夜の目も寝ず見える景色は

かぷか

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ソード オブ ソード

22 たまにはこうして

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「うーん」

 書斎で頬杖をついて悩むシルバ。

 最近のアビサルは平和そのものだった。ヒューズからも今のところ圧力をかけられる緊張感も少なくなりカウロックとも上手くやれている。グリーンセルは中立国への条件を交渉中。ウェザーは技術開発の交渉に派遣を向かわせていた。

 国は着々と領土を開拓し荒れ地は綺麗な街並みに変わっていった。人が増えればそれだけ揉め事や問題もあるのだがアビサルは基本的に人々が平和主義。争い事があっても冒険者ゆえの性分か誰かが必ずとめてくれる。そして弱者に手厚く国民からも信頼されていた。

「どうした?」

「強みがほしい、資金がいる」

「何の為に?」

「今、孤児が流れてきている。前ほどではないけど皆お金がない、先行支援ではあるが手元にすぐ資金がほしい時足りなくなる。できる限り受け入れたいが限度がくるし無償ではできなくなる。教育には時間と資金が必要だ」

「確かに、このまま行けばいざって時に出せなくなるな。治療もただじゃないし、孤児学校も何ヵ所かあるが技術授業も8才以上からにしてるしな。それ以下の子供達は確かにお金がかかる。面倒を見る人達にも金がいる」

「うーん、かといって税収は他の国よりとっているからこれ以上は難しい。何とか皆が楽しみながらお金を落としてくれないかな~気がつかないうちに…」

「難しいな…何か新しいもので興味のあるものか…」

「しかも継続的でないと。うちは建国記念の日ぐらいしかイベントらしいものはない。それも、祝い日は決まってる。もう少し長くできれば…」

「そう、根を詰めるな。ゆっくり考えよう。ずっと働きっぱなしも良くない。久しぶりに二人で飯でも行くか」

「うん!」

 二人はいつもなら時間に追われ個々に食事を済ませたり時間がとれたとしても自分たちの部屋で食べるのだが気分転換をかねて外で食事をする事をレオが提案した。ジープに留守を頼みフードを被って目立たないよう裏口から出る。外は夕飯時と重なり賑わっていた。

「レオ様、お出かけですか?」

「レオさん、これから仕事ですか?」

「今日はどちらへ?」

「寒いんですか?」

 シルバは横でクスクスと笑っていた。 

「クソ、フードなんか被るから余計目立つ。こんなのとってやる」

「レオはどこにいてもバレちゃうね。ソードの黒マント借りたら?」

「お前までバカにすんなよ。全く、何でわかっちまうんだ。シルバはバレないのによ」

「フードしててもレオはレオだから」

 レオは少し眉をひそめ納得してない様子だった。二人は自分たちの城から離れた街でご飯をする事にした。そこなら、声をかけられることも少ないからだ。最近できたこの街は若い人々が集まりどちらかと言うと観光地に近い雰囲気でまだまだ開発の余地が有りそうだった。

「だいぶ人が増えたね。知らないお店がいっぱい」

「そうだな、ここも特色作らないと。すぐ廃れちまわないようにしないといけない」

「城の周りはかなり賑やかになったし、各街ごとに特色をつけたからね。冒険者専用検問に近くに食事や宿屋を多く。一般的検問の近くには公共の場所。城の周辺は孤児や病院、学校を作ったし。城の裏は研究施設、ここは魔の森監視場だったが更に奥に移動させたから新しい人達が多いね」

「そうだな、道をしっかり広げたいところだが遊歩道か専用カウロにしてもいいな」

「ここには新しい風が吹くようにしたいから何処かの街とつながる道を作りたい。かといって魔の森に近づけれないし…」

「おっと、結局俺達は仕事に結びつけちまうな」

「うん、でもレオとこうして話してるの昔みたいで楽しい。ねぇ、あそこは?」

 一軒のレストランが目につきそこへ入った。店は少し高級な感じの作りで外にテラスがあった。好きな場所へどうぞ言われ折角なのでテラスへ。風が心地よかった。テラスは他に誰もいない。

