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第六章 かげろう
第六章②
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肇の処女を力ずくで奪った男は、すぐさま暇を出された。肇は一週間ほど寝込んだ。高熱にうなされ、悪夢に度々目を覚ましたが、そばに誰かが寄り添ってくれたことは一度たりともなかった。
しかし、真の悪夢はここから始まる。伯父――肇を引き取った養父が、肇の体に目を付けたのだ。
「確かに、妾の子は妾。案外役に立つかもしれんな」
喉奥に吐き出された精液をやっとの思いで飲み込んだ肇を、父は優しく撫でた。
「初めから大人しく従っていれば、こんな傷は付かずに済んだものを」
肇の口元から鮮血が滴る。口での奉仕を強要され、あまりの抵抗感に暴れて拒絶すると、刃物で口の端を切り裂かれた。手当てもしないままの生々しい傷口に、生温かい白濁が飛び散っている。
「お前の母はとんでもないアバズレだったが、美しさだけは大したものだった。さすがは芸者の娘だよ。お前もその血を色濃く受け継いだらしい」
父の手が――いや、これを父とはもう思えない。男の武骨な手が、肇の柔い肌を撫でる。またあの痛いことをされるのだ、と肇は恐怖に竦んだ。
「怖がらなくてもいい。いい子にしていればすぐに終わる」
約束が守られた試しはない。苦痛に耐えて大人しくしていようが、苦痛に耐えきれず泣き叫ぼうが、男は欲望の果てるまで肇の躰を貪り尽くした。
元々仕事で家を空けることの多い父だったが、帰ってくる度に必ず肇を呼び寄せた。逆に言えば、父が肇と対面するのはその時だけであった。
酷い時には、二人の兄が羽根突きをして遊んでいる声を聞きながら、犯されたことだってある。
「ふっ、ん゛っ、んぅ゛ぅっ……」
「お前みたいな半端者を、この私がこうして役立ててやっているんだ。ありがたいことじゃないか。もう少し嬉しそうにしたらどうだ」
障子紙の向こうの、長い長い縁側の向こう。雪の積もった中庭で、肇とさほど年の変わらない兄弟が、無邪気に遊んでいる。翻って、肇は薄暗い部屋の湿っぽい布団の上、醜い肉欲に身を焦がしている。
なんと卑しい躰だろう。自分だけ、一足も二足も早く大人になってしまった。もう二度と、純粋だった少年の頃には戻れない。
肇は枕を抱きしめて額を擦り付けた。何かに縋っていなくては、涙に溺れてしまいそうだった。
ふと見ると、障子の隙間に二つの目が覗いていた。遊びに飽きた兄達が、父の様子を窺いに来たのだろうか。父はそれとは気付かずに、肇の首筋に舌を這わせる。ナメクジの這う方がまだマシな感触に、肇はぎゅっと目を瞑った。
「どうした? そんなに締めて。気持ちいいか、好き者めが。ここがいいんだろう。たくさん突いてやろう」
「っく、ん゛、ん゛ぅ……っ」
この時に覗き見られたのが原因だったか、はたまたもっと前からバレていたのかは不明だが、肇が父と関係を持っていることは、二人の兄の知るところとなった。それが新たな地獄の始まりであった。
「父さんとしてたみたいに、オレ達とも遊んでくれよ」
彼らは必ず父の不在時を狙って肇を呼び寄せた。普段は、まるで穢れを避けるかのように、徹底的に肇を遠ざけるくせに、こんな時だけ肇を求める。いや、求められているのは躰だけだ。肇にもよく分かっていた。
「お前なんか、所詮妾の子なんだからな。こんなことでしか役に立たねぇんだよ」
「所詮はただの消耗品だ。壊れたら買い替えりゃ済むんだからな。安いもんだ」
「感謝しろよ? せっかくの穴を有効活用してやってんだから」
「なぁ~、早くそっち貸してくれよ」
「お前は口に挿れときゃいいだろ」
「やっぱナカに出してぇもん。早く代われって」
