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第九話 ツキミの涙

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 ベヒーモスを倒してから1ヶ月が経った。

 世間ではベヒーモスを倒した者達をグリーンソルジャーと呼ぶようになっていた。

 緑色の兵士か。

 確かに間違っていない。

 ちなみに、この1ヶ月間は結構忙しかった。

 ツキミに告白する準備をしていたからだ。

 明日、俺はツキミに告白する。

 そのため、明日と明後日は休みを取っている。

 俺はいつものようにツキミと朝食を食べ、レストランに行き、仕事をして、食材を購入してから家に帰った。

 家に帰ると見知らぬ馬車が止まっていた。

 その馬車は元いた家の馬車よりも高そうだった。

 俺は嫌な予感がして堪らなかった。

 家に近付き、家の塀から家の様子を伺った。

 見えて来たのはツキミとツキミと同じ髪色、同じ瞳の色、同じ狐耳と尻尾をした男に手を掴まれている光景だった。

 その周りには別種族の獣人の兵士達がいた。

 その兵士達からは真っ当な兵士とは違うものを感じた。

  ツキミの危険と感じた俺は直ぐに塀から飛び出した。

 「お前達、ツキミの手を離せ」

 「あ、リアン」

 「リアン?あ、お前がそうか。初めまして、俺はツキミの親戚の者だ」

 「そうですか。それで、ツキミに何の用で?」

 「この街に来たのはグリーンソルジャーを探しに来たんだ。だが、その途中で行方不明だったツキミを見つけてから、連れ戻そうとしているだけだ」

 俺は狐の獣人を睨めつけた。

 「私はツキミの番だ。勝手の真似はやめて頂きたい」

 その言葉に狐の獣人は大きな声で笑い始めたのだ。

 「何が、可笑しい?」

 流石の俺でも殺気を込めてしまう。

 「ああ、済まないな。騙されていことに気が付いていないお前が哀れすぎて」

 「騙されて?どういうことだ?」

 「俺達、銀狐族は普通の獣人と違い、番という概念が無い。だから、ツキミが言っていた番は真っ赤な嘘だ」

 俺はその事実に驚くことしか出来なかった。

 「ツキミ、それは、本当のことか?」

 ツキミは下を向き、体を震わせながら、小さく頷いてくれた。

 ツキミがいきなり顔を上げた。

 上げたツキミの目からは涙が出ていた。

 「ごめなさい、リアン。番だと嘘をついて。で、でも、1つだけ信じて欲しいの。私はリアンに一目惚れしたの。好きなの」

 ツキミの番では無いことには驚いたが、ツキミが俺のことを一目惚れしてくれたことを知れて、決意が固まった。

 俺もツキミに好意を抱いているが。

 なら、やることは1つだ。

 俺は左手を耳に当てた。

 「制圧隊、ツキミを除く、獣人を制圧せよ」

 すると、ショットガンを装備した緑色の霧で構成された制圧隊が現れた。

 制圧隊は俺の指示に従い、獣人達に向かって、ショットガンの引き金を引いたのだ。

 撃たれた獣人達は地面に倒れ、腹を押さえている。

 制圧隊が撃ったのはゴム弾だ。

 本来は暴徒鎮圧用に使うものだ。

 これを使えば、殺さず捕らえることが出来る。

 制圧隊は倒れた獣人達に近付き、結束バンドで手首を縛り、騒がないように猿轡を付けた。

 ツキミはその光景に驚いていた。

 俺はツキミに近づいた。

 「ツキミ、大丈夫か?」

 「えっ、う、うん。どこも怪我してないよ」

 「リ、リアン。なんで、グリーンソルジャーがいるの?」

 「そのことは移動しながら、説明するよ」

 俺はツキミから視線を外し、庭の方を向いた。

 「輸送ヘリを2機を送れ」

 すると、家の庭に2機の輸送ヘリが現れた。

 その光景にツキミも痛みから回復した獣人達も驚いていた。

 そして、制圧隊の方を向いた。

 「制圧隊、獣人達は左の方の輸送ヘリに乗せろ。乗せた後は監視だ」

 制圧隊は俺の指示に従い、獣人達を左の輸送ヘリに乗せた。

 俺はツキミの手を取って、右の輸送ヘリに向かった。

 手を取ったときにツキミは何も抵抗しなかった。

 俺のことを信頼しているようだ。

 俺とツキミは輸送ヘリに乗り込んだ。

 「輸送ヘリ隊、上昇し、ツキミの実家に向かうぞ」

 すると、ローターが回り、輸送ヘリが上昇し始めた。

 完全に上昇した輸送ヘリはツキミの実家に向かって進み始めた。
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