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養分にしてやる!

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 さあ、作戦決行の朝が来た。
 希望の朝だ! 喜びに胸を……てこれはもうやった。
 
 家を出発する時と違って、今日は静かに作戦を再確認中。
 もうワイバーンの縄張りのすぐ傍だからな。

 作戦内容は、いたってシンプル。
 皆はワイバーンから身を隠せる木陰で待機。
 そんで俺が魔法でワイバーンを先制攻撃する。
 地面に叩き落としたら、全員で袋叩きにする。
 最後に巣に残った卵を回収。
 何でも卵は人工ふ化させると騎乗できる飛龍となるので、国に高く買い上げてもらえるらしい。
 
 1個貰ってもいいかな……俺も飛龍に乗りたい……。
 え? 育成と調教がかなり難しい?
 専門家がやってるの?
 そっか……無理か……仕方ない。
 ああ契約魔法なら……とか言ってるけど、そんな俺の嘘を真に受けないで。
 伝説級の魔法なんて使えないから!
 いいよ、どうしても欲しくなったら創るから。

 さあ作戦確認も終わったので、ワイバーンの縄張りにいよいよ突入だ!
 精霊さんもすでにスタンバイOK!
 さって、まずは変身しましょう!
「メタルガード……へ・ん・し・ん……トゥ!」
 メタリックな全身鎧の装着完了!
 おう! ギルドマスターと冒険者がめっちゃざわついてる!
 そっか……あんたら初めて見るんだったね。
「と、トールヴァルド様……それも魔法ですか?」
 ギルドマスターは、こんな時でも皆の代表ってか?
「そう! メタルガードって名前の魔法鎧です」
「メタルガード……すごい……」
 皆にめっちゃ見られた。  
「そして……ブレンダー、バトルモード!」
 ぐぐぐぐぐぐと大きく厳つい水晶の角や刃を生やした姿にブレンダーも変形!
「お、お、おお!」
 ブレンダーの姿に驚いてる驚いてる!
 皆の視線がブレンダーに向いてる間に、よっこらしょっと。
 ヴェスピナエ・ファクトリーを背負います……間抜けだなこの絵面。
 ファクトリーの上には、クイーンがちょこんと乗っかる。
 変身すれば、筋力強化でこの大きな背負子も全然苦にならない。
「トールヴァルド、何か間抜けだぞ……その恰好」
 言うな父さん! 知ってるし分ってるよ! でも仕方ないんだよ!
「その背負ってるのって何だ? ずっと気になってたんだが」
 あ、中身は見せてなかったっけ。
「これは、クイーンの兵隊が詰まってるの。簡単に言えばでっかい蜂の巣。突っついたりしたらダメだよ」
 まあ、よっぽどじゃないと攻撃しないけどね。
 へ~とかほ~とか言いながら、ファクトリーをいろんな角度から見てるけど、父さん兵隊は見えないよ?
「そんな事より出発しよう! さっさと終わらせて帰りたい!」
「そうだな……皆、準備はいいか? では出発だ」
 俺たちは飛龍討伐に燃えながらも、静かに野営地を後にした。

 ▲

 ワイバーンの巣を目視できる所まで来たんだが……やっぱデカいなワイバーン。
 クイーン、ちょっと偵察を出してくれ。数と位置の確認だ。
 ファクトリーから、でっかいスズメバチが飛び立った。
 ワイバーン……やっぱプテラノドンだよな? 飛龍っていうより翼竜。
 あの羽に穴を開けたら、飛べなくなるんじゃね?
 う~ん……ファンタジーっぽく、魔法で飛んでるのかもしれないけどなあ……。
 お、斥候蜂が帰ってきた。
 ふむふむ……クイーンからの報告だと14匹もいるのか。
「父さん、蜂が見て来てくれた。ワイバーンは全部で14匹だって」
「ふむ……便利だなその蜂。だが14匹か。トールヴァルド、いけるのか?」
 いけるってのは、地面に落とせるのかって事だよな?
「うん、任せて! それぐらいの数なら、僕とクイーンで叩き落とすよ。ワイバーンにヴェスピナエの怖さを教えてやる……ふっふっふっふ」
 あれ? 父さんも皆もちょっと引いてる……おかしいなあ、不敵に笑ったつもりなのに。

 まあいいや、僕のビ〇ト……じゃないヴェスピナエの初出動だ!
 さあファクトリー内の皆さん、起きてください!
 お仕事のお時間ですよ!
 背中のファクトリーが途端にざわつく。
 ブーンブーンと羽音がし出すと、冒険者の皆もびくびくし出した。
 怖がんなって、敵はワイバーンなんだから。

 俺は木陰からブレンダーと精霊さんを引き連れてワイバーンの巣に向かって歩き始めた。
 ワイバーンの巣のある山肌は岩場になっていて、森とは違って拓けた地形。
 ここなら好き勝手に暴れても大丈夫だろう。
 さあクイーン、全員出動だ!
 背負ったファクトリーから、次々と飛び立つ兵隊蜂。
 総勢200匹が俺を取り囲みワイバーンの巣を睨み付けた。
 ワイバーンも、森から出てきたメタリックに光る俺と青い大きなブレンダーをガン見して威嚇を始めた。
 ふん! そんなもん怖くねーよ。
 お前達には、領の未来と税収と皆の懐のための養分にしてやる!
 
 精霊さん、クイーン、ブレンダーを順に見回す。
 みんな、いっくぞー! 狩りの時間だー!
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