二人分の、しかも、思春期を迎えて間もない血気盛んな青年の漲る欲望を受け止めるのは、年少の肇にとっては耐えがたい苦痛だった。ありったけの欲望をぶつけられても、到底受け止め切れるものではない。体も心も壊れてしまう。
「も、ゆるして……おなか、くるしくて……」
「あ~? なに弱音吐いてんだよ」
「まぁ、上も下も結構飲ませたからな。ほら、腹パンパン。妊娠してんじゃねぇの?」
青年は嗤いながら、肇の下腹を圧迫する。たっぷりと吐き出された白濁がとぷりと溢れ出て、肇の内腿を濡らす。肇は屈辱に頬を濡らす。
「見ろよこれ! お漏らしして泣いてるぜ、こいつ」
「漏らした分、腹も空いただろ。もう二発ずつ飲んでもらうからな」
「やっ、いやっ、もうむり……っ」
「な~にが、いやっ、だよ。お前のここは、ちんぽ欲しがって泣いてるみたいだけど?」
「ぅっ、んん゛……やだぁっ……」
ローションや精液、他にも色々の体液が混ざり合い、肇の蕾は難なく男を呑み込んでしまう。肇の本心とは裏腹に、快楽を教え込まれた躰は自然と快楽を拾い上げる。
「やだっ、ぁ゛、いやっ、いやぁ、ゆるして……」
「善がってんじゃねぇよ。こっちも咥えろ」
男が屹立を肇の唇に押し当てる。肇はぎゅっと口を結び、いやいやとかぶりを振った。
「なに抵抗してんの? そんなことできる立場かよ、お前。お情けでウチに置いてもらってるだけの半端モンが」
「……」
「あっそう。そういう態度なわけ。だったらその口切り裂いてやるよ」
男は引き出しからカッターを取り出し、肇の顎を掴み上げる。
「穴しか利用価値のないダッチワイフのくせに。生意気なんだよ」
「……っ」
「また泣くか? 女みたいに」
閃く刃が、口元の傷痕に突き付けられる。元は父に付けられた傷だが、その後も何度か切り裂かれている。そのせいか治りが悪く、おそらく一生残るだろう。
「ほら~、兄ちゃん怒らせんなって。お前も痛いの嫌だろ? 大人しく言うこと聞いとけよ」
「……っ……」
大した年の差ではないとはいえ、子供にとってのそれは絶望的なほど大きな壁だ。カッターなど持ち出さなくとも、彼らは拳で簡単に肇を黙らせることができる。そうしないのは、父の所有物に傷を付けたくないからだ。だからこうして卑怯な手を使う。
肇は震えながらゆっくりと口を開いた。男は卑しい笑みを浮かべて、肇の頭を押さえ付けた。
父の不在時に加え、二人の兄も肇に興味を示さない夜は、同じ部屋で寝起きする使用人達に犯された。古くから働いている者の中には、肇の母に懸想していたような輩もおり、彼女を重ねて肇を犯した。
「ああ、この艶肌……堪らんなぁ。あのお方を思い出す」
「そんなに美しかったのかい。肇坊ちゃんのお母上というのは」
「そりゃあもう、綺麗なんてもんじゃなかったさ。一度抱いてみたかったが、高嶺の花ってやつだよ」
「妾の子とはいえ、お嬢様だろう? 無理に決まってる」
「ああ。しかし、肇坊ちゃんがここにこうして堕ちてきてくれた。ありがたいこった。お母上と違って扱いやすいしな」
ろくに洗ってもいないような垢だらけの性器を、男は肇の小さな口にねじ込む。思わず戻しそうになるのを、肇は必死に堪える。息を止めれば、どうにか耐えられないほどでもない。いや、やはり無理かもしれない。
「だが、あの気位の高さが魅力だったんだ。オレ達のことなんて歯牙にもかけない、高飛車なところが」
「だから、いくら見た目が似ていたって、肇坊ちゃんは偽物なのさ。あの方とは似ても似つかない」
男達の脂っぽく汗ばんだ手が、肇の躰をベタベタと撫で回した。
使用人達は、余程のことがない限り暴力という手段を使わない。肇が大声を上げて騒ごうものなら、潔く引き下がる。へこへこと媚びへつらい、へりくだった態度を取る。仮にも、肇は橘の坊ちゃんなのだ。
