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第三十三話 踊り子
しおりを挟む祭りの最終日になった。
俺は関係者用の席に案内された。
そして、俺の隣にはレンさんがいる。
踊りは昼に行うことになっている。
この踊りが終わった後、王都には無料で酒が配られ、朝まで飲むらしい。
俺はツキミと一緒に2人きりでゆっくり飲むつもりだ。
俺はワインでツキミは果汁酒を。
「そう言えば、踊り以外も何かするですか?」
「ああ、する。様々なことを披露するよ。踊りは最後の締めだ」
「ツキミはどこで踊るんですか?」
「それが知らないんだ。ツキミが教えてくれなかったんだ」
「そうなんですか」
そう言うのと同時に開催の言葉が聞こえて来た。
様々な催し物がステージ上で行われた。
中には前世に無いようなものまであった。
やはり、魔法というのはすごいな。
まぁ、俺は使えないけど。
踊りに入ったがツキミの姿は一切無かった。
踊りが終わると、別の曲が流れてきた。
そして、ツキミがステージの上から降りて来た。
まるで、月から降りて来た姫みたいに。
多分だが、魔法具を使用し、降りて来ていると思うがとにかく美しかった。
月の姫だと思うほど。
ツキミは音楽にのり、優雅に踊り始めた。
その踊りはこの場にいる者を惹き付ける程、美しかった。
曲が進むにつれて、美しくは増していく。
曲のピークを迎えた時に踊りも最高潮になったのだ。
そして、ツキミは俺の方を向き、微笑んでくれた。
俺はその微笑みに見惚れてしまった。
いや、会場中の男が見惚れてしまった。
月の姫の微笑みに。
曲が終わるのと同時にツキミも踊り終わった。
ツキミが会場に向かって、頭を下げると大きな拍手が起こった。
中には席から立って、拍手をしている者もいる。
俺とレンさんは立って拍手をした。
レンさんは可愛い妹の踊りを褒めるように。
俺は可愛くて、美しい婚約者の踊りを褒めように。
最後の催し物が終わり、酒が配布された。
王都の人々はツキミの話題を話し合っていた。
今回のラストの踊り子は月から舞い降りた姫のようだと。
しかも獣王国でも珍しい銀狐族だ。
話題になるだろう。
俺はレンさんと一緒に控え室の出口に向かい、ツキミのことを待つことにした。
10分ぐらいするといつもの和服に身を包んだツキミが控え室から出て来た。
出て来たツキミは誰かを探すようにキョロキョロしていた。
キョロキョロしていたツキミは俺達を見つけ、嬉しそうな表情を浮かべ、俺達の方にやってきた。
「お兄様。私、どうでした?」
「ああ、とても良く踊れていたよ」
レンさんの言葉を聞いたツキミは俺の方に向いてきた。
「リアンはどうだった?」
「良く踊れていて、とても美しかったよ」
「ありがとう、お兄様、リアン」
そう言いながら、ツキミは笑顔を浮かべてくれた。
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