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ア、アリガト…

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 サラとリリアの新たなるボディに付加されていたとんでもない機能を、ボーディとモフリーナが粘り強くモフレンダを説得した事により、なんとか機能の制限(削除は出来なかった…)をする事に成功した。
 あの機能がいかに危険であるかを、懇切丁寧に説明したおかげで、機能発動=絶対に死ぬと言う最悪の事態を避ける事は出来たのだが、かの有名な西遊記に出てくる斉天大聖孫悟空の頭の輪っかである緊箍児の様に、トール達に不利益となる行動や言動を、新たなるボディに埋め込まれているとある一部分が感知すると、心臓をきゅっ! と軽く締めるのだそうだ。
 その苦痛はかなりの物らしいが、絶対に命に別状がないレベルまで、心臓を締めあげる力は落とされているらしい。
 ただし、その苦痛の継続時間は、蒼の切っ掛けとなった行動や言動に比例するそうだ…恐ろしい。

 そんなこんなで、何とかサラとリリアの新しいボディは完成をした。
 数百回にも及ぶ精密検査と新ボディと適合テストを経て、とうとうそれぞれのボディがお披露目される事となった。
 余談だが、ダンジョンマスターでもあり、このパンゲア大陸の裏の王である3人が、ずっとこのボディ作成に掛かりっきりになっていたため、表の王であるディー・アーナ教王、ヘーリ・オース教王、テーラ・マテール教王が、休み返上で必死に働いていてらしい。
 兎にも角にも、サラとリリアが待ち望んだ新ボディと対面の時がとうとう来たのだ。

「か、完成したんどすか?」「サラ…口調がおかしくなってますよ…で、ボディはどこですか?」
 サラもリリアも、これからこの星での残りの人生を共にする、新たな自分の肉体の感性の報を受け、そわそわしっぱなしだった。
「おお、待たせたのぉ。お前達のボディ作成には、本当に苦労したぞ…いや、本当に…色々とのぉ…」
 もの凄くやつれた顔のボーディが呟く。
「ええ…本当に疲れました…」
 同じく、両目の下に真っ青なクマを浮かべたモフリーナが、続いて呟いた。
「私は頑張った」
 2人とは反対に、妙にご機嫌なモフレンダ。
 サラとリリアは、この3人は決して何があったかなど言わぬだろうが、それでも何があったのだろうかと考えずにはいられなかった。

「さて、まあ…問題は多々あったものの、なんとかお主等のボディは完成した」
 ボーディが仕切り直した。
 どうやら先程までのぼやきは、無かった事にしたいらしい。
 無論、これ程までにやつれた顔を見せているボーディに対し、サラもリリアも敢て何があったかなど突っ込む様な事はしなかった。
「ア、アリガト…」「感謝しております」
 サラは何故かカチコチになっていたが、リリアは平常運転で、共にボーディへ感謝の言葉を口にする。
「これでお主等も、管理局の束縛から完全に解放され、自由の身となるじゃろう」
 すでに例の薬で管理局とは色々な意味で切れてはいる2人。
 だが、まだ最後の管理局との繋がりとも言える装置が、現在の2人のボディの中に埋め込まれている。
 それから魂が解放された時が、本当の意味での管理局からの解放となる事を、ボーディが口にしたのだ。
 サラもリリアも、ボーディの言葉の意味を正しく理解出来たので、ただただ無言で深々と頭を下げる。
「これで後顧の憂いも無くなった事じゃろう。なので、そろそろ妾達に黙っていた事を話してもらおうかのぉ」
「はっ?」「えっ?」
 下げた2つの頭が、瞬時に跳ね上がった。
「妾達が知らぬとでも思っておるのかや? お主等がこの世界に送り込む手引きをした、例の竜人と軍勢の事じゃよ。そのせいで、まだ未成熟なトールヴァルドの元に、あ奴の異次元同位体が集まってしもうたのじゃ。まだ妾達は、その辺の事情を聞いておらぬでな。そろそろ、お主達が隠しておる事柄を話してもらおうかのぉ。無論、妾達の事情も話してやるが故…の?」
 今まで見た事も無い様な真剣な目つきで、ボーディがサラとリリアに向かってそう言った。
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