上 下
313 / 333
完結後おまけコンテンツ

閑話20 ピクニック(正月閑話2021再掲)

しおりを挟む
※ 時系列は、リリアンが冒険者になった年の夏。シアンが町に帰ってくる前です。

====================

 こんな天気の良い日には、皆でピクニックに行こう。
 誰からでもなくそんな話になって、皆が笑顔で頷いた。

 メンバーはデニスさん、マーニャさん、ニール、アランさん。さらに今日は久しぶりにミリアちゃんも一緒だ。
 あまり町を出る機会のないミリアちゃんの身支度に付き合っている間に、デニスさんがロディさんの店に昼食用のパンを買いに行ってくれている。それ以外の準備は、そういう事にすっかり慣れたニールが請け負ってくれた。


 王都から1時間と少し歩いた所に今日の目的地の大きな湖がある。それなりに暑い季節だし、水遊びをするのも楽しいよね♪

 湖の畔にいい枝ぶりの大木があって、まるで私たちの為のように日差しを避ける場所を作ってくれていた。そこに大きな敷物を敷いて荷物を広げる。まだまだ昼食には時間が早い。

 男性陣は湖で魚を釣るそうで、アランさんが人数分の釣竿を用意していた。ニールは釣りが初めてだそうで、えらく興奮している。喜んでるのはいいんだけれど、そんなに騒ぐと魚が逃げちゃうよ?
 マーニャさんはすでに大木に寄りかかる様に座ってくつろいでいる。今日は持参した本を読むつもりらしい。

 私はミリアちゃんと狩りに行く約束をしている。
「え? ミリアさんも冒険者登録しているの?」
 ニールには意外だったらしい。

 確かにミリアちゃんは子供の頃に足を怪我しているから、全力では走れない。
 でもそれは獣人としての全力であって、人間の全力と同じくらいの速さでなら普通に走れる。ミリアちゃんも肉食系獣人なのだから、たまにはこうして獲物を追って体を動かす方が、いい気分転換になるのよね。
 こういう時の為だけでなく、一人で生きていく為にもと、デニスさんたちに勧められて冒険者登録をしたそうだ。しかも15歳になってすぐに、Eランクまでは上げてあるのだと。

 ミリアちゃんは完全獣化は出来ないけれど、半獣化までなら出来る。二人で運動がてらヤマキジやホーンラビットなんかを追う予定だ。


 ヤマキジを3羽捕まえた所でキイチゴの実を見つけて、二人で持てるだけ摘んで持ち帰った。湖での釣果もそこそこだったようで、昼に1尾ずつ食べられるくらいは釣れたそうだ。

 マーニャさんはお皿やパンやサラダを並べて、皆が食べる場所を準備してくれている。
 ミリアちゃんと1羽だけヤマキジを捌いて、持参の野菜とスープを仕立てた。その間に男性陣が魚を串に刺して焼いてくれた。

 皆で食べるご飯は、本当に格別なんだ。ちょっと暑すぎるくらいの、でも良い天気のお日様の下で、キラキラと光る水面を眺めながら。皆で食べて、笑って、色んなおしゃべりをした。


 お腹が膨れると、今度は皆で水遊びをした。この為にちゃんと水着も持って来ている。
 ミリアちゃんと二人で水着に着替えて水辺に行くと、ニールが顔を真っ赤にさせて目を見張った。
 色違いでお揃いのセパレートタイプの水着にしたのだけど。ミリアちゃんと私では明らかに体型が違う。凹凸の少ない私と違って、スタイルが良くて可愛いミリアちゃんの水着姿に見惚れるのは当然だろう。

 そこへマーニャさんが水着姿でやって来ると、ニールだけでなく皆の目が釘付けになった。
 えっと、大きい……

 つい隣のミリアちゃんと目を合わせた。
「……やっぱり男の人って、大きい胸が好きなのね」
 そう私にこっそり言うもんだから、二人でくすりと笑った。
 ミリアちゃんだってそこそこあるんだけどね。私とは違って。

「早くこっちに来いよー!!」
 唯一、マーニャさんに気を取られていなかったデニスさんが、湖から声をあげた。
 振り返ったニールにデニスさんが水を掛けると、それが開始の合図のように、皆で激しい水掛け合戦が始まった。


 子供の頃の様に一日中遊び回って、でも帰り道には「腹が減ったなー」なんて当たり前のようにいつもの会話をしている。
 まだヤマキジは2羽残っている。『樫の木亭』に持ち込んで、から揚げにでもしようか。

 ふと、風が呼んでいるような気がして足を緩めた。
 いや気のせいだろう。
 視線をまた前に向けると、皆がわいわいと話をしながら歩いている。その後ろ姿を見ながら何時かの帰り道を思い出した。

 ああ、良かった。皆が笑っていて良かった。


 あの時あんな事がなかったら、今の私も居なかったのだろう。
 おそらくなんて事のない、ちょっとした偶然の巡り合わせがいくつも重なって、今の私を作っている。
 こうして皆と過ごす事が出来て、大事な仲間が出来て、今の私も幸せなんだろう。

