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第十二話 自覚
しおりを挟む私は借り家を出て、弓と矢筒を腰に携え、森に向かった。
今日はエーカは歌姫としての仕事が休みだから、先輩と過ごすことだろう。
そんなことを考えていると、森に到着した。
やっぱり、ウィンドレッグを使ったから早く到着したな。
本当はシュタイフェ・ブリーゼの方が早いが、あれは緊急事態しか使わない。
森に到着したら、矢で魔物を狩り、解体することを繰り返している。
それを繰り返していると昼時になっていた。
そろそろ昼食のするかと思い、昼食の準備を進めていると空から聞き覚えがある声が聞こえてきた。
私は作業を止め、空を向いた。
空を見た私は驚くしか無かった。
空には映像が浮かんでいて、その映像の中にはエーカと先輩と見たことがない男が映し出されていた。
あ、あれは吸血鬼か。
何故、吸血鬼がエーカと先輩と一緒にいるんだ?
それからも驚くことが明らかになっていく。
先輩が家族から愛されていたが、この国の第1王子から脅されていて愛情を注がれていなかった。
第1王子が吸血鬼と契約し、先輩に薬を盛り、体の成長を遅らせたのだ。
何故、第1王子は先輩を小さくさせたかったのだ?
今はそんなことどうでもいい。
早くエーカと先輩を助けに行かなくては。
そこで私は気が付いた。
自身の不思議な気持ちに。
何だ?
この気持ちは。
名前が分らない。
私はその気持ちを持ちながら、映像を見上げた。
エーカは私を守ってくれる人と先輩は私を自分が知っている限り最強だと言ってくれた。
私はそこで名前が分らない感情が何なのか知った。
そうか、私はエーカと先輩が好きなのか。
どうやら私は鈍いようだな。
多分、エーカと先輩は私に好意を持っているのだろう。
そうでなければ、エーカが私と恋人関係の設定の時に満更ような表情を浮べないし、先輩をお姫様抱っこしたとき、あんなに照れることは無いだろう。
直ぐに向かわなくては。
私の好きなエーカと先輩のために。
「シュタイフェ・ブリーゼ」
すると私の体は風になり、1秒も掛からず、エーカ達の近くに到着した。
私は弓に矢をつがえ、放った。
放った場所は吸血鬼だ。
だが、避けられてしまった。
流石に無理か。
風属性を矢に付与してないからな。
私はエーカと先輩を庇うように前に立った。
「何処も怪我とかしてないか?エーカ、先輩」
「ん。一切無い」
「僕も大丈夫だ。後輩君」
2人に怪我が無かったことに安心した私は吸血鬼を向いた。
吸血鬼は驚いた表情を浮べていた。
「風属性だと?お前は召喚士だったはず。ま、まさか、2属性持ちなのか?」
「ああ、その通りだ。エーカと先輩以外には誰も言ってこなかったがな」
私は弓に矢をつがえた。
「吸血鬼。私にとって大切な歌姫と先輩を食料としてみた貴方を許すことは出来ない」
「た、大切」
「こ、後輩君は随分恥ずかしいことを言うな」
2人の顔を赤くなっていることだろう。
私は吸血鬼から目が離せない為、見ることは出来ないが。
「だから、倒させて貰う」
私は吸血鬼に狙いを定めた。
「2属性には驚いたが、たかが人間に負ける筈はない。お前を殺して、後ろのご馳走を頂くとしよう」
そう言い、吸血鬼は自身の爪を伸ばした。
この場に静寂が訪れた。
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