63 / 64
最終話 満天の星空の下で
しおりを挟む結婚式を終えた後、私達は新婚旅行に出掛ける。
私達が新婚旅行先に選んだのはノルウェーと京都だ。
そう、私の妻達の出身地だ。
ラナは異世界出身なので、行くことは出来ない。
だが、ラナはそんなに気にしてなさそうだった。
最初に訪れたのはノルウェーだ。
ノルウェーに到着したリーヴは嬉しそうな表情を浮かべながら、私達の前に立つ。
「ようこそ、ノルウェーに」
リーヴは嬉しそうな表情を浮かべている。
その後、私達は荷物をホテルに預けたのだ。
荷物を預けるとリーヴがノルウェーを案内してくれる。
リーヴのことをテンションが高くて可愛いなと思っていると私は見つけてしまう。
私達を遠くから見つめる者達を。
その者達は男女でリーヴのことをずっと目で追っている。
多分、リーヴの元両親だろう。
女性の方からはリーヴの面影を感じられる。
私は3人に気付かれないように後ろに体を向け、会釈する。
リーヴの元両親は私の会釈に気が付き、会釈を返してくれる。
それは娘をどうか頼むという元親としての気持ちの現れだと感じられる。
だから、私は強く。
すると、リーヴの元両親は涙を流しながら、深く頭を下げたのだ。
その行動からは感謝が強く感じることが出来たのだ。
もしもセイズがリーヴにクラーケンの呪いをつけなければ、家族でいられたのかもしれない。
だが、その場合はリーヴと私が出会うことは無かっただろう。
だから、私はどちらが良かったのかは分からない。
私が確実に言えるのはリーヴが幸せになる、いや、幸せにするということだけだ。
それから、リーヴの元両親は私達がノルウェーから帰るまでずっとついてきていたのだ。
少しでも元娘の姿を目に焼きつけようとして。
ノルウェーを後にした私達はそのまま京都に向かう。
京都に到着すると迎えの車が既に来ていたので、その車に乗り込む。
安倍家の本家に荷物を置いたら、詩花が少し得意げに案内してくれたのだ。
そうして、私達は新婚旅行を満喫していたのだ。
楽しい時間が過ぎるのは早く。
新婚旅行も終わりに近付いている。
私はラナ達には何も伝えず、3人を車に乗せてある場所に向かう。
到着したのは京都府宮津市にある海と星が見える丘公園だ。
ここは環境省による全国星空継続観察で、星が最も輝いて見える場所として2番目に選ばれたところだ。
空には美しい満天な星空が浮かんでいたのだ。
その満天な星空に妻達は見惚れていた。
私は見惚れている妻達の名前を呼ぶ。
すると、私の方を向いてくれたのだ。
地面に膝立ちし、愛しい妻達の方に手を伸ばす。
「この満天な星空の下で誓いを立てる。私、山木 樹はラナ・山木に、リーヴ・山木に、山木 詩花に異世界で何も無い真っ白な空間で千年間鍛え続けたこの正拳突きに永遠の愛を誓うと」
私はラナ、リーヴ、詩花の順番で目の奥を見る。
「どうか、この手を取ってくれ」
ラナ達は顔を見合わせた後、この満天の星空よりも美しい笑顔を浮かべていたのだ。
「うん、受け取るよ。だって、僕は樹のことが千年前から好きだったから」
「はい、受け取ります。私を助けてくれて時から好きでしたから」
「はい、受け取らさせていただきます。わたくしを、いえ、わたくし達を救って下さって時から好意を抱きましたので」
「「「だから」」」
ラナ達は私の手を握ってくれる。
「「「これからもよろしくお願いします」」」
愛しい妻達となったラナ達は今まで見たどんなものよりも美しい笑顔を浮かべていたのだ。
私はそんな笑顔に見惚れてしまう。
「ありがとう」
私は立ち上がる。
誓ったら、夜風が冷たくなってきたので、車に戻ることにしたのだ。
車に戻っていると後ろから不思議な気配を感じる。
突然、私の前に現れたのだ。
それは人ならざる者だったが、悪意なき者だった。
それに話に夢中なラナ達は気がついていない。
どうやら、この存在が私に縁結びをしてきた神だろう。
そう感じた私は深く頭を下げる。
もし、この神様が居なければ、私はラナ達と出会うことも至ることも無かっただろう。
だから、感謝と共に深く頭を下げたのだ。
頭を上げると神様は満足そうな表情を浮かべながら、消え去ったのだ。
神様を見送った後、愛しい妻達が私の名前を呼んだのだ。
「樹。どうしたの?早く行こ」
「樹さん。ラナさんの言う通りですよ。早く行きましょう」
「樹様。御身体が冷えてしまうので、早くお車に参りましょう」
「ああ」
私は小走りで愛しい妻達のところに向かう。
これから私は至った正拳突きを使って、大事な者達を守っていく。
母さんを妹の楓を異世界人のラナをノルウェー人のリーヴを陰陽師の詩花を。
例え、何があっても。
この誓いは私が死ぬまで守り続ける。
これが、異世界で何も無い真っ白な空間で千年間修行し続け正拳突きを至らせた男が帰還した現代社会でファンタジーに巻き込まれた男の選択だ。
この選択に何も悔いは無い。
だから、これからも突き進むだけだ。
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる