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第八話 帰還
しおりを挟む光が晴れると、私は召喚に巻き込まれた小道の前に立っていたのだ。
後ろを向くと、津島神社が見える。
戻ってきたのか。
凄く懐かしい。
懐かしいが、少し暗いな。
夕方ぐらいか?
私はスマホを開いて、日にちと時間を確認する。
日にちは召喚された日と同じで時間は16時くらいか。
ラナの方を見てみると固まっていたのだ。
「こ、これが樹が暮らしていた世界」
そう呟き、ラナは驚きの表情を浮べていたのだ。
「そうだ。この世界が私が暮らしていた場所だ」
「そうなんだ。えっと、これからどうしようか?」
「取り敢えず、色々と説明してから家に帰ろう」
「家?」
「そう、家だ。私と母さんが一緒に住んでいる家に」
「そっか、樹には家族がこっちにいたんだ」
ラナは少し寂しそうな表情を浮かべていたのだ。
「ラナ。そんな寂しそうな表情を浮かべないでくれ。直ぐに母さんとは家族になるから」
「えっ。ど、どうゆうこと?」
「家に帰ったら、母さんにラナのことを婚約者として紹介するから。母さんのことだ。温かく迎えいれてくれるはず」
「こ、婚約者として紹介。う、嬉しいけど、なんか恥しいな」
そう言い、ラナは少し顔を赤くしながら、微笑んでくれる。
その後、私はこの世界の簡単な説明と確認を行う。
ラナ用の魔法袋の中にはパスポートやラナの身分を証明する書類が入っていたのだ。
ラナの出身はイギリスのボーンマスになっている。
どうやら、あの神は約束を守ったようだ。
私は異世界のことを母さんに話さないようにラナに伝えたのだ。
勿論、私も異世界のことを伝えない。
正拳突きを千年間修行し続けてことも。
全てを説明をし終え、家に帰る準備が出来たのだ。
私はラナの手を握った。
「な、なんで僕の手を握っているの?」
「迷子にならない為だ。まだ、ラナはこの辺の地理が分かってないから」
「そ、そうだね。色々とよろしく、樹」
そう言い、顔を少し赤くしながらも私の手を握り返してくれる。
異世界に召喚された小道から私はその異世界で出来た大切な婚約者の手を握りながら大通りに出る。
大通りを通り、駅の方に向かったのだ。
私の家は駅の反対側だから、1回駅を行かなければいけない。
私は道路側を歩き、歩道側をラナに歩いて貰っている。
ラナはこの世界が初めてだ。
だから、ラナは気になることを私に質問にしてくる。
私は少し興奮した様子のラナを可愛いと思いながら、全ての質問に答えた。
例えば、車のこととか。
質問に答えているといつの間にか後5分ぐらいで到着するまで距離のところまで到着していたのだ。
そこで、ラナは足を止めて、ある場所を指差す。
「樹。あの建物は?」
「あの建物は図書館だよ」
図書館と聞いたラナは目をキラキラさせていたのだ。
「本当。ここから樹の家は近いんでしょ。やった、いっぱい本が読める」
ラナは本当に嬉しそうにしている。
本当に本が好きなんだな。
嬉しそうなラナを見ているといつの間にか家の前に到着していたのだ。
「ラナ。到着したよ」
「き、緊張するよ」
ラナは胸の辺りを押えている。
「大丈夫だ。母さんは凄く喜んでくれるはずだ」
私はラナの手を引っ張って、家の玄関に向かう。
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