そのことが、肇は余計に辛かった。惨めだった。汚らしい男共にいいように弄ばれる程度の価値しか自分にはないという事実を、まざまざと思い知らされるようだった。
しかし、真の悪夢はここから始まる。伯父――肇を引き取った養父が、肇の体に目を付けたのだ。
「確かに、妾の子は妾。案外役に立つかもしれんな」
喉奥に吐き出された精液をやっとの思いで飲み込んだ肇を、父は優しく撫でた。
「初めから大人しく従っていれば、こんな傷は付かずに済んだものを」
肇の口元から鮮血が滴る。口での奉仕を強要され、あまりの抵抗感に暴れて拒絶すると、刃物で口の端を切り裂かれた。手当てもしないままの生々しい傷口に、生温かい白濁が飛び散っている。
「お前の母はとんでもないアバズレだったが、美しさだけは大したものだった。さすがは芸者の娘だよ。お前もその血を色濃く受け継いだらしい」
父の手が――いや、これを父とはもう思えない。男の武骨な手が、肇の柔い肌を撫でる。またあの痛いことをされるのだ、と肇は恐怖に竦んだ。
「怖がらなくてもいい。いい子にしていればすぐに終わる」
約束が守られた試しはない。苦痛に耐えて大人しくしていようが、苦痛に耐えきれず泣き叫ぼうが、男は欲望の果てるまで肇の躰を貪り尽くした。
元々仕事で家を空けることの多い父だったが、帰ってくる度に必ず肇を呼び寄せた。逆に言えば、父が肇と対面するのはその時だけであった。
酷い時には、二人の兄が羽根突きをして遊んでいる声を聞きながら、犯されたことだってある。
「ふっ、ん゛っ、んぅ゛ぅっ……」
「お前みたいな半端者を、この私がこうして役立ててやっているんだ。ありがたいことじゃないか。もう少し嬉しそうにしたらどうだ」
障子紙の向こうの、長い長い縁側の向こう。雪の積もった中庭で、肇とさほど年の変わらない兄弟が、無邪気に遊んでいる。翻って、肇は薄暗い部屋の湿っぽい布団の上、醜い肉欲に身を焦がしている。
なんと卑しい躰だろう。自分だけ、一足も二足も早く大人になってしまった。もう二度と、純粋だった少年の頃には戻れない。
肇は枕を抱きしめて額を擦り付けた。何かに縋っていなくては、涙に溺れてしまいそうだった。
ふと見ると、障子の隙間に二つの目が覗いていた。遊びに飽きた兄達が、父の様子を窺いに来たのだろうか。父はそれとは気付かずに、肇の首筋に舌を這わせる。ナメクジの這う方がまだマシな感触に、肇はぎゅっと目を瞑った。
「どうした? そんなに締めて。気持ちいいか、好き者めが。ここがいいんだろう。たくさん突いてやろう」
「っく、ん゛、ん゛ぅ……っ」
この時に覗き見られたのが原因だったか、はたまたもっと前からバレていたのかは不明だが、肇が父と関係を持っていることは、二人の兄の知るところとなった。それが新たな地獄の始まりであった。
「父さんとしてたみたいに、オレ達とも遊んでくれよ」
彼らは必ず父の不在時を狙って肇を呼び寄せた。普段は、まるで穢れを避けるかのように、徹底的に肇を遠ざけるくせに、こんな時だけ肇を求める。いや、求められているのは躰だけだ。肇にもよく分かっていた。
「お前なんか、所詮妾の子なんだからな。こんなことでしか役に立たねぇんだよ」
「所詮はただの消耗品だ。壊れたら買い替えりゃ済むんだからな。安いもんだ」
「感謝しろよ? せっかくの穴を有効活用してやってんだから」
「なぁ~、早くそっち貸してくれよ」
「お前は口に挿れときゃいいだろ」
「やっぱナカに出してぇもん。早く代われって」
二人分の、しかも、思春期を迎えて間もない血気盛んな青年の漲る欲望を受け止めるのは、年少の肇にとっては耐えがたい苦痛だった。ありったけの欲望をぶつけられても、到底受け止め切れるものではない。体も心も壊れてしまう。
「も、ゆるして……おなか、くるしくて……」