 そう、通り過ぎた風に願った。

====================

<おまけ>
登場キャラクター、モテる順

1)マーニャ
2)デニス
3)ミリア
4)リリアン
5)アラン
--壁--
6)ニール

 美人でスタイルもいいしお胸も大きい、お色気ねーさんなマーニャは普通にモテます。でもそのモテ方は「よくナンパされる」感じです。

 それぞれモテ方が違って、ミリアの場合は「ファンが多い」モテ方になります。
 マーニャもミリアも、普通の交際に繋がるようなモテ方とはちょっと違う感じかもです。

 そういう方向性でモテるのはデニス。
 後輩の面倒見がいい、冒険者としての実力もある、それなりにルックスもいい(すごくではないけれど、普通に整っている)。これでモテない訳はないかと。
 面倒を見た後輩女の子にアタックされる事多し、あとは英雄になるのを目当てで交際申し込まれるパターンも多し。

 リリアンのモテもミリアと若干同じ方向性です。ただモテるというより、可愛がられる感じ?

 アランは普通?に異性との付き合い経験がある感じです。ただし作品内のタイミングではフリー。
 ちょっと真面目すぎるので、大人しい女性には好かれるかもですが、本人は強いタイプの女性が好みのようですねw

 ニールはモテるかどうか以前に、元ぼっちで友達いなかったので、出会いすらありませんでした。
 作品内の頃は、友達がわいわい楽しいお年頃&可愛い女の子はどの子も気になるお年頃です(笑)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生 上杉謙信の弟 兄に殺されたくないので全力を尽くします!

克全
ファンタジー
上杉謙信の弟に転生したウェブ仮想戦記作家は、四兄の上杉謙信や長兄の長尾晴景に殺されないように動く。特に黒滝城主の黒田秀忠の叛乱によって次兄や三兄と一緒に殺されないように知恵を絞る。一切の自重をせすに前世の知識を使って農業改革に産業改革、軍事改革を行って日本を統一にまい進する。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

【完結】ガラクタゴミしか召喚出来ないへっぽこ聖女、ゴミを糧にする大精霊達とのんびりスローライフを送る〜追放した王族なんて知らんぷりです!〜

櫛田こころ
ファンタジー
お前なんか、ガラクタ当然だ。 はじめの頃は……依頼者の望み通りのものを召喚出来た、召喚魔法を得意とする聖女・ミラジェーンは……ついに王族から追放を命じられた。 役立たずの聖女の代わりなど、いくらでもいると。 ミラジェーンの召喚魔法では、いつからか依頼の品どころか本当にガラクタもだが『ゴミ』しか召喚出来なくなってしまった。 なので、大人しく城から立ち去る時に……一匹の精霊と出会った。餌を与えようにも、相変わらずゴミしか召喚出来ずに泣いてしまうと……その精霊は、なんとゴミを『食べて』しまった。 美味しい美味しいと絶賛してくれた精霊は……ただの精霊ではなく、精霊王に次ぐ強力な大精霊だとわかり。ミラジェーンを精霊の里に来て欲しいと頼んできたのだ。 追放された聖女の召喚魔法は、実は精霊達には美味しい美味しいご飯だとわかり、のんびり楽しく過ごしていくスローライフストーリーを目指します!!

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

異世界召喚されましたが私…勇者ではありませんが?

お団子
ファンタジー
21歳OL趣味は料理 そんな私がある日突然召喚された。 勇者様?いえ、人違いです。 私勇者様ではありません。 なんだそのゴミスキルはって スキルってなんだよ!! さっさと元の世界に戻せーーー!! え?帰れない? ふざけんなーーーーー!!! こうなったら大好きな料理をしながら 便利スキルで快適に過ごしてやる!! **************** 自由すぎる感じで書いている為 色々と説明不足です なのでゆる~く見て貰えればと思います 宜しくお願いします_(。_。)_

デジタル・リボルト~ディストピアからへの英雄譚~

あかつきp dash
ファンタジー
西暦何年ともおぼつかない未来、AIの進化により大半の仕事が代行され、人類は大いなる余暇を手にすることになった。一方で東京から子供たちによって大人たちは追い出される。 それから10年。片岡里奈は、12歳になるとプレイ資格が与えられるARゲーム「東京迷宮」に参加する。しかし、18歳の誕生日と同時にプレイ資格を剥奪されるという制約があった。東京23区がダンジョンに変貌し、子供たちは魔物と戦いながら生きていく。 失意の中にあった里奈はひょんなことから古輪久遠と出会う。それは新たな世界の開花であった。彼女は仲間たちと東方旅団というクランを立ちあげて大きく変貌した東京の街を生き抜くために模索をはじめた。 ※あらすじはチャットGPTで作ったものを変更しています。 ※更新日について 月~金曜日の朝6:00に更新します。土日の更新はお休みとします。 ※いまのところ無期限で連日投稿とします。 ※更新日について 月~金曜日の朝6:00に更新します。土日の更新はお休みとします。 ※いまのところ無期限で連日投稿とします。 ※小説家になろうにても連載中です。

頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。 その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。 16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。 後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

処理中です...