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わしと主(あるじ)とバトロワ 4
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「そういえばミーフィアちゃんは魔法がうまくできないと言ってたのう。どんな風にできないんじゃ?」
模擬戦の開始、5分前。
わしとミーフィアは自分たちの開始地点に着いた。
この模擬戦は、生徒たちは森にばらばらに分かれてスタートする。
わしは準備もかねて、ミーフィアが魔法をどんな風に苦手なのか聞くことにした。
「魔法が発動しないときがあるんです。成功するときもあるんですけど、失敗するときのほうが多くて」
「ふむ、やってみてくれんか?」
「は、はい」
ミーフィアは緊張した面持ちで、前方に手をかざし呪文を唱えた。
「ファイヤーアロー!」
ごく簡単な火の矢を放つ初歩的な魔法。
しかし、ミーフィアのかざした手は、ぷすぷすと黒い煙をあげるだけで、魔法が発動することはなかった。
「やっぱりだめみたいです……」
言ってたとおりとはいえ、失敗した魔法にミーフィアががっくりとうなだれる。
しかし、わしのほうはむしろ目を開いて驚いてしまった。
「なんと、これは……」
ミーフィアの魔法の失敗の原因。
それはミーフィアの魔力が大きすぎるせいだった。
魔力が大きいが故にうまくコントロールできておらず、注ぎ込んだ膨大な魔力の一部が逆流を起こしてしまい、正常に流れる魔力と互いに打ち消しあってしまい、何も魔法が発動しないという現象が起こってしまっていたのだ。
才能がないからではなく、むしろ才能が溢れているからこそ起きてしまった失敗。
ソーラには勝てないかもしれないが、この子は将来きっとすごい魔法使いになる。
「やっぱり、わたし才能がないんでしょうか……」
「いや、そんなことはないぞ」
わしはソーラが魔法に失敗していた原因を教えてやる。
「そ、そうだったんですか?でも、どうやったら魔力をうまく扱えるようになるんでしょうか……」
「大丈夫じゃ。こういうのは一度コツをつかめば簡単なはずじゃ」
わしは前足のおやゆびに力を込め、爪をだした。
そしてその力を解放する。
事象剣ムラサメ!
わしの目に、ミーフィアが魔法の発動に失敗するパターンがいくつも映る。
わしはそのすべてを魔剣と化した親指で一気に切り裂いた。
「クロトさん、いま何かしましたか?」
「ふっふっふ、秘密じゃ。それよりも、もう一回やってみてくれるかのう」
「え?でもさっきも失敗しましたし……」
「大丈夫、今度は必ず成功するはずじゃ」
ミーフィアはとまどいながらも、わしの言うとおりに両手をかざしもう一度同じ呪文を唱える。
「ファイヤーアロー!」
わしの目に映る彼女の魔力が、きわめてスムーズに手のひらへと流れていくのが見えた。
ゴオォォ!
彼女の両手から大きな炎の矢が出現し、それはすごい速さで彼女の手のひらから放たれると、近くの木々を五本ぐらい爆散させた。
「えっえっ、ええええ」
見事な成功。
しかも、通常のファイヤーアローの五倍ほどの威力があった。
それをやった当人が目を白黒させている。
「うむ、成功したようじゃのう」
わしは満足げに頷いた。
「どうしてですか?クロトさん絶対に成功するって言ってましたよね!なんでわかったんですか?」
「ちょっとした裏技じゃよ。ミーフィアちゃんが失敗するパターンをすべて取り除いたんじゃ」
「裏技!?クロトさん、そんなことができるんですか!?」
わしはネコといっても魔界生まれのネコなので、いくつか普通のネコとは違うところがある。
その中でも大きな特徴が前足の爪10本に、それぞれ魔剣を隠し持っていることじゃった。
さっきの魔剣はそのひとつ。
この世に存在する確率的な事象を切る剣ムラサメ。
名前は自分でつけた。生まれたばかりのときは厨二病だったんじゃ。
この剣を使えばサイコロで1から6まで好きな数字を出しほうだい。くじびきだって好きな景品をゲットできる。何かと便利な魔剣じゃった。
さっきはこれで、ミーフィアが魔法に失敗するパターンをすべて切り裂き、必ずベストな状態で成功するようにしたのじゃった。
「ただし、あくまで効果は一時的なものじゃ。だからミーフィアちゃんはその間にただしい魔力の流れを感覚でおぼえるんじゃ。
そうすれば効果が切れても、ちゃんと魔法がうまく使えるようになってるはずじゃぞ」
「は、はい!わたしがんばります!」
ミーフィアの表情が以前とは違う、きらきらした顔に変わる。
成功する手がかりを見つけたことで、モチベーションが一気にあがったようじゃった。
うむ、若者はそういう表情をしているほうがいい。
『それでは模擬戦を開始します。生徒たちは各自の開始地点よりスタートして、自由に戦闘を開始してください!』
