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テンションMAX

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「ふむ…これは確かに少々攻撃力が増しておるのぉ…」
 これが、カジマギーともふりんの報告によって、ボーディが改めてアルテアン家の女子陣がダンジョンでの実践訓練している様子を見に来た時の感想。 
「でも、別に攻撃力や防御力が想定数されていたものより増えたところで、何の問題もないですよね?」
 モフリーナは、その光景を見て不思議そうな顔をした。

 ちなみにモフレンダはここにはいない。
 ミヤの最終調整中に部屋に飛び込んできた、もふりんとカジマギーの報告を聞いたモフリーナとボーディが、これ幸いとばかりに逃げ出したため、1人で調整を行っている為である。
 意外に思うかもしれないが、モフリーナもボーディも、こうした細かい作業が非常に苦手であった。
 まあ、調整が苦手なのでモフリーナがスタンピードを起こしたわけだし、面倒くさいからという理由でずっと下水の下でボーディは寝ていたのだ。
 2人とも出来ないわけでは無い。 
 特にボーディは、ほぼ勘だけで新たなモンスターを作り出したりも出来るし、モフリーナだって真面目にやれば自分好みに細かな調整だって出来る。
 単にちまちまとした細かい作業が面倒くさいという理由で、最終調整の場を逃げ出したのだ。
 まあ、モフレンダがこういったちまちま黙々とした作業が得意だというのもあるが…。

「まあ、問題じゃないかもしれないけど…これって想定外だろ? 皆の体に悪い影響とか負担とかは?」
 トールが心配しているのは、攻撃力が云々よりも、使用者の体に影響が出ないかどうか。
 彼の嫁達や両親に妹達、それに自らが生み出した妖精達に使わせるものだ。
 しかも、今回はトールがガチャ玉を使って創り出した装備でもないから、心配になるもの当然だろう。
「特に体に負担は無いでしょう。ただ…」
 トールの問いに対し、モフリーナが答えたが、
「ただ?」
 モフリーナにトールが言葉の続きを促す。
「少々、精神には…」
「精神に? おい、それって不味いんじゃないのか!?」
 トールは、モフリーナの答えに食って掛かった。
 そんな2人の会話を聞いていたボーディは、
「精神に異常でも出るのかや? 妾の見立ててでは、特に問題も無いように思えるのじゃが…」
 頭にクエスチョンマークをいくつも浮かべている様だ。
「不味いと言えば不味いのですが、別に精神に異常は出ませんよ?」
「「どういう意味(じゃ)?」」
 トールもボーディも、モフリーナが何を言っているのか理解できなくなってきた。
「いえ、Lシリーズを使用しての戦闘で、どうも精神が昂ぶっていると言いますか、かなりの興奮状態に陥っていると言いますか…」
 確かにモフリーナの言うように、Lシリーズを装備したアルテアン家の女性陣は、誰がどう見てもテンションMAXである。
 全員が高笑いをしながら、モンスターの群れに突撃し、接敵するや否や斬っては捨て斬っては捨て。
 それだけでなく、に御用としているモンスター達をも、とことんまで追いかけて笑いながら切り捨てる。
 一般の人からしたら、どうみても極悪非道の悪役にしか見えない所業だ。  
「「……………」」
 トールもボーディも、そりゃ言葉を失うというものであろう。
「それでですね、この興奮した状態って、いつまで続くと思います?」
 眉間に少し皴を寄せたモフリーナがトールに声を掛けたが、
「…考えたくない…」 
 トールの呟きは、アルテアン家の女性陣が放つ爆音でかき消されてしまった。
 モフリーナとボーディは、ぽつりと呟いたトールから、ちらりと戦乙女軍団へと目を向けた後、
「何かあったんですか?」「何かあるのかや?」
 揃ってそう問いかけた。
「あ~、うん。さっきの休憩の時、やたらと皆のテンションが高かったなぁ…っと思って。後、あのテンションが夜まで続くとなると…俺が枯れる…」
 それを聞いた2人は顔を見合わせた後、がっり今夜のトールの寝室を想像した。
 そして…、
「「あははははははははは…」」
 揃って乾いた笑い声をあげるしか出来なかった。
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