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その頃調査隊は…

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 グーダイド王国の国分に横たわる巨大な山脈。
 その向こうにあり、王国としては未だだれも踏んだ事のない土地…正確にはすでにナディア達が踏破しているが…の調査に乗り出した、グーダイド王国の侯爵であるヴァルナルが率いる総勢103名をの調査隊。
 彼等は、トールヴァルド伯爵が女神より借り受けている巨大飛行船、ホワイト・オルター号でこの地の奥深くまでやって来た。
 この調査の本来の目的は、過去王国を山脈側から襲いきた悪魔の様な軍団が、再び襲い来るかもしれないという女神ネスからの情報に基づき実行さたものだ。
 だが、極秘に時間を掛けてダンジョンマスター達がその特殊能力を存分に発揮して事前調査を行い、その可能性が非常に低い事を調べ上げていた。
 仮に再び悪魔の様な軍団が再び王国を襲ってきたとしても、それを撃退する事が出来るだけの戦力…というか、退ける事が出来る程の戦力が、かの地に隠されている事も調べは着いていた。
 当然だが、その情報は調査隊を率いるヴァルナルにも十分に理解出来ている。
 ダンジョンマスター達とトールヴァルドが、ヴァルナルが出発するまでにしっかりと時間を掛けて説明を行い、更に真の敵への対策まで練ったのだから、知らないわけが無い。
 なので、本来はグーダイド王国にとって利も見込む事が出来ない、前人未到の地の調査に乗り出す事など必要は無い。
 だが、の調査隊が王都を出発するまでに広がった様々な噂が、それを止める事を許さなかった。 
 いや、正確にはアルテアン侯爵領に到着するまでは、この調査に意味が無くなった事など、ヴァルナル本人ですら知らなかったのだから、これはどうにも致し方がなかったのかもしれない。

 時系列順に並べ直せば、調査に向かう決死隊が王都を出発し、ヴァルナル領へと到着。
 トールによる謀略により、決死隊は人魚さん達への供物とされた。
 決死隊が快楽の海でおぼれている頃、調査に向かう土地に関しての詳細が徐々に明らかになる。
 そして、真なる敵の存在が明らかとなる。
 人魚さん達が開放した決死隊が、ヴァルナル領へと帰って来たが、あの快楽よ再び…と、ダンジョンで金を稼いで娼館通い。
 ダンジョンマスター達により、例の土地に住む住民達との交渉が完了。
 余談ではあるが、この辺りでウルリーカがアルテアン家の次男を出産。
 ダンジョンマスターによって、真なる敵への備えが完成。
 アルテアン家一同及びトールヴァルド領の住民などに、その対策を施す。
 トールヴァルド家の使用人の操縦により、ホワイト・オルター号で、山脈越えを果たし、目的地へと到着。
 こんな所だろうか。

 ところでこの目的地とは、つまりはダンジョンマスターによって事前に交渉が済んでいる、湖の畔の村の事。
 何でそんな安全な所にわざわざ大舞台を率いて調査に行くのか…それは、単に危ない事は嫌だから。
 危険な場所は既に判明している。
 だが、王国にとって意味のない…は、少々言い過ぎかもしれないが、利益にもならない危険な調査に、未来ある若者を向かわせるのは非常に勿体ない。
 そもそも、こんな大部隊とはいえ、トール達が真の敵とみている者達にとっては、何の障害にもなりはしない。
 肉の壁にすらならないのだから、何人居ようと意味はない。
 そんな危険な敵が出てくるかもしれない場所に、若者たちを100人も送り込む意味がない。
 なので、トールヴァルドもヴァルナルも、こう考えたのだ。
 安全な土地で数日間調査した振りをしてお茶を濁そう…っと。
 事前に調査隊の受け入れする事は、すでに交渉済みだ。
 調査隊が去った後、この土地に住む者達を遥かなるパンゲア大陸で、家付き食事つきで迎え入れる事も、すでに交渉済み。
 なので、住民の住む村の周辺の森などで危険な獣と戦ったりしない限りは、危険が彼等に及ぶことはない。
 まあ、その程度であれば、ヴァルナルの領地で第9番ダンジョンにアタックしている時と、そう危険度は変わらない。
 そこで命を落とす事があるなら、それはもう仕方がないことだと言えよう。
 まあ、調査隊が逗留する事になっている湖周辺の森に、そんな危険な獣が居ない事も調査済みではあるのだが…。

 さて、そんなぬるま湯に浸かった決死隊…もとい調査隊一同が、村の住民達と陽が沈むと同時に始めた大BBQ大会。
 ホワイト・オルター号に積み込んで来た酒も大いに振る舞われ、騎士も衛士も村人たちも、吞めや歌えの大騒ぎ。
 そんなお祭り騒ぎを、ため息を付きながら、2人のメイドが湖面に着水させたホワイト・オルター号のキャビンから眺めていた。 
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