上 下
1,172 / 1,457

通信内容

しおりを挟む
「ふむふむ…なるほどのぉ。あい分かった。妾達に全て任せるが良い。こちらで意見がまとまり次第、また連絡をするでの」
 トールからの通信を受けたボーディは、次の連絡を約して通話を切った。
 そして、暫し目を閉じて天井へと顔を向けて考える。
 モフリーナは、そんなボーディへと声を掛けた。
「それで、トールヴァルド様のお話とは?」
 結構な時間話していたボーディとトールの話が、単なる世間話では無い事は、側で聞いていたモフリーナにも分かっている。
 いや、どちらかというと結構重めな話題であったであろう事も、憶測程度ではあるが掴んでいた。
「うむ…」
 ゆっくりと閉じていた目を開け、声のした方…つまりは、モフリーナへと顔を向けたボーディは、何かを躊躇っていた。
 モフリーナは、ボーディが語り始めるのを、黙ってじっと待っていた。
 その様子を見つめていたボーディは、意を決してその口を開いた。
「実は…あ奴からの通信は相談事じゃ」
「相談?」
「ああ。それもかなり重要な…な」
 そして語られたトールとの通信内容。 
 それはトールとボーディの通信内容をある程度は予想していたモフリーナにとっても意外な内容であった。

 管理局からこの星へと派遣されてきているサラとリリアが、どうやら管理局と一切連絡が取れない状況に陥っている事。
 リリアの考えでは、管理局に捨てられた可能性が高いという事。
 現在、2人が使用しているボディは、短ければ10年程度、長くとも数10年での使用限界が来る事。
 管理局にある2人の本体は、すでにこの地の2人にエネルギーを送るためだけの存在となっており、活動していない事。
 ボディの使用限界が来た時は精神体が消滅し、同時に本体はただの抜け殻となってしまい、朽ち果てるであろう事。
 ダンジョンマスター達に、やがて来るボディの寿命までに、代わりのボディを用意して欲しい事。
 そして、これらに付随する細かい事柄などが、トールとの通信内容であった。

「なるほど、ボーディ様が考え込むのも分かる気がします」
「で、あろう?」
 ボーディの話を聞いたモフリーナは、何を苦悩しているのかがはっきりし、納得顔になった。
「それで、どういたしますか?」
 とは言え、ただ納得しただけでは話が進まない。
「条件付きではあるが、あの2人に協力してやっても良いと、妾は考えておる」
 モフリーナにトールとの通信内容を話す事で、結構冷静にその内容を噛み砕き理解する事が出来たボーディの意見は、サラとリリアに協力するという。
 そのボーディの言葉に、少々驚くモフリーナ。
「協力するのですか、管理局の走狗に?」
「ああ」
 だが、ボーディの答えは変わらなかった。
「このまま寿命が尽きてくれた方が、色々と手間が省けると思うのですが…」
 そんなボーディの言葉に疑問を呈するモフリーナ。
「うむ、それはその通りなのじゃが、先にも述べた様に、妾は条件付きで協力してやっても良いと考えておる」
「そういえば、条件付きと仰ってましたね」
 条件によっては手を貸すと、確かにボーディはそう言っていた。
「うむ」
 ボーディの考えた条件を確認してから、もう一度この問題は議論すべき。
 そう考えたモフリーナが、条件の内容を問うた。
「それで、その条件とは?」
 それを聞いたボーディは、ニヤリと笑うと、
「あの2人には、管理局を完全に抜けてもらう」
「抜ける?」

 意外という程では無いかも知れない。
 だが、管理局べったり依存の2人に、管理局から完全に抜けるという事は、かなりの大問題となるはずだ。
 すでに管理局と隔絶されたとはいえ、未だに彼女達の本体は管理翼の何処かで眠っているはず。
 なので、その管理局から抜けるという事は、もう輪廻転生の輪には戻れなくなるという事に等しい。
 これは、本体に魂が、この星に精神体が分離しているために起きてしまう現象なので、近い将来どちらにせよ解脱以外の方法で輪廻の輪から外れてしまう事を意味する。
 つまり、未来永劫、彼女達の魂は如何なる物や者にも生まれ変わる事が出来ないという事に他ならない。

「安心せい。妾に1つ良いアイディアがあるのじゃ」
 先程よりも悪い顔で、ニヤリと笑うボーディであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?

初老の妄想
ファンタジー
17歳で死んだ俺は、神と名乗るものから「なんでも願いを一つかなえてやる」そして「望む世界に行かせてやる」と言われた。 俺の願いはシンプルだった『現世の全てを入れたストレージをくれ』、タダそれだけだ。 神は喜んで(?)俺の願いをかなえてくれた。 希望した世界は魔法があるモンスターだらけの異世界だ。 そう、俺の夢は銃でモンスターを狩ることだったから。 俺の旅は始まったところだが、この異世界には希望通り魔法とモンスターが溢れていた。 予定通り、バンバン撃ちまくっている・・・ だが、俺の希望とは違って勇者もいるらしい、それに魔竜というやつも・・・ いつの間にか、おれは魔竜退治と言うものに取り込まれているようだ。 神にそんな事を頼んだ覚えは無いが、勇者は要らないと言っていなかった俺のミスだろう。 それでも、一緒に居るちっこい美少女や、美人エルフとの旅は楽しくなって来ていた。 この先も何が起こるかはわからないのだが、楽しくやれそうな気もしている。 なんと言っても、おれはこの世の全てを持って来たのだからな。 きっと、楽しくなるだろう。 ※異世界で物語が展開します。現世の常識は適用されません。 ※残酷なシーンが普通に出てきます。 ※魔法はありますが、主人公以外にスキル(?)は出てきません。 ※ステータス画面とLvも出てきません。 ※現代兵器なども妄想で書いていますのでスペックは想像です。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

処理中です...