上 下
220 / 1,457

地下都市完成!

しおりを挟む
 もの凄い音と振動は、少し離れたネリア街の東2番村にまで響き渡った。
 もちろん村の周囲の天幕や幕舎に居る難民の皆さんにも聞こえたわけで…え~つまりは見物人で囲まれてしまったというわけ。
 そんあ見物人の中には、あのクソ男爵領の街で見た兵達の隊長さんも居た。
 
 精霊建設による工事は順調で、ガンガン丘の下に向かって穴を掘り続けている。
 ちゃんと区画ごとに排気用の煙突が繋がり、地下都市と言えど綺麗な空気を吸うことが出来る様になっている。
 各家庭から出るゴミや排泄物は、さらに地下深くまで掘った竪穴の中に落ちて行く仕組みで、臭いは一際高い煙突で外へ流す事により、地下都市に影響が出ないように工夫されている。

 あ、各部屋に明かりが必要だな…地下なんだから、このままじゃ真っ暗だ…どうすべ?
 ん? 見慣れない精霊さんがふよふよと…いや、どっかで見た様な…あ! 鉱石の精霊さん、久しぶりだねぇ! 
 今日はどうしたのかな? ほう、光る鉱石を見つけたと? まさか、ウランとかじゃあるまいな? それだと危険だぞ。
 え、光の魔道具にも引けを取らない光量がある鉱石で、人体に影響なし? 熱も持たないのか…LEDみたいな感じかな?
 どこにあったの? え、この下…って、工事してるこの現場で発見したって事!? なんてご都合主義!
 どうやって使ったらいいの、それ? ほうほう、エネルギーを注げばいいと。エネルギー無くなるまで光り続けるから、眩しかったら布でも掛けとけと…なるほど、素晴らしい!
 では、鉱石の精霊さんは、その光る石を俺の元に集めて来てください。
 エネルギー注入を終えた鉱石は、各部屋と廊下にどんどん置いて行ってね。
 げっへっへ…俺の熱いエネルギーをお前に注入してやるぜ! そして地下を明るく照らしやがれ!
 うん、下品でごめん…でもこれで地下都市の生活の問題は解決…してなかった! 
 まだ水もいるじゃん! 何、水の精霊さん…水脈近くにあるから、捻じ曲げてこの丘の下に来るようにしてるって? すげえ!
 んじゃ、各家庭に水道設置してくれないかなぁ、土の精霊さん…あ、オッケーなのね…流石です、親方。

 丘の上で目を閉じ無言で両手を広げて突っ立ってる俺の真下で、ものすごい勢いで地下都市が出来上がって行く。
 周囲の人から見たら、何してるのか分からないだろうけどね。
 
 工事開始から2時間ほど過ぎた頃、精霊さんがいい汗かいたと言わんばかりの仕草で、俺の目の前にぽっかり開いた穴から出て来た。
 どうなったん? え、もう完成したの!? 取りあえず地下5階、1階層で200戸造ったって!?
 早すぎでしょう! 強度とか大丈夫なの? はあ、完璧っすか…了解です。
 確かに周囲には気が付くと煙突がニョキニョキと地面から空へと伸びて、何本も立ってた。

 さて、一応は確認が必要だけど…俺だけじゃ何だから、父さんとこの兵士さんと、難民を護衛してきてくれた男爵領の兵の隊長さん、あとは難民代表の…誰か名前はしらんけど、おっさんを引き連れ、中へと入ります。

 階段を降りると、四方に伸びる廊下があって、左右にずらっと扉が付いていた。
 目の前の扉を開けてみると、そこには土色をしているけど、完璧な間取りと設備のお部屋が。
 一緒に降りて来た面々も唖然としていました。
「し…子爵様…あのほんの少しの時間でコレを造り上げたのですか…?」
 うん、父さんとこの兵隊さんなら、俺の事を知っている人も多いからそんなに驚かないけど、俺の事を良く知らない難民代表と男爵領の兵の隊長さんだったら、びっくりするかもね。
「そうだよ。魔法で造った地下都市。換気や排気は完璧だし、そこに置いてある光る鉱石で地下でも明るいでしょう? 光を消す事は出来ないから、寝る時は布でも掛けてね。あと、台所にあるパイプの取っ手みたいなのを捻ると、綺麗なお水が出る様になってるからね。あ、トイレもちゃんとついてるからね」
 俺の説明を聞いて、一同さらに唖然。

「さあ、外はまだまだ夜は寒いんだから、順次この仮住まいへ移って。独身用に1部屋、カップルには2部屋、子供のいる家庭には、3部屋4部屋の住居って感じに造ってるんで、きちんと割り振りしてね。任せるんで。ちなみに家賃は要らない。当分、税金も免除。配給に関しても、領の備蓄用の食料庫を全部解放して支援しますから、安心してください」
 難民代表さん、いきなり涙を流しながら、俺の手を取って、
「有難うございます! 男爵様の領に居る時は、日々の生活にも困る者が溢れておりました…本当に何と感謝したらいいか…」
 男爵領兵だった隊長さんも、
「あ、あの時の子爵様の言葉を信じて良かった…ありがとうございます!」
 目に涙が薄っすら浮かんでた…ふふん、感謝しなさい! でも、何でも無料ってわけじゃないよ?
 俺は清廉潔白な聖人様じゃない。何でもかんでも無償で提供したり奉仕したりする訳じゃ無いぞ! 対価として、これからしっかり働いてもらうからな。
「いえいえ、落ち着いたら徐々に仕事をしていただければ結構です。我が領には仕事は幾らでもあります。後日、その辺りに詳しい者を派遣しますので、それまで身体を休めてください。全てはネス様の御心のままに…」
「ははーーーー!!」
 これで大幅な労働力アップと、敬虔なるネス教信者がまた増えたな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?

初老の妄想
ファンタジー
17歳で死んだ俺は、神と名乗るものから「なんでも願いを一つかなえてやる」そして「望む世界に行かせてやる」と言われた。 俺の願いはシンプルだった『現世の全てを入れたストレージをくれ』、タダそれだけだ。 神は喜んで(?)俺の願いをかなえてくれた。 希望した世界は魔法があるモンスターだらけの異世界だ。 そう、俺の夢は銃でモンスターを狩ることだったから。 俺の旅は始まったところだが、この異世界には希望通り魔法とモンスターが溢れていた。 予定通り、バンバン撃ちまくっている・・・ だが、俺の希望とは違って勇者もいるらしい、それに魔竜というやつも・・・ いつの間にか、おれは魔竜退治と言うものに取り込まれているようだ。 神にそんな事を頼んだ覚えは無いが、勇者は要らないと言っていなかった俺のミスだろう。 それでも、一緒に居るちっこい美少女や、美人エルフとの旅は楽しくなって来ていた。 この先も何が起こるかはわからないのだが、楽しくやれそうな気もしている。 なんと言っても、おれはこの世の全てを持って来たのだからな。 きっと、楽しくなるだろう。 ※異世界で物語が展開します。現世の常識は適用されません。 ※残酷なシーンが普通に出てきます。 ※魔法はありますが、主人公以外にスキル(?)は出てきません。 ※ステータス画面とLvも出てきません。 ※現代兵器なども妄想で書いていますのでスペックは想像です。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...