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5 侵入

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 悴む両手を擦り合わせて、俺はゆっくりと鍵を回した。なるべく音を立てないよう、ゆっくりとドアを開ける。閉める時も慎重に。足音を忍ばせて階段を上り、二階の部屋のドアを開く。オレンジの豆球だけがついた薄暗い部屋だ。暖かな毛布と羽毛布団に包まり、和泉が眠っていた。
 
 この家に来るのは初めてだ。外からは幾度も見てきたが。もちろん和泉の部屋に入るのも初めてだ。案外物が少なく、整頓されている。学習机の上も片付いている。教科書とノートが本棚に収まっている。しかしそんなことはどうでもいい。
 
 俺はすぐさま、和泉の両手を頭の上で縛った。さらにベッドに縛り付けて固定する。これで動けまい。次は目隠しだ。幅の広いアイマスクを二重で着けて視界を奪う。まだ起きる気配はない。ベッドに潜り込み、パジャマを脱がす。何の変哲もない普通のパジャマを着ている。ボタンを一個ずつ外して脱がし、インナーをたくし上げて無防備な胸を曝け出す。
 
 女の子の胸とは違うが、これはこれで男らしく筋肉がついていて、柔らかくはないがそれなりに膨らみもあって、何より乳首が勃っている。寒さのせいなのだろうが、固い乳首は弄り甲斐がある。乳首を捏ね回しながら、無防備な唇を奪った。普段はあまりしないが、和泉の唇は滑らかで、舌も分厚くて、触れていると旨い。
 
「ふぁ……ん……」
 
 和泉がようやく反応を示した。薄く開いた口の端から、とろりと唾液が伝う。かと思うと、自ら舌を出して俺の唇に吸い付いた。驚いて体が動かない。そうしている間にも、和泉のしなやかな舌は口内に侵入し、優しく俺の舌を舐め取る。鼻を鳴らして舌を絡める。
 
「んん……ふ、ん……」
 
 唇を離した後も、名残惜しそうに舌先を覗かせる。
 
「くち……もっと……」
 
 寝惚けているのか、幼い口調でねだる。俺はもうどうしたらいいかわからなくなって、ぎゅっと乳首を抓った。びく、と和泉は胸を反らす。
 
「やっ……」
 
 咄嗟にごめんと言いかけて、続く和泉の一言で現実に引き戻される。
 
「じ、仁くん、怒ってる……?」
「……」
 
 ああ、何だ。そういうことか。俺は一気に脱力した。何も驚くことはなかった。単なる勘違いだ。そりゃあそうか。天地が引っくり返ったって、こんなことがあるはずがない。和泉は、沢井先生が好きなのだから。
 
「じ、仁く――」
 
 俺は無遠慮に舌を突っ込み、温かな口腔内を蹂躙した。両方の乳首を摘まんで引っ張って爪で引っ掻いた。それだけで、和泉は腰を震わせる。
 
「んっ……い、いたい、仁くん……」
 
 俺の舌にしゃぶり付きながら、知らない男の名前を呼びやがって。いや、わかっている。全部わかっている。なのに無性に腹が立つ。
 
「ぁ、やだ、なにこれ……と、取ってよ……」
 
 手首を戒める縄とアイマスクに気が付いたのか、和泉は嫌がって身を捩る。しかしその仕草ときたらまるでむずかる子供のようで、本気の迫力は感じられない。
 
「仁くん……? なんで、何も言ってくれないの……?」
 
 何も言えるわけがない。俺は布団に潜って、和泉のズボンと下着を下ろした。和泉は恥ずかしそうにもじもじと膝をすり合わせる。今まで何をしても頑なに勃たなかった陰茎が、キスと胸への愛撫だけで腹に届くほど反り立っていた。
 
「ね、ねぇ、なんか言ってよ……仁くん……」
 
 こんなに切なげな声も仕草も、俺はいまだかつて見たことがない。洗い立ての石鹸の匂いがするそれを躊躇なく口に含むと、和泉の腰が大きく跳ねる。
 
「あっ!? やっ、や、だめっ、あ、だめぇっ」
 
 聞いたことのない、上擦った声で喘ぐ。口でされるのが好きなのか、容易く上り詰めた。射精するところを、初めて目の当たりにする。口の中いっぱいに和泉の味が広がる。正直不味い。吐き出して、潤滑剤代わりとする。和泉は息を弾ませて、何やら不安そうに呟いている。
 
