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「お守りできず、すみません……」
次の日の朝、しょんぼりした表情で村長に頭を下げるソフィアちゃんの姿があった。ソフィアちゃんの後ろにはムイムイによって壊された家の残骸が転がっている。
昨夜のムイムイフィーバーから覚めたソフィアちゃんは、潰れた家を見て落ち込んでしまった。
「は、はぁ……」
村長さんは戸惑った顔をいている。当たり前の話ではあるけど、嬉しくはなさそうだ。けれど、相手が貴族の息女であるソフィアちゃんとあってか、責める言葉もでてこない。
「潰れた家は弁償させていただこうかと……」
「はっはっは、そいつはさすがにスジ違いだぜ、お嬢ちゃん」
申し訳なさに弁償の提案を口にだしたソフィアちゃんだけど、聞き覚えのある声が割って入った。
「ぜ、ゼイラードさん!」
「そう、俺は小金持ちのゼイラード!! 若い頃事業で稼いで、ちょっとばっかし金をもってるおじいさんだ!」
へんなポーズをつけて歩いてくるゼイラードさん。この人いったいなんなんだろう。
「冒険者の仕事っていうのはな、結論を言うと成功するか失敗するかよ。成功したら報酬をもらう、失敗したら手ぶらで帰る、あくまでそれだけ。それ以上の責任も、それ以下の義務も負わねぇ。村を守ってくれって依頼で失敗して村が全滅したら、その責任を負わされるのか? そんなになったら冒険者稼業なんて立ち行かないぜ」
謎なおじいさんだけど、言ってることは正しい気もする。ソフィアちゃんの場合、貴族として受けてるか、冒険者として受けてるかはスタンスは微妙なところだろうけど。
「そもそも子供二人に任せっきりにしたんだろ。魔物だって、見張りがいないから侵入してきたのかもしれない。それを好意で助けようとしてくれた相手に責任負わせるなんて、おかしな話だよなぁ」
そういって村長さんに問いかけるゼイラードさんに、村長さんは本音では賛同したくなさそうだったけど頷くしかなかった。
「そ、そうかもしれませんね……」
まあ、弁償してもらえるならそっちが嬉しかったのが本音だろう。けれど、そう宣言してしまった以上、もうソフィアちゃんの話は受けられない。
ゼイラードさんはあっという間に話をつけると、ソフィアちゃんと私に言った。
「冒険者なら余計なことは考えず、依頼を成功させることに注力しな。まだ問題は解決したわけじゃないようだしな」
そういって親指で指し示す先には、十匹のムイムイがいた。
そう数が増えてしまったのだ。昨日のソフィアちゃんの対応が悪かったのかもしれない。魔法で運ばれた当初はびっくりして姿をあらわさなかったムイムイだけど、攻撃されないことがわかってしまったのか、むしろ数を増やして来てしまったのだ。
いまはまだソフィアちゃんの魔法を警戒してるのか、村に踏み込んでは来ないが、昨晩の行動から見て、村に侵入してくるのは時間の問題だろう。そして、一匹にあれだけ手間取ったソフィアちゃんが、あの数を追い返せるはずがない。
いや、本気で戦えば、あっさり撃退できるはずなんだけどね。
「わかりました……」
ソフィアちゃんも神妙な顔で頷いた。
***
私とソフィアちゃんは二人で作戦会議することになった。
一応、見張りもかねて、宿の屋根の上で。
いろいろ案をだしあってみたけど、どれもダメそうだった。苦手なものはないらしいし、食事をあげて満足したら帰らないかと提案してみたけど、かなり食いだめするタイプらしく、村の食料が先になくなりそうらしい。
そうなってくると、もう本格的に倒すしかないわけだけど、私はソフィアちゃんに言う。
「無理しなくてもいいんだよ。ムイムイが倒せないっていうなら倒せないでいいと思う。その場合でも、村の人を避難させるとか、方法はあるからね」
まあその場合、村を守りきったとはいえないだろうけど……私たちの初冒険は村を壊滅させたで終了である。
ソフィアちゃんはそれを聞いて、ぐっと何かを決心した顔をした。
「やっぱり……ムイムイさんたちを傷つけるのは嫌です……。でも、村の人の悩みも解決してあげたいです。何よりエトワさまとの初冒険ですから良い終わり方にしたいです……。だから……私の力でなんとかやってみます。失敗するかもしれないけれど、やらせていただけませんか?」
ソフィアちゃんが提案したのは、ムイムイさんの長距離移送計画だった。
傷つけないように安全に、ムイムイさんたちをほかの生息に移動させる。ムイムイが戻ってこないような距離というと、ここから百キロ近くも離れてた。
ソフィアちゃんの魔法なら移動可能な距離だろうけど、それはあくまで一人の場合。ムイムイさん十匹と一緒にという条件になると、ソフィアちゃんの表情を見た限り、とても厳しいようだった。
「手伝いに来たのにわがままばかり……ですよね……ごめんなさい、エトワさま」
ソフィアちゃんはしょんぼりした顔でぽつりと呟いた。ソフィアちゃんには珍しい、暗い表情だった。
私はそんなソフィアちゃんに微笑んで、親指を立てて言う。
「何言ってるの! ソフィアちゃんのわがままなら大歓迎だよ!」
いろいろトラブル続きの初冒険だけど、なんとかムイムイさん輸送計画を成功させようと思う。
二人で協力してね!
