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EXTRA 短編集

EXTRA きららの学校 ③

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「はぁ・・・。」

 だめだ。ため息しか出ない。
 目の前の学食を見ながら私は箸も進まず、こぼれ出るため息を少なくするだけで精一杯だった。
 なぜかしら。

 今日は無性に怒られている気がする。
 それも、私はどれもこれも悪くないのに。

「おねえふぁん、食べないほ?」

 目の前であれだけ走ったあとに何事もなかったかのように大きな丼をバクバクt食べ進めるソラキチ。
 私の隣では燃え尽きたかのようにリカがぐったりとしている。
 手にはお茶が握られていて、気分が悪くあまり食べたくない。と言ったダウンしている。
 私も、目の前にあるパンに手が出ない。一番軽そうなサンドイッチにしたんだけど・・・。
 ちょっと・・・。
 目の前の平然としているソラキチが嘘みたい。

「ごちそうさまー!!」

「はやっ!!」

 目の前で完食してご満足そうなソラキチ。リカは微動だにしない。

「ね、ねぇ?リカ、大丈夫?」

「・・・心配無用だ」

 蚊が飛ぶようなか細い声で返事をされても、あまり説得力がないんだよなぁ。

「先輩っ!こここ、こんにちわっ!」

「おー、アリシアー。今からご飯ー?」

「はい!朧月先輩たちに逢いたくて、ダッシュで来ました!」

「ごめんねぇ、もう食べちゃったんだよー。まぁ、せっかくだし話そうよ!」

「はい!ダイジョブです!!となり、失礼します!」

 廊下からダッシュで来たのは長い銀色の髪の大人しそうな女の子。
 この学校は中高一貫性で、アリシアちゃんは中等部の2年生。私たちの近所の子で、いつも私たち3人といるから、この子も合わせようと頑張ってるんだけどね。
 時間割には逆らえないみたい。
 高等部の方が始まりが少し早いから中等部と15分くらいずれてるんだよね。

「今日、リカ先輩どうしたんですか?なんか・・・その、燃え尽きてますけど」

「あぁ、これはね・・・。うちとリカの死闘の結果よ!」

 パックの牛乳を飲み干すとどこか遠いところを見ながら意味ありげに言うそらら。

「あんたね。ただ、先生にうるさくした罰って言われてみんなの倍走っただけで、リカはそのせいでこんなんなのよ。・・・っていうか!私もあんたのせいで巻き添えじゃないのよ!」

「まーまー。そんな風に怒るとほら、老けるよ?」

「こ、このバカそららはぁ・・・」

 心の底から怒りが湧き上がる感覚。
 手にしたイチゴミルクのパックを握りつぶしちゃいそうな気がする。

「でも、そらら先輩!リカ先輩と同じ距離を走ったんですよね?」

「んー?そだよー」

「その、大丈夫なんですか?ふたりはだいぶ辛そうですけど・・・」

「あー!大丈夫大丈夫!うち走るのはなれてるんだぁ。毎日遅刻しそうだから朝起きてから駅までダッシュだし!」

「さ、さっすが先輩です!!」

(だから、今朝も後ろから来たのか・・・)

「うち、朝弱いんだよねぇ!」

 ケラケラと楽しそうに笑うそらら。
 その横で目を輝かせているアリシア。
 なに、このテーブルの温度差。
 正直怒る気にももうならないわ。
 そろそろリカを連れて教室に戻ろうかしら。

「来るっ!!」

 私がリカに手を伸ばそうとしたとき、灰のようだった彼女は急に立ち上がり食堂の入口を見つめていた。

「く、来るって?・・・いきなりどうしたの?」

「・・・くるぞ」

 今日一番の真剣な顔。
 体育の時間にそららをからかっていた時とは違ってなにかに怯えるような表情、強張り方だった。
 どうやらただ事ではない様子。

「せ、せんぱい。もしかして・・・」

「が、学園長?」

「学園長?それって」

 食堂の入口に、一品の影が伸びてきた。
 3人が怯えるほどの学園長という人物。
 私以外の3人は廊下から伸びる影を固唾を飲んで見つめていた。
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