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第六話 ベヒーモス

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 軍団長の職業を手に入れてから、3日が経った。

 俺はいつものように仕事を終え、食材を購入していると何処からか大きな足音が聞こえた。

 その足音が聞こえること同時に振動が伝わって来た。

 じ、地震か?

いや、違う。

 地震なら大きな足音はしないはずだ。

 その足音は徐々に大きくなり、それに伴って、振動も徐々に強くなっていた。

 し、信じられないが、これは大きな生物のものだ。

 俺は状況を確認するために、食材の購入をやめ、この街で1番高い塔に登った。

 その高い塔からは壁の外がよく外が見えた。

 壁の外にはまだ遠くに居るが、壁よりも高い生物がいた。

 その生物は牛のような姿をしていたが凶悪の見た目をしていた。

 あ、あれは旧約聖書に出て来るベヒーモスか。

 ヘブライ語の獣の複数形が名前の由来になったのも頷ける。

 だが、あんなの化け物以外なんて言ったらいい?

 あ、あんな化け物がこの街に来たら、ただ蹂躙されるだけだ。

 何も抵抗できずに。

 ゴミみたいに。

 そうなる前に逃げなければツキミと一緒に。

 うん?

 ツキミと一緒に?

 どうして俺はツキミと一緒に逃げようと考えている。

 確かにツキミは同居人だが、一緒に逃げ必要は無い。

 では、何故そう思ったんだ?

 ああ、そうか。

 俺はツキミのことが好きなんだ。

 ツキミのことがいつから好きになっていたのかは分からない。

 でも、今はツキミの狐耳と尻尾がとても愛しい。

 ツキミの感情をよく表す狐耳と尻尾が。

 俺は男だ。

 男が強大な敵を前にして、戦わずに背を向けるのは男がすることでは無い。

 それに女と一緒に逃げるのは更に男がすることでは無い。

 そして、自身が好意抱いている女を見捨てるなんて論外だ。

 なら、やることは、1つだ。

 ツキミを守るんだ。

 一緒に逃げるのでは無く、戦うのだ。

 俺には戦う力がある。

 料理人では無く、軍団長の力が。

 俺はツキミとの生活を、ツキミの笑顔を、ツキミ自身を守るために戦う。

 そう決心した俺は家の方を見た。

 家の方を見るとツキミは家の庭にいた。

 多分、ツキミは趣味の花の手入れをしていたようだ。

 ツキミの顔は遠くてよく見えなかったが恐怖を感じているようだった。

 ベヒーモスが。

 俺が好意を抱いているツキミに恐怖を感じさせやがって。

 覚悟しろよ。

 ツキミは俺に気が付いていないようだが、俺はツキミに向かって、安心させるように微笑んだ。

 微笑んだ俺はツキミから視線を外して、街の方を向いた。

 街には緊急事態を知らせる鐘が鳴り響き、市民達が大慌てで避難していた。

 戦うことが出来る者達は抵抗しようと準備していた。

 俺はそんな街の状況を見てから、ベヒーモスの方を見直した。

 
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