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獣人の国

19 食事のマナーとアミュレット/アラン(1)

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◆登場人物紹介(既出のみ)
・ニール…主人公リリアンの友人で、冒険者見習いとして活動している自称田舎貴族の少年
・アラン…Bランクの冒険者。ニールの「冒険者の先生」をしている。
・マーニャ…エルフでBランクの魔法使い。美人で酒に強い。

==============================

 クエストからの帰り道、西門を入った所でポーション売りの少年が声を張り上げている。
「この間買ってとても助かったよ。この薬は君が作ってるのかい?」
 そう声をかけると、少年は嬉しそうに笑った。
「うん! おれ、こういうのは得意なんだ。お兄さんたちみたいに戦ったりとかは出来ないんだけどね」
 ポーションの不足はなかったが、買い置き分と毒消しや麻痺治しなど、いくつか購入した。

「毎度あり! あと2~3日はこの辺りにいるから、またよろしく!」
「え? もう他の所に行っちゃうのか?」
 ニールが残念そうだ。あまり同年代の者が周りに居ないせいか、この少年が気になるらしい。
「うん、同じ場所で長く売ってると、うるさいオジさんに見つかっちゃうからさ」
 粗悪なポーションならともかく、店売りと遜色そんしょくのない品を出す彼の行商は、正規の店を出してる者にとっては商売の邪魔になる。そういった店主にでも叱られるのだろう。

 先日聞いた話によると、なんでも病気の父親がいて、その薬を買おうと働いているらしい。ニールよりも年下だろうに、大分しっかりとしている少年のようだ。

 * * *

 それに比べて……
 アランは、目の前の光景を見てため息をついた。

 元居た中央エリアでなく、ここ西エリアの冒険者たちとクエストに行くようになった事は、ニールの成長の為にもとても良かったはずだ。あれからニールは、冒険者として大分成長した。自ら進んで練習や勉強をするようになった。今までの彼の甘さを考えたら本当に雲泥うんでいの差だ。

 しかし、こんな風に食事中の行儀が悪くなるのは誤算だった。町の冒険者たちとも食事をする機会を持つうちに、荒々しい所作しょさが身に付いてしまったらしい。

「ニール。流石に行儀が悪すぎます」
 口に含んだ肉で両の頬を膨らませたまま、ニールは顔を上げた。その顔を見て、またため息が出た。

 今日の夕食は『樫の木亭』ではないが、やはり冒険者がよく集まる店だ。確かにテーブルマナーを振りかざして食事をするような場所でもない。
「こういった店で堅苦しくするのは場違いなのは分かります。しかし、必要以上に見苦しく振る舞うのは褒められた事ではありません」
 どうやら風向きが悪いという事に気が付いたのだろう。ニールは静かに口の中身を咀嚼そしゃくして、息と共に飲み込んだ。

「デニスさんも、リリアンさんも、お食事は綺麗になさっているでしょう? お二人とも平民ですが基本はちゃんと身に付けていらっしゃるようです。身分を言うのなら貴方が一番きちんと出来ていておかしくないはずなのに……」
 情けない……
 三度目のため息と共にらした言葉も、しっかり聞こえたらしい。ニールはバツが悪そうに視線を落とした。


「あら、お二人とも久しぶりね」
 聞き覚えのある声に顔を上げると、マーニャさんがテーブルの横に立っていた。
 ニールは話がれた事に一瞬ほっとした顔を見せたが、慌てて手元に置いていた布で口元をぬぐった。

「ご一緒してもいいかしら?」
 勿論断る理由はない。むしろ自分にとっては大歓迎だ。
「どうぞ、喜んで」
 自分の隣の席を差してうながした。

 今日もマーニャさんはなかなかに魅力的な服装をしている。大きく襟ぐりが開いた服から豊かな胸の谷間がうかがえそうで、しかもペンダントがまさに視線を誘うような位置で自己主張をしている。
 斜めとはいえ向かいの席に座られると、目のやり場に困るだろう。自分の向かいに座っているニールの困惑より、自身の保身を選んだ。

 マーニャさんの注文オーダーが届き、皆で軽く杯をかかげる。
 彼女とこうしてゆっくりと話が出来るのは二月ふたつきほどぶりか。初めてお会いしたモーア狩りの時以来だ。
 あのあとすぐにマーニャさんは旅に出たと聞いていたし、その後戻っていたようだったが、声をかける機会を逃してしまって、またそれきり見かけなかった。

「しばらくお見掛けしませんでしたね」
 そう切り出すと、モーアのローストを丁寧ていねいに切り分けながらマーニャさんが応える。
「あちこち行ってたのよ。ちょっと面倒な探しものがあってねぇ」
「またクエストに行かれたのかと」
「まぁ、そんなところ」
「俺、クエストの話聞きたいです!」
「んー、ごめんなさい。今回の内容はナイショなの。依頼主からの要望でねぇ」
 ニールがあからさまにガッカリした。顔に出過ぎじゃないか。自分も残念に思ったが、ニールのお陰で顔には出さずに済んだ。

「話はしちゃだめだけど。代わりに、これをお土産にあげるわ」
 マーニャさんが取り出したのは、手のひらに乗るくらいの尾の形をしたアミュレットだった。
「これは…… もしかして、ナインテール?」
 マーニャさんは、しぃーと言うように人差し指を口にあてて、目配せをして見せた。
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