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第七話 緊急事態

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 [視点]

 僕の名前はリニス・サーワリ。

 サーワリ侯爵家の長女でもある。

 と言っても僕は家族とは不仲だ。

 誕生日プレゼントすら貰ったこともない。

 侯爵家としての威厳を保つ為に衣食住は保証されていた。

 これは僕の予想だけど、お母様の命を奪ったのが許せないんだと思う。

 僕のお母様は命と引き換えに僕を産んでくれた。

 だから、屋敷の中に僕に関わってくることはない。

 使用人達でさえ。

 僕は居場所を探すように読書に夢中するようになった。

 読書をしていく中で、僕はある分野に興味を持つようになる。

 それは魔物だ。

 この屋敷にいても邪魔になるだけだ。

 僕は将来魔物研究者になることを決めた。

 だから、本を読み知識をためることにした。

 やがて僕は年頃になり、王立学園に入学した。

 1年王立学園でも僕に関わってくる人はいなかった。

 ここでもいないかと諦めてかけた僕の前に現れたのだ。

 僕に関わってくれる人が。

 その人は優秀な召喚士を歴代排出する侯爵家の長男だったが、召喚士の才能が無かった。

 最初は僕と同じでは無いかと思って、近づいたけど、本当に良かったと思っている。

 初めて王立学園の中で僕と関わってくれる人を見つけた。

 僕は初めて後輩君から誕生日プレゼントを貰った。

 その時は本当に嬉しかった。

 それから残りの3年間の学園生活は楽しかった。

 魔物研究して、後輩君と過ごす生活が。

 そんな3年間はあっという間に過ぎ去り、僕は王立学園を卒業した。

 僕の卒業を祝ってくれたのは後輩君だけだった。

 卒業した後、僕は後輩君と一切会うことが出来なくなった。

 久し振りに再会したのは1年以上が経っていた。

 後輩君が歌姫と一緒にいた時は驚いたが、歌姫が後輩君の唯一契約している魔物だったことには更に驚いた。

 そして、ハリケーンバードと聞いた時は本当に驚いた。

 暫く王都にいると聞いたので、僕は2日に1回は遊ぶようになった。

 ある日、僕は1年ぶりに後輩君から誕生日プレゼントを貰った。

 そして、エーカ君からも誕生日プレゼントを貰った。

 僕はあの時後輩君に会えて良かった。

 エーカ君から誕生日プレゼントを貰ってから、1週間後僕は王城の魔物研究者として調査で向かった。

 洞窟の生態の調査だったが、そこにいたのはドラゴンだったのだ。

 護衛として行動を共にしていた騎士達は一目散に逃げたのだ。

 それは僕を含めた魔物研究者達も同じだった。

 本能的に敵わないなと感じたからだ。

 普段運動しない僕は転んでしまった。

 直ぐに立ち上がり、逃げようとしたが、唯一の逃げ道は塞がれていた。

 少しでも時間稼ぎをするために土属性の魔法で塞いだのだろう。

 僕は少しでも距離をとるために壁に背中を預け、ドラゴンの方を向いた。

 ドラゴンは顔を上に向けていた。

 その口からは光が漏れていた。

 ああ、ブレスをためているのか。

 僕はまだ後輩君にこの想いを伝えられてない。

 生きて、伝えたい。

 僕の胸の中にあるこの想い。

 でも、僕にはドラゴンを倒す力は持ってない。

 だからここで死ぬ。

 後輩君にはエーカ君がいるから大丈夫だろう。

 やっぱり死ぬのは怖い。

 後輩君にエーカ君に会わなかったら、そんなこと思わなかっただろう。

 これは僕の我儘だ。

 助けて、後輩君。

 僕は初めて弱音を吐いた。

 誰にも甘えられなかった。

 僕が。

 僕の前には炎が迫ってきていた。

 僕の目からは無意識に涙が流れ、地面に落ちた。

 その時、僕の後ろの壁が崩れ、それと同時に炎が掻き消えたのだ。

 そして、いたのだ。

 僕の前に。

 僕が初めて甘え、我儘を言い、助けを求めた人が。

 後輩君。

 君は本当に。
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