36 / 69
第三十六話 守るための婚約
しおりを挟む「お話は分かりました。ですが、シアナを帰すことは出来ません」
「ほぉ、それは、どうしてですか?」
「シアナは私の3番目の婚約者ですから」と、答えた。
その言葉に直ぐに反応したのは国王陛下だった。
「3番目だと?1番目の婚約者が隣国のベンネット伯爵家の長女だということは知っているが一体いつだ?」
「国王陛下が王命を出された後ですよ。ですが私には発表する場が無いものですから」
「待て。シアナは私の腹違いの妹だ。そんなふざけた婚約は無しだ」
「そうですか。なら、残念です。商人バルハナに頼んので、あちらの大陸との貿易は辞めてもらいましょう」
その言葉に国王陛下も新国王も驚きの表情を浮かべていた。
「な、何故、そこでバルハナ殿が出て来る?」
「簡単のことですよ。商人バルハナは私が居なかったら、存在していることもありませんでしたから」
その言葉に国王陛下と新国王は驚きを隠せなかった。
嘘は言ってない。
商人バルハナは俺自身だ。
俺が居なければ商人バルハナは存在していないからな。
「そ、それはどういうことだ?」
「どういうことも何も。商人バルハナは私が居なかったら商人になっていませんから」
「良いのですか?新しい国はいつも不安定です。そんな中、全ての国を敵に回す覚悟はありますか?」
商人バルハナは難民にとっては救世主だ。
そんな者から縁を切る原因を作ったとなると大陸中の国が敵に回る。
それを聞いた新国王は顔を歪ませたのだ。
「わ、分かった。あんな役立たず1人で充分ならくれてやる。だから、商人バルハナとの縁を切らないでくれ」
「ええ、分かりました。あちらの大陸との縁を切らないことを約束をしますよ」
俺は忙しいを理由に応接室を出て、王城を出た。
魔法袋から転移石に似た魔法具を出した。
それを使うのと同時に転移魔法を使用し、ベンネット伯爵家の屋敷に帰った。
リリアとエレネとシアナはお茶をしていた。
俺はその間にベンネット伯爵を応接室に呼び、通信魔法具でナサヤ子爵にも聞いてもらった。
まずは親からの許可を取らないと。
俺はシアナの事情とシアナのことを守るために婚約したことを伝えた。
ベンネット伯爵とナサヤ子爵は顔を歪めたがシアナの事情とシアナを守るためと聞いたため、2人とも考え始めた。
ベンネット伯爵は画面越しにナサヤ子爵と目を合わせ、頷きあった。
リリアとエレネが良いと言うなら、シアナとの婚約を許すと。
2人の親から許可が取れた。
許可を取り終えたので応接室を出た。
廊下を歩いているとリリアとエレネに出会った。
どうやら、お茶会が終わったらしい。
2人にシアナの行方を聞くとシアナは読みかけの本があるので書斎に行ったらしい。
俺は2人を応接室に連れて行き、シアナの事情とシアナを守るため婚約したことを伝えた。
2人は驚いていたけど、直ぐに嬉しそうな表情を浮かべていた。
シアナなら良いと2人とも答えてくれた。
2人に礼を言い、俺は書斎に向かった。
書斎に着くとシアナが本を読んでいた。
「シアナ、少し良いか?」
シアナは本から目を離し、俺の方を向いくれた。
「うん、大丈夫」
「すまない、シアナ」
そう言いながら、俺は頭を下げた。
いきなり俺から頭を下げられたシアナは少し驚いた表情を浮かべていた。
「い、いきなりどうしたの?ビリー」
俺はシアナの事情を聞いてしまったこととシアナを守るためとはいえ、シアナの許可を取らずに勝手に婚約したことを伝えた。
シアナは私の言葉を否定するように首を横に振ったのだ。
「ううん、ビリーは何も、悪くない。ビリーは、私を守るために、してくれた。それが、とても嬉しい」
「シアナ、怒っていないのか?」
「うん?なんで?ビリーは私のこと、守って、くれただけ、でしょ?それに私、ビリーのこと、好きだから」
シアナは無表情でそう答えてくれた。
「ありがとう、シアナ」
「ビリー、こんな私を、受け入れて、くれて、ありがとう」
そう言いながら、シアナは初めて微笑んでくれた。
その微笑みに俺は惚れてしまった。
この日、俺は3人目の婚約者が出来た。
新国王、俺は大陸との縁を切らないことは約束したが、お前の国とは縁を切らないとは一言も言っていない。
俺の婚約者を役立たずと言った国王が治める国なんかに貿易をしてたまるか。
さて、部下達に指示を出しておくか。
反対することは無いだろう。
別に収益も大したことが無いだろうし。
49
お気に入りに追加
2,421
あなたにおすすめの小説
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
無職だけど最強でした〜無職と馬鹿にされたが修行して覚醒したから無双してくる〜
えんじょい
ファンタジー
ある日、いつものように幼なじみと学校から帰宅している時に、交通事故に遭い幼なじみと共に死んでしまった…
気がつくとそこは異世界だった。
俺は転生してしまったらしい。
俺が転生してきた世界は、職というものがあり、その職によって人生が決まるという。
俺は職受礼の儀式という神々から職をもらう儀式で、無職という職を貰う。
どうやら無職というのは最弱の職らしい。
その職により俺は村から追放された。
それから修行を重ね数年後、初めてダンジョンをクリアした時に俺の職に変化が起きる。
俺の職がついに覚醒した。
俺は無職だけど最強になった。
無職で無双してやる!
初心者ですが、いい作品を書けるように頑張ります!
感想などコメント頂けると嬉しいです!
死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~
未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。
待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。
シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。
アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。
死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる