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第三十九話 シードラゴン
しおりを挟むクナリア海岸に到着した俺は崖に向かった。
確かシードラゴンは今日の夜と言って筈だ。
ならば、近くにいる筈だ。
俺は魔銃を構え、狙いを付けずに引き金を引いた。
撃たれた魔力の塊は海に吸い込まれていった。
すると海が揺れ、海からシードラゴンが出てきたのだ。
海から出て来たシードラゴンは怒りを露わにしていた。
「人間、なんのつもりだ?」
「なんのつもりだ?お前に用があって来ただけだが」
私の返答を聞いたシードラゴンは興味が無さそうにしていた。
「我は人間のお前に用などない」
「シアナに関してだが」
「ほぉ、我が生贄を差し出しのか?」
「いや、違う」
そう答えた俺はシードラゴンに魔銃を向けた。
「なんの真似だ?人間」
「なんの真似だと?俺はお前を倒しに来ただけだ」
「我を倒すか。相変わらず、人間は愚かだな。まぁ、それは置いておこう。人間、なぜお前が、生贄の少女を守るのだ?」
「簡単なことだ。俺はシアナの婚約者だからだ。だから、倒しに来たんだ」
「婚約者だと?いや、そんなことは有り得ない。人間が自分の命を犠牲にしてまで、他の人間を守るはずがない」
そう言いながら、シードラゴンは驚きの表情を浮かべていた。
シードラゴンの表情を見た俺は当たり前だという表情を浮かべてしまった。
「あまり人間、いや、男を舐めるなよ。男が自分の婚約者を犠牲にするような選択肢を取る筈が無いだろう。お前はドラゴンだから分からないと思うが、自分の命よりも大切だというものはあるんだよ」
そう言いながら、俺は左手で剣の柄に握った。
「それは人によって違う。俺の場合はシアナだったということだ」
そう言いながら、腰の剣を抜いたのだ。
「なぁ、シードラゴン。シアナがどんな子か知っているのか?」
「い、いや、知らない」
「シアナは感情を表に出すのが難しい子なんだ。それは生まれの所為なんだ。最初は喋る事もほぼ無かった。だが、ここ最近は感情を表に出すことが出来るようになったんだ」
俺はシードラゴンに殺気を向けた。
「俺はシアナが初めて微笑んだ時に惚れたんだ。男が惚れた女を犠牲にしてまで生きたいと思うかよ。だから、俺はお前を倒す。自分の命よりも大切なシアナのために」
そう言いながら、俺は魔銃の引き金を引いた。
撃たれた魔力の塊はシードラゴンの頬を切り裂いた。
「こんな人間がいるとは思っていなかった。面白い。なら、見せてみろ、我を倒し、己の命よりも大切な婚約者を守ってみろ」
俺はシアナを守るため、戦いを始めた。
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