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討伐隊選出
閑話12 おそらくスライムにとっては災難だった日/デニス(1)【記念企画/ゲスト様ご来訪話(2)】
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【ケモモフ、ノベプラ&アルファ掲載一周年記念企画】
カクヨムで連載中の『おじさん魔法使いと押しかけ女子大生 ~彼は恋を思い出し、彼女は再び恋をする~』(日諸畔先生)から、里中健司さん、山崎明莉さんにゲスト出演していただきました。
※ゲストさんの作品世界とケモモフの作品世界が交差している設定の作品内フィクションです。ご了承下さい。時系列は初期の頃の話になります。
◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。
・デニス…王都シルディスの西の冒険者ギルドに所属する、Aランクの先輩冒険者
====================
普段はこんな低ランクのクエストを、わざわざ受ける事はない。こういうのはまだランクの低い奴らの為に残しておいてやるべきだと思っている。
でも今日は、このクエストを受けてくれる者が居ないんだと、冒険者ギルドの受付嬢に手を合わされて、しょうがないなと依頼のカードを受け取った。
冒険者8年目でAランクの俺には、このクエストをこなしてもなんのメリットもない。
せめて若手を連れて行こうかとギルド内を見回していると、ちょうどやって来た狼獣人のリリアンから逆に声をかけられた。
「デニスさん、どうかしたんですか?」
彼女ならまだ冒険者1年目だし適任だろう。クエストの話をすると、尻尾を振って快諾してくれた。
* * *
クエストの為に森に入り獣道をしばらく進む。ふとリリアンが怪訝な顔をして立ち止まった。
「……何か、居ます」
「魔獣か??」
森の中で魔獣に出会うことは珍しいことではない。でもリリアンは首を横に振った。
「いいえ、違うみたいです。でもなんだか不思議な匂いです」
リリアンは狼の獣人なので、やたらと鼻と耳が利く。
「ちょっと辺りを探してみてもいいですか?」
ああと頷くと、リリアンは森の奥に向かって歩き始めた。
何かの匂いを辿っているリリアンに付いていくと、すぐに目当てに当たったらしい。
「どなたか、そこにいるんですか?」
相手は人なのだろうか? リリアンが向こうの木立ちに向かって声をかけた。
「ああ、よかった! 私、迷ってしまって…… ええっ!? 耳!? 尻尾!?」
木立ちから出てきた長い黒髪の少女は、リリアンの姿を見てやけに驚いている。まるで異様な物を見たかのようだ。
年頃はリリアンと同じか、少し上くらいだろうか。安全とは言えない、こんな森の中に居るのに、武器すら携帯していない様子なのが気になった。
「あの…… この近くでイベントか何かがあるんですか?」
「「えっ!?」」
何故か、妙なことを訊かれた。
* * *
「ご、ごめんなさい。てっきり仮装か何かだと思って……」
少女はアカリと名乗った。
彼女が話した事情を繋げると、気が付いたらこの森にいて、しかも夜を明かしたらしい。魔獣がうろつく森で、結界も張らずに夜明かしをして、無事で済んだのが幸いだろう。
だが、どうもそれだけではない。
「重ね重ね申し訳ないのですが、連れが見当たらなくて…… 一緒に探してはもらえないでしょうか?」
彼女だけでなく、もう一人いたらしいのだ。
「はい。大丈夫ですよ。探し物は得意ですから」
リリアンはそう言って、狼の耳をわざとピクピクさせて見せた。
リリアン曰く、アカリさんから嗅ぎ慣れぬ匂いを感じたそうだ。
そして、狼獣人の彼女が本気を出してそれに似た匂いを探し、さらに聞き耳を立てると、半時もしないうちに探し人を見つけることができた。
「健司おじさん!」
少女が駆け寄って行く先に、やはり武器も持たずに少し変わった服装をした男性が座り込んで居た。彼女が『おじさん』と呼ぶように、見た感じだと30代半ばだろうか。
「ああ、山崎か。無事でよかった。 いたたたた……」
「ああっ もしかして、恒例の筋肉痛ですか?」
「ああ、まさかこんなところで」
そう言いながらちらりと俺たちの方を見た。
「山崎、そちらのお二人は?」
「私の恩人です。一緒におじさんを探してくれたんですよ」
「無事に会えて良かったです。森には魔獣がうろついてますからねぇ。ところで、筋肉痛って聞こえましたが」
落ち着いた口調でリリアンが声をかける。アカリさんと違って、ケンジと呼ばれたこの男性はリリアンに警戒している様子もない。それならこういう初対面の相手の対応は、基本的に女性に任せておいた方がいい。
「ああ、ちょっと。いやだいぶ、体のあちこちが痛くて……」
ケンジさんが申し訳なさげに頭を掻いた。
「デニスさん、回復のポーション持ってましたよね」
「ああ、持っているぞ」
腰に下げた小型のマジックバッグに手を入れる。
「ポーション?」
アカリさんが首を傾げた。まさか、ポーションを知らないのだろうか?