「仁く……ねぇ、これ、取って……見えないの怖い……ねぇ、仁くん……」
 
 しかしはしたなく脚を開かせてアナルに精液を塗り込んでいくと、まともに喋る余裕はなくなる。くぐもった嬌声を漏らしながら、その合間にどうにか言葉を発する。
 
「やだ……ね、とって……んっ、ぁ、そこ……ぁ、いい、きもちいい、じんくん……」
 
 そこ、と示されたシコリを念入りに刺激する。和泉は背中を弓なりに仰け反らす。精を吐き出したばかりの陰茎が再び頭をもたげる。熱い腸壁がきつく締まり、ヒクヒクと痙攣を始める。和泉は媚びるような甘ったるい声で喘ぐ。
 
「やだ、やだぁ、そこばっか、や……あぁも、やっ、これとって、とってよぉ……ぁ、あ、きもち、やだ、こわいっ……、とって、とってぇ、やだぁっ……」
 
 何がそんなに気持ちいいのかわからないが、ともかくこのシコリを責め続ければイクのだろう。既にずっぽり埋まっていた三本の指を器用に使い、そこを挟んだり擦ったりして責め続けた。じきに和泉の嬌声が一段階高くなる。自ら股を開いて、いいところへ導くようにいやらしく腰をくねらせる。
 
「やだ、も、だめ、だめぇ……ひっ……く……いくっ、いくぅっっ……!!」
 
 ぎゅう、とアナルが収縮した。激しく痙攣して俺の指を食い締める。同時に、勢いのない射精をした。ペニスの先端から、とろとろと精液が溢れ出る。和泉は崩れた呼吸を整えようとするが、俺は休ませることなく再度シコリを責めた。ひぃっ、と悲鳴を上げ、和泉は頭を振って悶える。
 
「ぁあ゛っ! あ、あっ、やだ、やぁっ……! じっ、じんくん、やだっ、や……っ!」
 
 じたばた暴れる両足を押さえ込み、ついでに前をしゃぶってやる。腰が限界まで反り返り、ガクンガクンと激しく波打つ。ベッドもヘッドボードもギシギシ軋む。縄が手首にギチギチ食い込み、引き千切れそうだ。和泉は半分泣きじゃくるような声で喘ぐ。
 
「ひっ、ぐ、やだ、やだっ、もぉ、や……っ、ぁいく、いぐっ、またいっちゃうっ、やらぁ、こわいっ、やら、ゃ――んぅぅ゛っっ!!」
 
 アナルが収縮し、痙攣する。蕩けた腸壁がうねり、襞がねっとり絡み付く。前からは少量の精液が漏れる。ひ、ひ、と喉を引き攣らせ、和泉は鼻を啜る。
 
「も、やら、なんれ、こんな……っ、まだ、ぁ、おこ、てるの……? くりすます、あえなか、たの、ぉ、おこってる……?」
 
 クリスマスか。そういえばホテルに泊まってヤリまくった。こいつは何も言わなかったが、本当は沢井と過ごす予定だったのか。
 
「っ……ごめ、おれ、ごめん、なさ……おれ、すきだよ、じんくんだけ、っ……すき、なのに、ごめん、ごめ……っ、かお、みたい……ぎゅってして、きすして……やさしく、してよ、いつもみたいに……」
 
 あの和泉でも、こんな風に弱ってしまうことがあるのか。ろくに呂律も回らず、舌足らずな幼い口調で、子供みたいに泣きじゃくって。沢井先生の前だからか。あの人の前では、こいつも素直に泣いたり笑ったり甘えたりするのか。……なんて、今更しみじみ考えなくても知っていた。俺だってずっとこいつのことを見てきたのだから。
 
「じん、くん……」
 
 ふと、顔を上げる。目が合った。アイマスクの陰に、和泉の絶望したような瞳が揺れた。
 
「……あーあ。バレちまったか」
「て、めっ……な、んで……」
「なんでもクソもねぇよ。夜這いってやつだ」
 
 うっとり上気していた頬からみるみる血の気が引く。死人みたいに蒼褪めて、和泉は力いっぱい蹴りを繰り出した。しかし大した勢いはなく、あっさりと俺に受け止められる。逃れようとして足をバタつかせるが、弱々しくて話にならない。
 
