上 下
8 / 64

第八話 帰還

しおりを挟む

 光が晴れると、私は召喚に巻き込まれた小道の前に立っていたのだ。

 後ろを向くと、津島神社が見える。

 戻ってきたのか。

 凄く懐かしい。

 懐かしいが、少し暗いな。

 夕方ぐらいか?

 私はスマホを開いて、日にちと時間を確認する。

 日にちは召喚された日と同じで時間は16時くらいか。

 ラナの方を見てみると固まっていたのだ。

 「こ、これが樹が暮らしていた世界」

 そう呟き、ラナは驚きの表情を浮べていたのだ。

 「そうだ。この世界が私が暮らしていた場所だ」

 「そうなんだ。えっと、これからどうしようか?」

 「取り敢えず、色々と説明してから家に帰ろう」

 「家?」

 「そう、家だ。私と母さんが一緒に住んでいる家に」

 「そっか、樹には家族がこっちにいたんだ」
 
 ラナは少し寂しそうな表情を浮かべていたのだ。

 「ラナ。そんな寂しそうな表情を浮かべないでくれ。直ぐに母さんとは家族になるから」

 「えっ。ど、どうゆうこと?」

 「家に帰ったら、母さんにラナのことを婚約者として紹介するから。母さんのことだ。温かく迎えいれてくれるはず」

 「こ、婚約者として紹介。う、嬉しいけど、なんか恥しいな」

 そう言い、ラナは少し顔を赤くしながら、微笑んでくれる。

 その後、私はこの世界の簡単な説明と確認を行う。

 ラナ用の魔法袋の中にはパスポートやラナの身分を証明する書類が入っていたのだ。

 ラナの出身はイギリスのボーンマスになっている。

 どうやら、あの神は約束を守ったようだ。

 私は異世界のことを母さんに話さないようにラナに伝えたのだ。

 勿論、私も異世界のことを伝えない。

 正拳突きを千年間修行し続けてことも。

 全てを説明をし終え、家に帰る準備が出来たのだ。

 私はラナの手を握った。
 
 「な、なんで僕の手を握っているの?」

 「迷子にならない為だ。まだ、ラナはこの辺の地理が分かってないから」

 「そ、そうだね。色々とよろしく、樹」

 そう言い、顔を少し赤くしながらも私の手を握り返してくれる。

 異世界に召喚された小道から私はその異世界で出来た大切な婚約者の手を握りながら大通りに出る。

 大通りを通り、駅の方に向かったのだ。

 私の家は駅の反対側だから、1回駅を行かなければいけない。

 私は道路側を歩き、歩道側をラナに歩いて貰っている。

 ラナはこの世界が初めてだ。

 だから、ラナは気になることを私に質問にしてくる。

 私は少し興奮した様子のラナを可愛いと思いながら、全ての質問に答えた。

 例えば、車のこととか。

 質問に答えているといつの間にか後5分ぐらいで到着するまで距離のところまで到着していたのだ。

 そこで、ラナは足を止めて、ある場所を指差す。

 「樹。あの建物は?」

 「あの建物は図書館だよ」

 図書館と聞いたラナは目をキラキラさせていたのだ。

 「本当。ここから樹の家は近いんでしょ。やった、いっぱい本が読める」

 ラナは本当に嬉しそうにしている。

 本当に本が好きなんだな。

 嬉しそうなラナを見ているといつの間にか家の前に到着していたのだ。

 「ラナ。到着したよ」

 「き、緊張するよ」

 ラナは胸の辺りを押えている。
 
 「大丈夫だ。母さんは凄く喜んでくれるはずだ」

 私はラナの手を引っ張って、家の玄関に向かう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...