* * *
リリアンは相変わらず手際が良い。
「お二人ともお腹が減ってるんじゃないですか?」
そう尋ねて、二人が首を縦に振るのを確認すると、周囲に結界を張りマジックバッグから出した敷物を手早く敷いた。
「デニスさん、クッションとカップを並べて下さい。あとバッグに茶葉とポットも入ってますから」
そう言いながら、切り目を入れたパンを火魔法で炙り、ソーセージにも焼き目を付ける。
先程の二人にクッションを勧める。彼らは目を丸くさせながらリリアンが料理をするのを眺めていた。何か物珍しいものでも見ているような、そんな様子だ。
「いや驚いた。リリアンちゃん、それはどうやっているんだい?」
「はい?」
「今、そのパンとソーセージを焼くのに、手をかざして焼いたように見えたんだが……」
「はい、火魔法ですよ?」
「え?! 魔法!?」
リリアンの言葉に二人はえらく驚いている。どうしたんだろうか?
「お二人の故郷では魔法で料理はしないんですか?」
その隣で、火魔法と水魔法を同時発動させて、茶葉を入れたポットにお湯を注ぐ。それを見て、さらに二人は驚いた顔になった。
「君も魔法が使えるのか!?」
「……キュウトウキ……」
アカリさんの言った言葉はちょっと意味がわからなかったので、ケンジさんの質問に答える。
「そんなに珍しい事ではないと思いますが…… まあ、確かに魔法の同時発動はちょっとばかし複雑ですけど」
「いやそんな魔法、俺は聞いた事も見た事もないぞ。魔術でもない」
「マジュツ? なんですか、それは?」
逆に尋ねると、ケンジさんは何かを深く考え込むようにしばらく口元に手を当てていた。
「俺らの使う魔法と、彼らが使っている魔法は全然違うものなのか…… さっきの、筋肉痛を治した不思議な飲み薬といい…… そうだとすると……」
そしてアカリさんの方を向いて言った。
「どうやら俺たちは別の世界に来てしまったようだ」
====================
物語は次回へ続きます。どうぞお楽しみに!
====================
『おじさん魔法使いと押しかけ女子大生 ~彼は恋を思い出し、彼女は再び恋をする~』(日諸畔先生)
魔法使いの里中 健司(36)は、女子大生・山崎 明莉(18)に突如求婚された。
子供の頃に彼女を助けた魔法使いは、こう言ったそうだ。
『大人になって魔法使いと出会ったら、その人と結婚してあげて』
健司は気付く。
『え、それ俺じゃん』
その事実を知らない明莉は、魔法使いの助手(配偶者狙い)となることを申し出た。
おじさん魔法使いと女子大生の恋が、割と強引に動き出す。
カクヨムで連載中の『おじさん魔法使いと押しかけ女子大生 ~彼は恋を思い出し、彼女は再び恋をする~』(日諸畔先生)から、里中健司さん、山崎明莉さんにゲスト出演していただきました。
※ゲストさんの作品世界とケモモフの作品世界が交差している設定の作品内フィクションです。ご了承下さい。時系列は初期の頃の話になります。
◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。
・デニス…王都シルディスの西の冒険者ギルドに所属する、Aランクの先輩冒険者
====================
普段はこんな低ランクのクエストを、わざわざ受ける事はない。こういうのはまだランクの低い奴らの為に残しておいてやるべきだと思っている。
でも今日は、このクエストを受けてくれる者が居ないんだと、冒険者ギルドの受付嬢に手を合わされて、しょうがないなと依頼のカードを受け取った。
冒険者8年目でAランクの俺には、このクエストをこなしてもなんのメリットもない。
せめて若手を連れて行こうかとギルド内を見回していると、ちょうどやって来た狼獣人のリリアンから逆に声をかけられた。
「デニスさん、どうかしたんですか?」
彼女ならまだ冒険者1年目だし適任だろう。クエストの話をすると、尻尾を振って快諾してくれた。
* * *
クエストの為に森に入り獣道をしばらく進む。ふとリリアンが怪訝な顔をして立ち止まった。
「……何か、居ます」
「魔獣か??」
森の中で魔獣に出会うことは珍しいことではない。でもリリアンは首を横に振った。
「いいえ、違うみたいです。でもなんだか不思議な匂いです」
リリアンは狼の獣人なので、やたらと鼻と耳が利く。
「ちょっと辺りを探してみてもいいですか?」
ああと頷くと、リリアンは森の奥に向かって歩き始めた。
何かの匂いを辿っているリリアンに付いていくと、すぐに目当てに当たったらしい。
「どなたか、そこにいるんですか?」
相手は人なのだろうか? リリアンが向こうの木立ちに向かって声をかけた。
「ああ、よかった! 私、迷ってしまって…… ええっ!? 耳!? 尻尾!?」
木立ちから出てきた長い黒髪の少女は、リリアンの姿を見てやけに驚いている。まるで異様な物を見たかのようだ。