※すみません、なんとかパウチウもだそうとしたのですが、私の発想力では無理でした。
次の日の朝、しょんぼりした表情で村長に頭を下げるソフィアちゃんの姿があった。ソフィアちゃんの後ろにはムイムイによって壊された家の残骸が転がっている。
昨夜のムイムイフィーバーから覚めたソフィアちゃんは、潰れた家を見て落ち込んでしまった。
「は、はぁ……」
村長さんは戸惑った顔をいている。当たり前の話ではあるけど、嬉しくはなさそうだ。けれど、相手が貴族の息女であるソフィアちゃんとあってか、責める言葉もでてこない。
「潰れた家は弁償させていただこうかと……」
「はっはっは、そいつはさすがにスジ違いだぜ、お嬢ちゃん」
申し訳なさに弁償の提案を口にだしたソフィアちゃんだけど、聞き覚えのある声が割って入った。
「ぜ、ゼイラードさん!」
「そう、俺は小金持ちのゼイラード!! 若い頃事業で稼いで、ちょっとばっかし金をもってるおじいさんだ!」
へんなポーズをつけて歩いてくるゼイラードさん。この人いったいなんなんだろう。
「冒険者の仕事っていうのはな、結論を言うと成功するか失敗するかよ。成功したら報酬をもらう、失敗したら手ぶらで帰る、あくまでそれだけ。それ以上の責任も、それ以下の義務も負わねぇ。村を守ってくれって依頼で失敗して村が全滅したら、その責任を負わされるのか? そんなになったら冒険者稼業なんて立ち行かないぜ」
謎なおじいさんだけど、言ってることは正しい気もする。ソフィアちゃんの場合、貴族として受けてるか、冒険者として受けてるかはスタンスは微妙なところだろうけど。
「そもそも子供二人に任せっきりにしたんだろ。魔物だって、見張りがいないから侵入してきたのかもしれない。それを好意で助けようとしてくれた相手に責任負わせるなんて、おかしな話だよなぁ」
そういって村長さんに問いかけるゼイラードさんに、村長さんは本音では賛同したくなさそうだったけど頷くしかなかった。
「そ、そうかもしれませんね……」
まあ、弁償してもらえるならそっちが嬉しかったのが本音だろう。けれど、そう宣言してしまった以上、もうソフィアちゃんの話は受けられない。
ゼイラードさんはあっという間に話をつけると、ソフィアちゃんと私に言った。
「冒険者なら余計なことは考えず、依頼を成功させることに注力しな。まだ問題は解決したわけじゃないようだしな」
そういって親指で指し示す先には、十匹のムイムイがいた。
そう数が増えてしまったのだ。昨日のソフィアちゃんの対応が悪かったのかもしれない。魔法で運ばれた当初はびっくりして姿をあらわさなかったムイムイだけど、攻撃されないことがわかってしまったのか、むしろ数を増やして来てしまったのだ。
いまはまだソフィアちゃんの魔法を警戒してるのか、村に踏み込んでは来ないが、昨晩の行動から見て、村に侵入してくるのは時間の問題だろう。そして、一匹にあれだけ手間取ったソフィアちゃんが、あの数を追い返せるはずがない。
いや、本気で戦えば、あっさり撃退できるはずなんだけどね。
「わかりました……」
ソフィアちゃんも神妙な顔で頷いた。
***
私とソフィアちゃんは二人で作戦会議することになった。
一応、見張りもかねて、宿の屋根の上で。
いろいろ案をだしあってみたけど、どれもダメそうだった。苦手なものはないらしいし、食事をあげて満足したら帰らないかと提案してみたけど、かなり食いだめするタイプらしく、村の食料が先になくなりそうらしい。
そうなってくると、もう本格的に倒すしかないわけだけど、私はソフィアちゃんに言う。
「無理しなくてもいいんだよ。ムイムイが倒せないっていうなら倒せないでいいと思う。その場合でも、村の人を避難させるとか、方法はあるからね」
まあその場合、村を守りきったとはいえないだろうけど……私たちの初冒険は村を壊滅させたで終了である。
ソフィアちゃんはそれを聞いて、ぐっと何かを決心した顔をした。
「やっぱり……ムイムイさんたちを傷つけるのは嫌です……。でも、村の人の悩みも解決してあげたいです。何よりエトワさまとの初冒険ですから良い終わり方にしたいです……。だから……私の力でなんとかやってみます。失敗するかもしれないけれど、やらせていただけませんか?」
ソフィアちゃんが提案したのは、ムイムイさんの長距離移送計画だった。
傷つけないように安全に、ムイムイさんたちをほかの生息に移動させる。ムイムイが戻ってこないような距離というと、ここから百キロ近くも離れてた。
ソフィアちゃんの魔法なら移動可能な距離だろうけど、それはあくまで一人の場合。ムイムイさん十匹と一緒にという条件になると、ソフィアちゃんの表情を見た限り、とても厳しいようだった。
「手伝いに来たのにわがままばかり……ですよね……ごめんなさい、エトワさま」
ソフィアちゃんはしょんぼりした顔でぽつりと呟いた。ソフィアちゃんには珍しい、暗い表情だった。
私はそんなソフィアちゃんに微笑んで、親指を立てて言う。
「何言ってるの! ソフィアちゃんのわがままなら大歓迎だよ!」
いろいろトラブル続きの初冒険だけど、なんとかムイムイさん輸送計画を成功させようと思う。
二人で協力してね!
※すみません、なんとかパウチウもだそうとしたのですが、私の発想力では無理でした。
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