ちょうど模擬戦開始を伝える先生の声が聞こえた。
「それじゃあ、いくかのう」
「はい!クロトさん!」
そうしてわしとミーフィアのコンビでの、模擬戦がはじまったのじゃった。
模擬戦の開始、5分前。
わしとミーフィアは自分たちの開始地点に着いた。
この模擬戦は、生徒たちは森にばらばらに分かれてスタートする。
わしは準備もかねて、ミーフィアが魔法をどんな風に苦手なのか聞くことにした。
「魔法が発動しないときがあるんです。成功するときもあるんですけど、失敗するときのほうが多くて」
「ふむ、やってみてくれんか?」
「は、はい」
ミーフィアは緊張した面持ちで、前方に手をかざし呪文を唱えた。
「ファイヤーアロー!」
ごく簡単な火の矢を放つ初歩的な魔法。
しかし、ミーフィアのかざした手は、ぷすぷすと黒い煙をあげるだけで、魔法が発動することはなかった。
「やっぱりだめみたいです……」
言ってたとおりとはいえ、失敗した魔法にミーフィアががっくりとうなだれる。
しかし、わしのほうはむしろ目を開いて驚いてしまった。
「なんと、これは……」
ミーフィアの魔法の失敗の原因。
それはミーフィアの魔力が大きすぎるせいだった。
魔力が大きいが故にうまくコントロールできておらず、注ぎ込んだ膨大な魔力の一部が逆流を起こしてしまい、正常に流れる魔力と互いに打ち消しあってしまい、何も魔法が発動しないという現象が起こってしまっていたのだ。
才能がないからではなく、むしろ才能が溢れているからこそ起きてしまった失敗。
ソーラには勝てないかもしれないが、この子は将来きっとすごい魔法使いになる。
「やっぱり、わたし才能がないんでしょうか……」
「いや、そんなことはないぞ」
わしはソーラが魔法に失敗していた原因を教えてやる。
「そ、そうだったんですか?でも、どうやったら魔力をうまく扱えるようになるんでしょうか……」
「大丈夫じゃ。こういうのは一度コツをつかめば簡単なはずじゃ」
わしは前足のおやゆびに力を込め、爪をだした。
そしてその力を解放する。
事象剣ムラサメ!
わしの目に、ミーフィアが魔法の発動に失敗するパターンがいくつも映る。
わしはそのすべてを魔剣と化した親指で一気に切り裂いた。
「クロトさん、いま何かしましたか?」
「ふっふっふ、秘密じゃ。それよりも、もう一回やってみてくれるかのう」
「え?でもさっきも失敗しましたし……」
「大丈夫、今度は必ず成功するはずじゃ」
ミーフィアはとまどいながらも、わしの言うとおりに両手をかざしもう一度同じ呪文を唱える。
「ファイヤーアロー!」
わしの目に映る彼女の魔力が、きわめてスムーズに手のひらへと流れていくのが見えた。
ゴオォォ!
彼女の両手から大きな炎の矢が出現し、それはすごい速さで彼女の手のひらから放たれると、近くの木々を五本ぐらい爆散させた。
「えっえっ、ええええ」
見事な成功。
しかも、通常のファイヤーアローの五倍ほどの威力があった。
それをやった当人が目を白黒させている。
「うむ、成功したようじゃのう」
わしは満足げに頷いた。
「どうしてですか?クロトさん絶対に成功するって言ってましたよね!なんでわかったんですか?」
「ちょっとした裏技じゃよ。ミーフィアちゃんが失敗するパターンをすべて取り除いたんじゃ」
「裏技!?クロトさん、そんなことができるんですか!?」
わしはネコといっても魔界生まれのネコなので、いくつか普通のネコとは違うところがある。
その中でも大きな特徴が前足の爪10本に、それぞれ魔剣を隠し持っていることじゃった。
さっきの魔剣はそのひとつ。
この世に存在する確率的な事象を切る剣ムラサメ。
名前は自分でつけた。生まれたばかりのときは厨二病だったんじゃ。
この剣を使えばサイコロで1から6まで好きな数字を出しほうだい。くじびきだって好きな景品をゲットできる。何かと便利な魔剣じゃった。
さっきはこれで、ミーフィアが魔法に失敗するパターンをすべて切り裂き、必ずベストな状態で成功するようにしたのじゃった。
「ただし、あくまで効果は一時的なものじゃ。だからミーフィアちゃんはその間にただしい魔力の流れを感覚でおぼえるんじゃ。
そうすれば効果が切れても、ちゃんと魔法がうまく使えるようになってるはずじゃぞ」
「は、はい!わたしがんばります!」
ミーフィアの表情が以前とは違う、きらきらした顔に変わる。
成功する手がかりを見つけたことで、モチベーションが一気にあがったようじゃった。
うむ、若者はそういう表情をしているほうがいい。
『それでは模擬戦を開始します。生徒たちは各自の開始地点よりスタートして、自由に戦闘を開始してください!』
ちょうど模擬戦開始を伝える先生の声が聞こえた。
「それじゃあ、いくかのう」
「はい!クロトさん!」
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