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第二十一話 絶対的な皇帝
しおりを挟む俺が暴君を倒した日以降、転移魔法は消え、侵攻が終わった。
日本は帰還者達に、アメリカは兵士達に、イタリアはエクソシスト達に褒賞を渡した。
その褒賞の内容は分からなかったが、色々とあったのだろう。
俺は暴君を倒したことで、3国から褒賞と言われたが、元友の蛮行を止めるために戦ったと話し、褒賞の話は断った。
全ての後処理が終える頃には1ヶ月が経っていた。
今日は久し振りにゆっくり出来るな。
アニスとレリは2人で買い物に出掛けてる。
なので、今は俺1人だ。
1人で紅茶を淹れ、庭で1人でゆっくりしていると空に映像が浮かんだのだ。
俺は立ち上がった。
空に浮かんだ映像には何も無い荒野を背景に頭から2本の角を伸ばした男が映っていたからだ。
あれは悪魔か?
「下等な人間達よ。余は悪魔の皇帝だ」
その声は邪悪だった。
「下等な人間達に機会を与えよう。余に生贄を差し出せ。アニスというエクソシストを」
何処か何かを感じた。
俺は思わずに冷や汗をかいてしまった。
あれが、アニスを狙っていた存在。
物凄い存在だ。
「時間は明日までだ。あ、言い忘れていて、もし抵抗したい者がいた場合、生贄と共に来い。惨めな死をくれてやる」
その言葉と共に空の映像が消えた。
絶対的な皇帝の悪魔か。
俺は温くなった紅茶を飲み干し、準備に取り掛かった。
絶対的な皇帝の悪魔と戦う準備に。
準備を終えた頃にアニスとレリが帰ってきたのだ。
帰ってきたアニスの顔は真っ青だった。
俺はそんなアニスとレリを連れて、アニスの自室に向かった。
アニスをレリと一緒に励ましていると1人のエクソシストから長官に俺が呼ばれていると伝えられた。
アニスのことはレリに任せ、長官のところに向かった。
長官が待つ部屋に向かうと、神妙な表情を浮かべた長官が待っていた。
長官は俺が部屋に入るなり、問を投げかけてきた。
「ハータ。貴方はアニスを愛しているのか?」
「愛してると言える」
「言えるだと?」
「ああ」
「そうか」
そう呟き、長官は席から立ち上がり、窓の外を見た。
「今。殆どの者がアニスを生贄に差し出せと言っている。しかもそれがエクソシストの中にもいる。1人の犠牲で済むならと」
長官は俺の方、いや、俺の瞳の奥を見てきた。
「貴方はどうする?あの絶対的な皇帝の悪魔と戦うか?それとも」
俺は長官の声を遮った。
「俺はアニスを見捨てることは無い。何が有ろうともだ」
長官は驚いていた表情を浮かべた後、気が抜けた様に笑った。
「そうか。それなら良かった」
そう言い、長官は元いた席に座った。
「長官。俺はアニスに心の底から笑って欲しいんだけなんだ。だから、元凶を倒しにいく。アニスと共に」
「待て、何故そこでアニスが共に戦うという話が出てくるのだ?確かにアニスは強いが、危険すぎる」
「長官」
俺は長官の瞳の奥を見た。
「それはアニスが1番最初に売られた喧嘩ですから。それに、アニスはあの存在のせいで幼い頃に家族を失った。だから、これは仇討ちなのだ」
「仇討ちか。まるで戦国の日本、いや、ハータは日本出身だったか」
長官は再び俺の瞳の奥を見てきた。
「ハータ。貴方は絶対的な皇帝の悪魔と戦い、アニスと共に帰ってこれるか?」
「勿論です」
「それに嘘偽りは?」
「男に二言はありません」
長官は両手で自身の顔を覆い、上を向いた。
「なら、行ってくれ。アニスを苦しめた元凶を倒し、アニスを心の底から笑わせてくれ」
「はい」
俺は長官がいる部屋を後にした。
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