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魔法の入門書

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 その夜、家族で食事をしている最中に父さんに詰め寄った。
「お父さん、魔法の本はどこ!? あの本は表紙だけで中身は別の本だったよ?」
 ブフォ! ガフッ! 父さん盛大に噴き出した。
「お……おま……あれ見たのか!」
「あらトールちゃん、何の話?」
 父さんが慌て、母さんが話に喰いついた。
「実は父さんの部屋にあるまほ……ングッ」
 食卓を回り込んだ父さんに口を塞がれた!
「ま……魔法の本な、あれな~後で貸してやるからな~」
「フガンガガ?」
「あなた? トールちゃんの口から手をはなして。トールちゃん何の話か説明なさい」
 父さんをチラッと見ると、目で言うなと訴えている。
 ふふん! 精神年齢42+5歳の俺にはわかるぜ!

 ファンタジーの世界だけでなく、地球だって中世では本はかなり良いお値段。
 特にこんな片田舎で、本なんて高級品を手に入れるのは、かなり難しいはず。
 だって行商人しか来ないんだぜ、あんな買い手が限定される物を行商するわけない。
 そもそも、官能小説ったって好みがある。
 兄×妹物、姉×弟物、母×息子物、父×娘物、人妻寝取り、ダブル不倫、レイプ系、いちゃらぶ系……etc
 その上、日本だって一大勢力を築き上げたBL物もある。
 あの本は巨乳人妻寝取り系だった……趣味が合うな父さん……。

「お母さん、実は魔法の本が見たくって探したけど見つからなくって」
 父さん武士の情けだ。あとであの本もう一度じっくり読ませてね。
「中身とか表紙とか言ってなかった?」
「ん~~? そんなこと言ったっけ?」
「あら……私の聞き間違いかしら……まあいいわ。あなたトールちゃんに魔法の本貸してあげてね」
 微妙に疑ってはいるが、母さんは誤魔化せた感じだ。
 マイ エンジェル コルネちゃんがグズり始めたから有耶無耶になったともいう。
 父さんに目でシグナルを送っておいた。
 貸し一つだぜ。
「ああ、もちろんだ。トールは魔法が使いたいんだな! わかったまかせとけ! ハッハッハッハ!」
 ワザとらしすぎだよ、父さん。

 父さんの部屋で魔法の本(中身だけ)と、グーダイド王国史という本を借りた。
「お父さん中身だけって……お母さんにばれるよ?」
「うっ……」
「今回は黙ってるけど、そのうち気付かれちゃうからね」
 女の勘ってのは馬鹿に出来ないのだよ、覚えておきなさい父さん。
「わかった……取りあえず表紙をくっ付けておこう……」
 なぜか父さんは、渋々魔法の本の表紙を中身と合体させた。 
 そんなにその表紙が気に入ってたのか?
 俺は本が手に入ればいいんだが…重要な事なんで、一言だけ言っておこう。
「その本も後で貸してね、エヘッ」
 上目遣いで可愛くおねだりしてみた。
「お前にはまだ早い!」
 まあ、まだ5歳だからね。
 年齢相応の肉体だから性欲もないんだけどさ。
 きっとそのうち抑えきれないリビドーが爆発するはずだから、その前に貸してくれればいいよ。
 ちゃんと隠れて自爆するからさ。
 はっ! まさか父さんも自爆してるのか?
 まさか将来同じネタで……自爆父子……何か虚しい。

 ▲

 我が家の部屋割りは、父さん、母さんと妹、俺で3部屋に分かれている。
 母さんが妹を妊娠するまでは、俺と母さんが一緒だった。
 通い妻だったんだな……母さん。
 まあ年齢相応に暗くなると眠くなるから、俺が寝入った頃に父さんの部屋に行ってたんだろう。
 朝はいつも俺より早いから、まあ気付かなかったわけだ。
 両親の情事なんて見たくもないし、別にいいんだが。
 そんなわけで俺の部屋を貰ったんで、早速読書タイムだ。
 賢者タイムじゃないから、そこんとこ間違えないように。

 まずは魔法の入門書っと……ふむふむ……なるほど誰でも魔法は使えるっと。
 適正はある程度以上の魔法の行使に影響するって事か。
 初級魔法なら練習次第で誰にでも使えるってのはいいな。
 魔法の行使には魔素が必要とな?魔力じゃないのか……。
 ほうほう、魔素とはこの世界に満ちていて、基本的に何処にでもあるのか。
 大気の組成の一部と解釈していいのかな?
 魔素の濃い場所では、同じ魔法でも威力が上がるのか。
 なかなか興味深いな魔法。
 やり方次第で色々と応用が出来そうで、探求心がうずうずしてくる。
 やっぱファンタジーは、こうでなくっちゃな。
 そりゃ、ファンタジー小説の主人公が魔法鍛えて無双したくもなるのも分かるぜ。
 
 ふむふむ……ほうほう……おぉー! なるほど……ふむ……。
 こうして部屋にある蝋燭が尽きるまで読書を続けた。

「トールちゃん、早く寝なさい! 蝋燭も高いのよ! 本は昼間に読みなさい!」 
 
 夜更かししてたら、母さんにめっちゃ怒られた。
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