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第九話 紹介
しおりを挟む事前にポケットに入れていた鍵を取り出し、ドアを開ける。
ドアを開けて、玄関に入ったのだ。
久し振りの匂いがする。
いつも言っていた言葉をやっと言える。
「ただいま、母さん」
すると、廊下の先にあるドアが開き、エプロンに身を包んだ母さんが玄関までやって来たのだ。
「お帰り、樹」
そして、母さんはいつものように微笑んでくれる。
この微笑みも久し振りだ。
そんなことを思っていると母さんは隣りにいるラナを見て驚きの表情を浮かべていたのだ。
「えっと、樹。隣の子は?」
「ああ、紹介するよ。私の婚約者のラナだよ」
ラナは私の手を離し、頭を下げる。
母さんは驚きで固まってしまったのだ。
「樹。私の聞き間違いかもしれないから、もう1度言ってくれる?」
「聞き間違いじゃないよ。ラナは私の婚約者だ」
「聞き間違いでは無かったわ。まぁ、取り敢えず上がって。詳しいことはリビングで聞くから」
そう言い、母さんは準備するためにキッチンに戻ってしまう。
私は靴を脱ぎ、ラナに靴を脱ぐことを教える。
ラナは脱いだ靴を周り靴と同じように並べたのだ。
私はラナを案内しながらリビングに向かう。
リビングに到着したら、椅子に座る。
今は私と母さんが2人しか住んでないが、4人用のテーブルで4つの椅子。
まぁ、過ぎたことはどうでもいい。
それにしても全てが懐かしい。
特にあの置き物なんかも。
昔、母さんがお土産として買ってきたよく分からない置き物。
そんなことを思っていると、母さんが緑茶を持って、リビングにやって来たのだ。
そして、私とラナと自分の前に置き、席に座る。
「樹。ラナちゃんとどう出会ったの?」
「よくやっていたオンラインゲームで知り合ったんだ。それで話していく中で、互いに好意を持つようになったんだ。デートとかはゲームの中とかでしていた」
「そうゆう時代なのね」
そう呟いた、母さんはラナの方を向く。
「ラナちゃん。確認だけど、樹の話は本当?」
「は、はい」
そう言い、ラナは強く頷く。
ラナに確認した母さんは少し呆れた表情を浮かべ私の方を向いたのだ。
「樹。そういうのは早く言いなさい。言ってくれれば、ラナちゃんを歓迎出来たのに」
「驚かそうと思って」
「確かに驚いたけど、それよりもしっかりと歓迎してあげたかったわ」
「え、えっと、僕を歓迎してくれるの?」
「当たり前だわ。だって、大事な息子が選んだ婚約者だから。それに、話して良く分かったわ。凄く良い子だって」
それを聞いたラナは安心したような表情を浮べたのだ。
「取り敢えず、出来る限りの歓迎をするわ。樹、手伝って。ラナちゃんはお客さんだから座って待ってて」
私は席から立ち上がり、母さんの料理を手伝う。
その後、ラナは母さんからの歓迎を受けたのだ。
ちなみに、ラナが孤児と聞いた時、母さんはラナを優しく抱きしめていたな。
その時のラナは驚きながらも安心したような表情を浮かべていたのだ。
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