神速の凡才剣士

藤堂 鷹獅

文字の大きさ
上 下
9 / 30

9話

しおりを挟む
目の前に迫り来る斬撃
破壊力、魔力量、どちらを取ってもこの戦いに終止符を打つには申し分ない一撃
この絶望的な状況の中トウヤは葛藤していた
(あの能力を使えばこの場を凌ぐことができる…でも…)
親父には、
「お前が、一人前になるまでは絶対に使うな」
って言われてるんだよなぁ…
(でも…ここで負けたら、一人前になんてなれないよな…)
全力で戦わなければシェニアに勝てないことはトウヤ自身が一番よく知っていた
「後で、言い訳考えないとな…」

「なんであいつ笑ってるんだ!?」
いつの間にかトウヤの顔に笑みが浮かんでいた
「創造の主よ…この世界を変える力を…」

「なんですって!?」
シェニアの顔色が変わる
彼女ほどの強さになるとこれからトウヤが使う能力のヤバさを雰囲気で感じ取ることができるのだろう
起源の世界オリジンワールド…」

「な!?」
途端、トウヤとシェニアの対峙している空間のみ

世界が変わった
「永遠の終わり」の威力が瞬く間に減退し消失する
「なんとぉぉぉ!今まで防がれることのなかったシェニア=フェルシアの「永遠の終わり」が相殺されたぁぁぁ!」
興奮気味に実況のウルメスが叫ぶ
ウルメスの隣で難しい顔をしているブルエンをよそに、会場がここ一番の盛り上がりが起こる
「あの一年!シェニアの技を相殺したぞ!」

「なんだあいつ!すごいぞ!」

「これは分からなくなったぞ!」
しかし、一番興奮しているのは観客の誰でもない
圧倒的な能力を身をもって体感したシェニアだった
「トウヤ!今のは!?」

「あの、えっと」

「今まで、あの技を使えば相手の方はほぼすべて倒すことができたんですの」
おい
なんてデタラメな技なんだ
直接剣技や技で止めに行ってたら確実にやられていたってことか
起源の世界を使ったのは間違いじゃなかったんだ
でも
「久しぶりにこの戦い、楽しめそうですわ!」
シェニアの目が輝いている
でも
「すみません…それはできません」
パチンと指を鳴らし起源の世界を解除する
シェニアの顔が曇る
「なんですって!?」
少し怒りの表情が含まれている
「起源の世界を使った時点で…」
審判をしていたゴードンが駆け寄ってくる
「模擬戦終了!勝者、シェニア=フェルシア!」
闘いの結果が告げられる
「な!なんとぉぉぉ!ここで試合終了だぁぁぁぁ!!勝者学園最強シェニア=フェルシアだぁぁぁ!」

「「はぁぁぁぁ!?」」

色々なところから声が上がる
「な、なんでわたしくしの勝ちなんですの!?まだ戦いは…」
当事者でさえ抗議する始末だ
「まったく…」

「え、ブルエン先生?」
ブルエンが実況のウルメスからマイクを取る
「えー、今の勝敗について説明するわ」
この放送に会場のすべての人の耳が傾けられる
「結論を言うと、トウヤ=キリュウ君の反則負けということになるわ」

「学生騎士規約42条 世界干渉系能力の制限について
簡単にいうと
世界干渉系能力は能力が圧倒的すぎるの。それも、能力だけで学生のトップに立つことができるくらいね…だから、一定以上の効果のある世界干渉系能力は試合での使用を禁止されてるの。トウヤ=キリュウ君の使った「起源の世界」。これは、世界干渉系の能力の中でも特に上位に位置する能力なの。このことにより、トウヤ=キリュウ君の反則負けということになるわ」
ブルエンはマイクをウルメスに返し身を翻し会場を後にした
(これは学園長に報告だわ…まさかね…)



「トウヤ、あなたは知っていたんですの!?」
いやー、シェニアさん怒ってるなぁ…
「はい」

「それでは!なんで使ったんですの!?」

「んー…なんでかなぁ…失いたくなかったからかな…」
そこで俺は身を翻す
「ちょ、ちょっと!待ちなさい」
敗者が勝者の命令に従うのは当たり前のことだ
「荷物…まとめてきますね…」
じゃあな、今までの幸せな生活

ようこそ、自由のない奴隷生活


これからどうなるんだろうな
「ちょっと!待ちなさいって言ってるじゃない!」

「ふごぉ!」
すごい力でお尻を蹴られる
普通に痛い
「暴力反対~」

「わたくしの話を聞かないからですわ!」
ぷんぷんと擬音語が出そうだ
「なんですか?」

「わたしの勝利した時の条件を変えます」

「え?それは原則禁…」

「わたくしに有益になるなら禁止ですわ…でも、あなたに有益になるなら問題ないですわ」

「はぁ」

「気の抜けた返し方しますわね…それでは、わたくしの世紀の大発案をお聞きなさい!」

「世紀のって…」
この人がそういうこと言った時はいいことないだよな
模擬戦申し込まれたし…
「不満そうですわね」

「いえ!」
顔に出てたか
「それではお聞きなさい!」




「メリアと同室であることは前案同様認めませんわ!…部屋はわたくしの使っていない一部屋をお貸ししますわ!」

「そこは妥協してくれないんですね!」

「大切な妹のためですもの!それよりここからです!」

「は、はぁ」




「わたくしの奴隷にはならなくてもよろしいですわ!その代わり…





シェニアの顔に美しい笑顔が現れる
「この学園でわたくしのライバルとしてお互いに高め合いましょう」
この時初めて、シェニア=フェルシアを可愛いと思った





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

処理中です...