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善人じゃない

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 この新大陸の周囲は、海流を操作する事によって常に渦を巻く海域となっている。
 それも結構な範囲で、ぐるっと大陸を渦潮が囲んでいるので、基本的に海からの接近も脱出も不可能。
 そもそも大陸といってはいるが、海底から伸びた巨大な無数の柱によって海面よりも高い場所にある土地である。
 正確には、無数に乱立する柱と大陸本体部分による立体トラスドラーメン構造で、海面より数十メートルの高さがある。
 デザインとして参考にしたのは、かの手塚先生がプロデュースしたアクアポリスの様な半潜水型浮遊式で、構造としての参考は海底油田の採掘基地の1種類であり、鋼鉄製の脚を持ち海面上にプラットフォームを持つ、固定式プラットフォーム。
 大陸を支えるこの鋼鉄の脚が、複雑な海流を作りだしている為、複雑な渦潮が常に大陸を囲んでいる。
 そして、モフリーナによってすでにこの脚部分の中までダンジョン化しており、地上の100基ある塔型ダンジョン、大陸全土の地上と地下に4層の地下空間の全てが超広大なダンジョンと変貌している。
 
 ダンジョンには、すでに無数の魔物が配置されている。
 魔物達は、カスタムやチューンによって、元となった魔物とは姿形が似ても似つかない物もいれば、RPGに登場する様な日本人にも馴染みのある魔物まで様々。
 では、代表的なベースとなった魔物達をご紹介しよう。
 皆大好きなスライム。こいつはいたる所に存在していて、ティアドロップ型の可愛いのから、アメーバーの様な半液状型まで様々であり、良く核を壊せば倒せる…とかいう設定は無い。物理攻撃ではまず倒すのは困難で、魔法が使えるのであれば対処できるかも? っていう位に強力な魔物として、大陸中をはいずり回っている。
 例外として、ダンジョン管理室などで働くスライムだけは、とても可愛い容姿と性格をしている。
 続いて、これもお馴染のゴブリン。集団戦を得意としており、各ゴブリンは武器を使う。また暗殺や狙撃や指揮に特化したゴブリンも存在している。もちろんスライム同様に管理室で働くゴブリンは可愛い。
 スケルトンは、骨の魔物。これも人型の骨から始まり、あらゆる魔物や動物の骨のスケルトンが存在する。
 クッ! 殺せ! で有名なオークは、豚の顔を持つ魔物。こいつも多種多様なバリエーションがあるが、女性を繁殖の為に狙う様な事は無い(ゴブリンも同様)。
 ホワイト・オルター号の中では、女性陣にもふもふされていたコボルトも、立派な体格を持ち格闘戦を得意とするウェアウルフから、小型の集団での狩りを行うコボルトまで、これまた様々。
 あと有名な所では、ケンタウロス、ミノタウロス、ハルピュイア、サイクプロス、オーガ、トロールなども取りそろえた。
 もちろんバジリスクやヒポグリフにグリフォンなどは当然として、とどめに最強のボスであるドラゴンなどの超強敵も取りそろえた。
 そして俺が最終兵器として投入した、それこそ総数を数える事などもはや不可能なほどに量産されたイノセント型の魔物は、もう大陸中のあらゆる場所に潜伏している。

 何の前情報も無くこの大陸に放り込まれたら、はっきり言って俺は生き残る自身は無い。間違いなく死ねる!

 そしてこれらの魔物達は、第9番ダンジョンの様な制約は無い。
 つまり侵入者を殺してはいけないという制約を取っ払った魔物達だ。
 だからと言って、敵を見つけたらすぐに殺す! という様な事は無い。
 まずは転移者達の動向を伺い、この世界に害を齎す者は排除し、このダンジョンを愉しむというかダンジョン攻略を真面目にしようとする者や、戦闘力の無い者に関しては、出来るだけ害を為さない様に命令されている。
 つまり、俺達に不都合な者だけを、全力で叩き潰すための魔物であって、この大陸自体が転移者の今後の人生が試される場となっているのである。

 俺は、決して善人じゃない。
 だから、敵になるか味方になるか…まずは、転移者達の動向を見定めるつもりだ。
 もしも、俺や家族、その他の大事な物を害しようという奴が転移して来たら、確実に倒す。いや、生かしてはおかない。
 この大陸で、転移者達がどう動くのか、どう生きるのか、その全てをしっかりと見定めさせてもらおう。

 それはそれとして。

「「「「「トール様…まだですか?」」」」」
 ベッドから聞こえる嫁~ずの声…5人揃ってって、最近多くないか?
 俺、生きて明日を迎えられるのだろうか…
「Someone please help me !」
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