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選択肢がなかったのか?

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 サラとリリアさんがパンゲア大陸に渡って、そろそろ2ヶ月になる。
 ちょくちょくモフリーナやボーディから、2人のボディ製作の途中経過の連絡は入るが、まだもう少しかかりそうとの事。
 この間、女神ネスが眠る美しい湖の畔に建つ、トールヴァルド伯爵邸は…実に平和だった。

「ふぅ…お茶が美味い…」
 執務の合間の一服で、俺がお茶をのんびり愉しんでいたら、給仕をしてくれていたユズカが俺に声を掛けた。
「伯爵様は、最近すんごくのんびりしてますねぇ?」
 現在の執務室は俺とユズカだけなので、彼女の口調も砕けた感じなのだ。
 元が同じ日本人であるという事で、周囲に他人の目が無い所では、普段通りの口調で話していいと許可をしているからな。
 いや…普段でも、全然遠慮の欠片も無い話し方だけど…。
 まあ、そもそも俺の身内は俺が転生者でユズユズ夫婦が転移者だってしってるけどね…念のためね。
「まぁな。サラとリリアさんとサラが居ないだけで、こんなにも心がゆったりと出来るなんてなぁ…」
「何でサラさんだけ2回も言った?」
 ふっ…そんなの決まってるじゃないか。
「うむ、大事な事だからだ!」
「…サラさんの存在がストレスって事ですかね?」
 流石は元日本人! 俺の言いたい事を良く分かってらっしゃる。
「その通り! まあ、ミルシェを除けば、この邸の中で一番付き合いが長いからな。まあ、付き合ったりはしないけど」
 ほら、付き合いって言葉のニュアンスには色々あるじゃん? だから誤解しない様に一応一言付け加えておくのを忘れない。
「ああ、確か伯爵様が幼い時に、王城から押しかけて来た…んでしたっけ?」
「なし崩し的に…な。今思うと、あれが間違いの始まりだった気がする…」
 いや、あいつの事だから、どんな手を使ってでも俺の所にやって来ただろうけどさ。
「間違い…!? やっぱり、伯爵様ってそういう趣味が……」
「んなわけあるかーーーい!」
「ナイスつっこみ! まあ、その辺の事情は知ってましたけどね」
 恐ろしい冗談を言うもんじゃ無いよ、ユズカ君。

「ところでユズノちゃんは?」
「今はお寝んねしてます。メリル様とミルシェ様がお世話をしてくれるそうです。何でも、子供を産んだ時の練習のためだとか」
 なるほどなぁ。
「2人の出産はまだちょっと先のはずだけどなぁ…」
「いや~、愛されてますなぁ~伯爵様は~!」
 何だそのニヤケ顔は!
「それを言うなら、お前だってユズキにめっちゃ愛されてるだろうが! いっつもいっつも、いちゃこらしやがって!」
「ふっ…当然です! 柚希は私のぞっこんラヴですから、私には逆らえないのです!」
 こ、怖! めっちゃ怖っ! こいつ、絶対に悪女だ!
「そ、そうか…はははは…仲良きことは善き事かな…ははははは…」
「仲良いですよ~! 私達の愛は天より深く海より高いのです!」
 いや、それ間違ってるぞ…やっぱ、こいつってただの馬鹿なのかな? 
「おっと、そろそろ時間だ。えっとマチルダがどこに居るか分かるか?」
 さ~って、書類の山は残り半分かぁ。
「えっと、多分メリル様達と一緒に、柚乃のお世話してると思いますよ。呼んできましょうか?」
 結構クールっぽく見えるけど、結構子供好きなんだよなぁ…マチルダって。
「んじゃ、お願いするわ。そろそろ休憩終わりって伝えて来て」
「ヤル〇ツェ・ブラッキン!」
「俺はブライキ〇グ・ボスか! ってか、お前はアンドロ軍団かよ!」
「イィー!」
「ショッカーか!」
「あなたはエスパーかもしれない」
「そのマチルダさんじゃねーよ!」
「ははははははは! さすがは伯爵様! ツッコミお見事!」
 こいつ、本当に平成生まれなのか?
「いいから、さっさとマチルダ呼んでこい!」 
「は~~~~い!」
 ユズカはビシっと敬礼をした後、テーブルの茶器類をカートに乗せると、お尻で執務室の扉を押し開け出て行った。
 
 ユズキよ…本当にあんな嫁でいいのか? 
 いや、そもそもこっちに転移して来る前から尻に敷かれてたらしいから、それしか選択肢がなかったのか?
 …俺が言えた義理じゃないけれどさ…。
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