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

処理中です...