「あ~? なに弱音吐いてんだよ」
「まぁ、上も下も結構飲ませたからな。ほら、腹パンパン。妊娠してんじゃねぇの?」
青年は嗤いながら、肇の下腹を圧迫する。たっぷりと吐き出された白濁がとぷりと溢れ出て、肇の内腿を濡らす。肇は屈辱に頬を濡らす。
「見ろよこれ! お漏らしして泣いてるぜ、こいつ」
「漏らした分、腹も空いただろ。もう二発ずつ飲んでもらうからな」
「やっ、いやっ、もうむり……っ」
「な~にが、いやっ、だよ。お前のここは、ちんぽ欲しがって泣いてるみたいだけど?」
「ぅっ、んん゛……やだぁっ……」
ローションや精液、他にも色々の体液が混ざり合い、肇の蕾は難なく男を呑み込んでしまう。肇の本心とは裏腹に、快楽を教え込まれた躰は自然と快楽を拾い上げる。
「やだっ、ぁ゛、いやっ、いやぁ、ゆるして……」
「善がってんじゃねぇよ。こっちも咥えろ」
男が屹立を肇の唇に押し当てる。肇はぎゅっと口を結び、いやいやとかぶりを振った。
「なに抵抗してんの? そんなことできる立場かよ、お前。お情けでウチに置いてもらってるだけの半端モンが」
「……」
「あっそう。そういう態度なわけ。だったらその口切り裂いてやるよ」
男は引き出しからカッターを取り出し、肇の顎を掴み上げる。
「穴しか利用価値のないダッチワイフのくせに。生意気なんだよ」
「……っ」
「また泣くか? 女みたいに」
閃く刃が、口元の傷痕に突き付けられる。元は父に付けられた傷だが、その後も何度か切り裂かれている。そのせいか治りが悪く、おそらく一生残るだろう。
「ほら~、兄ちゃん怒らせんなって。お前も痛いの嫌だろ? 大人しく言うこと聞いとけよ」
「……っ……」
大した年の差ではないとはいえ、子供にとってのそれは絶望的なほど大きな壁だ。カッターなど持ち出さなくとも、彼らは拳で簡単に肇を黙らせることができる。そうしないのは、父の所有物に傷を付けたくないからだ。だからこうして卑怯な手を使う。
肇は震えながらゆっくりと口を開いた。男は卑しい笑みを浮かべて、肇の頭を押さえ付けた。
父の不在時に加え、二人の兄も肇に興味を示さない夜は、同じ部屋で寝起きする使用人達に犯された。古くから働いている者の中には、肇の母に懸想していたような輩もおり、彼女を重ねて肇を犯した。
「ああ、この艶肌……堪らんなぁ。あのお方を思い出す」
「そんなに美しかったのかい。肇坊ちゃんのお母上というのは」
「そりゃあもう、綺麗なんてもんじゃなかったさ。一度抱いてみたかったが、高嶺の花ってやつだよ」
「妾の子とはいえ、お嬢様だろう? 無理に決まってる」
「ああ。しかし、肇坊ちゃんがここにこうして堕ちてきてくれた。ありがたいこった。お母上と違って扱いやすいしな」
ろくに洗ってもいないような垢だらけの性器を、男は肇の小さな口にねじ込む。思わず戻しそうになるのを、肇は必死に堪える。息を止めれば、どうにか耐えられないほどでもない。いや、やはり無理かもしれない。
「だが、あの気位の高さが魅力だったんだ。オレ達のことなんて歯牙にもかけない、高飛車なところが」
「だから、いくら見た目が似ていたって、肇坊ちゃんは偽物なのさ。あの方とは似ても似つかない」
男達の脂っぽく汗ばんだ手が、肇の躰をベタベタと撫で回した。
使用人達は、余程のことがない限り暴力という手段を使わない。肇が大声を上げて騒ごうものなら、潔く引き下がる。へこへこと媚びへつらい、へりくだった態度を取る。仮にも、肇は橘の坊ちゃんなのだ。
そのことが、肇は余計に辛かった。惨めだった。汚らしい男共にいいように弄ばれる程度の価値しか自分にはないという事実を、まざまざと思い知らされるようだった。
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