「くそっ、放せよ!」
「放すもんかよ。せっかくイかせてやったんだから、今度は俺をよくしてくれよなァ」
 
 勃起した陰茎を取り出し、すっかり出来上がったいやらしい裂け目に宛がう。亀頭を触れただけで射精しそうになる。和泉が暴れるので、ヘッドボードがギシギシうるさい。
 
「い、いやだっ、いやっ、やめろよっ!」
「俺の手マンで三回もイッたくせに、今更嫌がんなよ。ほんとは待ってたんだろ? 俺のチンポ、欲しかったんだろ?」
「ちがうっ! くそ、やめろっ……!」
「口では嫌がっててもよォ、お前のここはそうじゃねぇみたいだぜ? トロットロに濡れて、ヒクヒク動いてんの、自分でもわかんだろ? ほら、俺のチンポうまそうに食って、どんどん奥まで呑み込んでくじゃねぇかよ……」
 
 軽く押し込むだけで、吸い込まれるように簡単に埋まってしまう。ぬかるんだ凸凹が物欲しげに吸い付く。和泉はいやいやと首を振り、身を捩って腰を逃がそうとする。
 
「なァ、素直になれよ。チンポ、気持ちいいだろ? いいって言えよ」
「ぅ……く……いやだ……っ!」
「何が嫌なんだよ。ビショビショに濡らしてるくせに」
「てめぇなんかのためじゃねぇっ! おれは……おれは、ただ、あの人が……」
 
 まだそれを言うのか。俺は猛烈に腹が立って、ほとんど反射的に和泉の首に手をかけた。体重をかけて首を絞めながら腰を打ち付ける。
 
「クソッ、クソッ、俺だってこんな……ッ! クソがッ、なんでなんだよッ……! なんで俺はッ、てめぇはッ、なんで……ッ!」
 
 和泉のアイマスクをずらして前髪を押し上げる。窒息寸前という具合に真っ赤に鬱血した、心底苦しそうに歪んだ顔が覗く。瞼は赤く腫れ、さっきまでとは違う種類の涙で瞳がじっとり潤んでいる。その、涙の膜が張った艶のある瞳と視線が絡み合い、瞬間、抑え切れない射精感が込み上げた。
 
「う゛ッッ……!!」
 
 ぐずぐずの蜜壺に、ありったけの精液を流し込んだ。その拍子に和泉の首から手が離れる。途端、和泉は大きく口を開けて喉を開き、肺を大きく膨らませた。と同時に激しく咽ぶ。体をくの字に折り曲げて悶え、ゲホゲホと苦しげに咳き込みつつ、ゼエゼエ喉を鳴らして酸素を取り込む。
 
 息も絶え絶えの和泉を尻目に、俺は再び腰を動かした。突きやすいように、股を無理やり押し広げる。グチュン、グチュン、と卑猥な音が接合部から漏れる。和泉はなおも抵抗しようとするが、咳と酸欠でそれどころではない。
 
「くそっ……くっ……もう、いやだっ……いやっ……」
「嫌なら、何だよ」
「もう、やめるっ、こんなの……っ、もう、やめてやる……!」
「動画拡散してもいいんだな?」
「っ……」
 
 俺が脅すと、和泉は唇を噛みしめる。
 
「……あと、何回したら……終わるんだ……」
「何回って?」
「セックスだ! あと何回、こんな思いをしたら……もう、こんな……あと、何回……」
「あぁ、それ……」
 
 一旦律動を止める。倒れた目覚まし時計が秒針を刻む。
 
「一生終わらねぇよ」
「……は……?」
 
 和泉が瞬く。律動を再開する。
 
「お前は一生、俺の奴隷なんだよ。気づかなかったのか? ヤればヤるほど、お前は自分の首を絞めてたんだぜ」
「……どういう、意味……」
「ハメ撮りだよ。お前に内緒で、いつもこっそりカメラ回してたんだぜ。気づかねぇとは、マジもんの間抜けだな! 画質はよくねぇが顔の見分けはつくし、結構抜けるぜ。今度鑑賞会でもすっか」
「っ……てめぇ……」
 
 和泉は愕然として息を呑む。潤んだ目で俺を睨み、噛み付くように叫んだ。
 
「こンの、下衆野郎が! ぶっ殺してやる!」
「おーこわ。俺を殺したら即ネットにばら撒かれるんだぜ? もちろん沢井にも送り付けてやらぁ。俺とてめぇのハメ撮り動画、仁くんにも見てもらいてぇよなァ?」
 
 上から押し潰すように腰を突き入れる。和泉は苦しそうに呻き、殺してやると何度も喚いた。汗と涙に水分を奪われたのか和泉の中はすっかり乾いてしまって、いくらピストンしても今一つ刺激が足りず、惰性で射精して終わった。
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