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最終話 異物が無くなった世界は
しおりを挟む邪悪に落ちた異世界人が居なくなったので、革命軍は自然と解散した。
解散後は特に何も起きなかった。
邪悪に落ちた異世界人達の死体は3日晒された後、火葬されて、丁重に埋葬された。
その後の世界は餓死者が明らかに減ったのだ。
減った要因として考えられているのは聖人と呼ばれた異世界人が残した遺品だ。
そして、その聖人の遺品は3つある。
農業を発展に貢献したのは2つの遺品だ。
1つ目はノウース伯爵家で異世界の農業知識を持った者達だ。
その者達は無償でその知識を他の者達に教えたのだ。
彼らは恩を返すためだと言い、誰も報奨を望まない。
そして、2つ目は農業知識が全て書き込まれた本だ。
その本はいくつも複製され、無償で様々な場所に提供したのだ。
その結果、多くの者が農業に関しての知識を身につけることができ、生産能力が上がったのだ。
その本を無償で提供した国王も報奨を一切受け取らなかった。
これは今亡き者の追悼だと言い。
3目の遺品に関しては全く情報がない。
分からなかったとしても聖人と呼ばれた異世界人はこの世界の為に農業を普及し、この世界に影響を及ぼしたのだ。
その聖人が死んでから、十年が経った。
ノウース伯爵家の屋敷の庭には銀色の髪を腰まで伸ばし、青色の瞳をした女性が紅茶を飲んでいたのだ。
その女性の右手の薬指には青色の宝石が埋め込まれている指輪がはめられていた。
「お母様」
その声と共に金色の髪を腰まで伸ばし、緑色の瞳をした十四歳ぐらいの少女だった。
「どうしたの?リーカ」
「えっと、お願いがあるんですけど」
「何をお願いしたいの?」
「新しい服が欲しくて」
「勿論、良いわよ。それじゃあ、これから一緒に買いに行きましょ」
「お母様。大好き」
そう言い、リーカと呼ばれた少女は女性に抱き着いたのだ。
「私も大好きよ、リーカ」
そう言い、女性は優しい表情を浮かべながら、リーカと呼ばれた少女の頭にキスをしたのだ。
「お母様。私、準備してきます」
そう言い、リーカと呼ばれた少女は女性の元から去ったのだ。
それと入れ替わるように先程の少女と同じ容姿をした少年が現れた。
「母上。また」
少年が言葉を続ける前に女性が遮ったのだ。
「全て断っておいて」
そう発言した女性の表情は先程の優しいものではなく、真剣そのものだった。
「やはりですか」
「それはそうよ。私の身も心も彼に捧げたのですから」
そう言い、女性は少し寂しそうな表情を浮かべながら、右手の薬指につけている指輪を見つめたのだ。
「分かりました、母上。では、私は断っておくので、これで失礼します」
そう言い、少年は女性の前から去ったのだ。
庭に残った女性は空を向いたのだ。
「凪さんが居なくなってからもう十年が経ちました。これまで沢山のことがありましたが、1番は養子を取ったことですね。今では大切な子供達です」
そう言いながら、女性は自身の右手の薬指の指輪を触った。
「どうか空の上から私達のことを見守って下さい。ですけど、1つだけ安心して下さい。私はこれからも凪さんの妻ですから」
そう言い、女性は幸せそうに微笑んだのだ。
愛する人に届くように。
「お母様。準備出来ましたよ」
「今行くわ」
そう言い、女性は優しい表情を浮かべながら、娘の元に向かうのだった。
かつて、この世界には異世界人達がいた。
その異世界人達は国を救ったが、後に1人を除き、邪悪に落ちたのだ。
この世界の者達は選択した。
異世界からの異物を排除すると。
無事に異物は排除出来たが、それは1人の聖人と一緒にだ。
その聖人は多くの物を残して死んだ。
そして、他の異世界人達もだ。
聖人は偉業を、他の異世界人達は爪痕を。
だが、その爪痕は直ぐに治せるだろう。
人というのは困難から立ち上がる力を持っているからだ。
そして、得たものを最大限活用する力も。
だから、異物が無くなった世界は幸せそのものだ。
だが、その幸せは1人の聖人の活躍だということは忘れてはいけない。
「他の異世界人は自己自得ですけど、あの人は違いますね。だから」
そう言い、人ならざる美貌を持つ女性は手を振ったのだ。
すると、何かが確定した。
何が確定したかは分からない。
だが、これだけは分かる。
救われなかった者に救いが差し伸べられたのだ。
それがどんな救いかはまた別のお話。
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