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あっちもこっちもカオス

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 燃えたよ…まっ白に…燃えつきた…まっ白な灰に。
『た、立て! 立つんだ! 大河さん!』
 あのミルシェちゃんの極寒の視線に晒されたまま、必死の土下座と婚約の申し出で何とか凍り付かなかったけど、その最中もメリル王女が俺にベッタリだったから、今度はミルシェちゃんの背後にオラオラオラオラ! っていう幻影が立ってるのが見えたよ……
 でもこれでミルシェちゃんも婚約者になったから、まあ少しは機嫌がなおって良かった…生きてるって素晴らしい!
 何とか家の中に入れてもらえた俺と父さんは、こっそり下着を変えました。

 着替えがすんで居間に戻ると、女性陣がわちゃわちゃしていた。
 父さんと廊下から中の様子を窺っていると、
「2人共、これからはお母さんと呼んでちょうだいね」
「では、これからはメリルと呼んでください、お義母様」
「私も……その……お義母さまと呼んでもよろしいのでしょうか?」
「お姉ちゃんが2人も出来た~!」
 母さん、メリル王女、ミルシェちゃん、コルネちゃん…なぜすでに打ち解けてんの、あんたら?
「我々は、若奥さまとお呼びすればよろしいのでしょうか?」
 あ、メイドさんも話の輪に加わってる。
「ミルシェは、今後はメイド業はやめて貴族家の嫁に相応しい礼儀作法を学ばなければね」
「はい、お義母さま。頑張ります!」「では、その役目は私が」「わーい! 私もやるー!」
 うん…ここに入って行く勇気が出ない。
「トール…散歩にでも行こうか」「そうだね…父さん」
 俺達は、音をたてない様にそっと居間から離れた。

 あれ? 今更ながら気付いたけど、あの輪の中にサラが居なかった様な?
『入ってませんよ? 私はちゃんと仕事をしてます』
 意外だ…やる時はやるんだな、ちょっと見直したよ。
『ふがふが……ああ、長旅で濃厚なチーズの様に凝縮されたトールヴァルド様の体臭が……ふがふが……』
 お前、何してんだ!!
『え、洗濯ですが。何か?』
 今、臭い嗅いでただろ!
『失礼な!』
 あ、違った?
『嗅覚だけでは物足りないので、味覚や触覚でも堪能している所です! パンツのこの塩味が……たまりません!』
 やめろー! 今すぐ行く! どこで洗濯してんだー!
『え? でも普段はミルシェが独り占めして堪能してるんですよ? たまにはいいじゃないですか!』
 ま、まさかミルシェちゃんまで…そ、そんな……
『裏切りは女のアクセサリーよ?』
 お前は峰不○子かよ! あ…ごめん、部分的にこのツッコミは無理だったわ。
『今、どこを想像しましたか!? 何が無理なんですか?』
 はっきり言ってもいいの?
『……』
 普通に洗濯してね。
『はい……』

 ▲

 あのカオスな(俺的には)家の中に居られないので、父さんと2人で散策に出た。
 しみじみ、良く発展したよな~この街。
 子供の頃は、見渡す限りな~んも無い場所だったのになあ。
 ほら、人もこんなに増えて…増えて…なんか、多くない?
「ご領主様! 若様が御婚約されたというのは本当ですか?」
「相手が王女様と言うのは本当ですか?」
「グラルさんとこのミルシェちゃんとも婚約したって聞いたぞ?」
「王女様とミルシェと同棲するって本当ですか?」
「うらやましいっす!」「もげろ!」「爆ぜろ!」「禿げろ!」
 うおーい! なんか街中までカオスになってんぞ!
 あと、誰だ最後の3人は! 禿げろはヤメロ!
「え…と、みんな誰に聞いたの?」
 一応、話の出所を確認しなきゃね。
「へえ、戦争から帰ってきた兵士が口々に言ってやすが」
 あ!口止めしてなかった!
 教えてくれたおじさん含め、周囲の人に口止めしとこう。
「出来れば、あんまり広めたくないんだけど…」
 もう、ここだけの話って事で何とかしたいなあ。
「ええ、あっしらはいいんでやすが…兵士はそれぞれの家のある村や街にもう帰って行きやしたんで、そっちでも広まるんじゃねえかと」
 がびーーーん!すでに手遅れ!
 もう、恥ずかしくてこの街には二度と来れない…うっうっう…

『明日のために、今日の屈辱に耐えるんだ! それが男だ!』
 お前は、宇宙の戦艦の艦長さんかよ。
 だが、サラの言う通りだな…内容は何か微妙に違う気もするけど…
 落ち込む事もあるけれど、私、この街が好きです!
『それは、宅急便をやっている魔女っ子だから許されるセリフです』
 ああ、うん。俺もそう思った……
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