年頃はリリアンと同じか、少し上くらいだろうか。安全とは言えない、こんな森の中に居るのに、武器すら携帯していない様子なのが気になった。
「あの…… この近くでイベントか何かがあるんですか?」
「「えっ!?」」
何故か、妙なことを訊かれた。
* * *
「ご、ごめんなさい。てっきり仮装か何かだと思って……」
少女はアカリと名乗った。
彼女が話した事情を繋げると、気が付いたらこの森にいて、しかも夜を明かしたらしい。魔獣がうろつく森で、結界も張らずに夜明かしをして、無事で済んだのが幸いだろう。
だが、どうもそれだけではない。
「重ね重ね申し訳ないのですが、連れが見当たらなくて…… 一緒に探してはもらえないでしょうか?」
彼女だけでなく、もう一人いたらしいのだ。
「はい。大丈夫ですよ。探し物は得意ですから」
リリアンはそう言って、狼の耳をわざとピクピクさせて見せた。
リリアン曰く、アカリさんから嗅ぎ慣れぬ匂いを感じたそうだ。
そして、狼獣人の彼女が本気を出してそれに似た匂いを探し、さらに聞き耳を立てると、半時もしないうちに探し人を見つけることができた。
「健司おじさん!」
少女が駆け寄って行く先に、やはり武器も持たずに少し変わった服装をした男性が座り込んで居た。彼女が『おじさん』と呼ぶように、見た感じだと30代半ばだろうか。
「ああ、山崎か。無事でよかった。 いたたたた……」
「ああっ もしかして、恒例の筋肉痛ですか?」
「ああ、まさかこんなところで」
そう言いながらちらりと俺たちの方を見た。
「山崎、そちらのお二人は?」
「私の恩人です。一緒におじさんを探してくれたんですよ」
「無事に会えて良かったです。森には魔獣がうろついてますからねぇ。ところで、筋肉痛って聞こえましたが」
落ち着いた口調でリリアンが声をかける。アカリさんと違って、ケンジと呼ばれたこの男性はリリアンに警戒している様子もない。それならこういう初対面の相手の対応は、基本的に女性に任せておいた方がいい。
「ああ、ちょっと。いやだいぶ、体のあちこちが痛くて……」
ケンジさんが申し訳なさげに頭を掻いた。
「デニスさん、回復のポーション持ってましたよね」
「ああ、持っているぞ」
腰に下げた小型のマジックバッグに手を入れる。
「ポーション?」
アカリさんが首を傾げた。まさか、ポーションを知らないのだろうか?
* * *
リリアンは相変わらず手際が良い。
「お二人ともお腹が減ってるんじゃないですか?」
そう尋ねて、二人が首を縦に振るのを確認すると、周囲に結界を張りマジックバッグから出した敷物を手早く敷いた。
「デニスさん、クッションとカップを並べて下さい。あとバッグに茶葉とポットも入ってますから」
そう言いながら、切り目を入れたパンを火魔法で炙り、ソーセージにも焼き目を付ける。
先程の二人にクッションを勧める。彼らは目を丸くさせながらリリアンが料理をするのを眺めていた。何か物珍しいものでも見ているような、そんな様子だ。
「いや驚いた。リリアンちゃん、それはどうやっているんだい?」
「はい?」
「今、そのパンとソーセージを焼くのに、手をかざして焼いたように見えたんだが……」
「はい、火魔法ですよ?」
「え?! 魔法!?」
リリアンの言葉に二人はえらく驚いている。どうしたんだろうか?
「お二人の故郷では魔法で料理はしないんですか?」
その隣で、火魔法と水魔法を同時発動させて、茶葉を入れたポットにお湯を注ぐ。それを見て、さらに二人は驚いた顔になった。
「君も魔法が使えるのか!?」
「……キュウトウキ……」
アカリさんの言った言葉はちょっと意味がわからなかったので、ケンジさんの質問に答える。
「そんなに珍しい事ではないと思いますが…… まあ、確かに魔法の同時発動はちょっとばかし複雑ですけど」
「いやそんな魔法、俺は聞いた事も見た事もないぞ。魔術でもない」
「マジュツ? なんですか、それは?」
逆に尋ねると、ケンジさんは何かを深く考え込むようにしばらく口元に手を当てていた。
「俺らの使う魔法と、彼らが使っている魔法は全然違うものなのか…… さっきの、筋肉痛を治した不思議な飲み薬といい…… そうだとすると……」
そしてアカリさんの方を向いて言った。
「どうやら俺たちは別の世界に来てしまったようだ」
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『おじさん魔法使いと押しかけ女子大生 ~彼は恋を思い出し、彼女は再び恋をする~』(日諸畔先生)
魔法使いの里中 健司(36)は、女子大生・山崎 明莉(18)に突如求婚された。
子供の頃に彼女を助けた魔法使いは、こう言ったそうだ。
『大人になって魔法使いと出会ったら、その人と結婚してあげて』
健司は気付く。
『え、それ俺じゃん』
その事実を知らない明莉は、魔法使いの助手(配偶者狙い)となることを申し出た。
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