「外は久しぶりだな」

「うん」

 楽しく談笑していると食事が運ばれた。店員がいなくなりシルバがキョロキョロしているとレオが手を伸ばしフードを取り外した。

「ここならバレないだろ」

「うん。レオの顔みながら食事したいしね」

「王も大変だな」

「レオも。すぐバレちゃうでしょ」

「まぁな。さっき考えてたんだが、いっそのこと俺らの婚儀の日は皆に休んでもらうってのはどうだ?働きすぎもよくない。家族サービスや恋人、好きな人に時間を使ってもいいだろ」

「それいいかも!7日間ぐらいあれば遠くに旅行にもいけるかも。さっそくジープに検討してもらう!」 
 嬉しそうなシルバは目の前の食事を頬張る。レオもお酒を飲みながら手をすすめた。解放感からシルバもお酒がすすむ。店をでる頃には上機嫌だった。フードを被りお会計を済ませる。

「帰るか?」

「やだ」

「やだって、どーすんだ?」

「ソードがさ、トヨルにお菓子がいっぱいあるって言ったから買って城に持って帰る」

「こんな時間にやってるお菓子屋なんて…」

 シルバは指をさすと明かりのついた店が何軒かあった。通称お菓子屋通り、24時間どこかのカフェかお菓子屋が営業中。

「……あった。まるでソードの為の通りみたいだな」

「いいでしょたまには。滅多にデートできないんだから!」

 確かに忙し過ぎてそんな事をしたのは数えるほどしかなかった。レオはシルバに手を引かれ開いているお菓子屋を片っ端から回った。酔っていたせいもあり饒舌になりペラペラと話しながら買う。

「レオ~これ。これも、後ね~」

「良いけどこんなに買っていつ食うんだ」

「んーレオいる時、あとレオと寝る前とレオと…」

 レオはびっくりして口を押さえた。シルバとバレたら大騒ぎになってしまう。それに今の会話の内容はその先に何を言い出すかわからなかった。

「悪い、適当に包んでくれ。早く」

「かしこまりました」

 シルバを抱え足早に店をでた。店を出てからも店員の目が気になったが本人はレオの服を掴んで引っ張る。

「ねぇ、ねぇ!ねぇってば!」

「あ?シルバ帰るぞ」

「やだ!まだ、あの店行ってないんだけど!おろしてよ!」

 抱えた腕の中でジタバタして降りようとした。暴れるシルバをしかたなく降ろした。店に向かうと思いきやいきなり包みを開けお菓子を食べさせるようねだった。気が済めば城に戻ってくれると思い一つ掴んで食べさせた。

「ほら、シルバ帰るぞ。さっきから悪目立ちしてる」

「……やだ…折角レオとデートしてんのに」

 今度は半泣きになり下を向いた。さっきから忙しく態度を変えるシルバは若くして王になったがゆえにその殻を脱ぎ捨てる場がなかった。自分といる時は極力そうさせたが外に出て自由にさせれる事は少なかった。お酒と外に出られた解放感でつい本音がでてしまったシルバにやれやれと思いつつそんな一面も可愛く思ってしまう自分は相当好きだなと思った。

「ま、いっか。シルバ」

 フードを取りシルバにキスをする。

「レオ!バレちゃう!」

「暗いから大丈夫だ」

 驚くシルバに更にキスをした。長めのキスはシルバの顔を先ほどより赤くさせた。キスをとかれると思わず抱きついた。

「レオ…好き」

「俺もだ、シルバ愛してる」

「どうしよ、腰抜けて歩けない」

「はは、じゃあこうだな」

 レオはひょいっと横抱きをして城まで運んだ。シルバに抱きつかれながらレオは国の婚儀記念日以外に婚儀記念日も休みを取れるようジープに頼もうと思ったのだった。

□店員□

「見た?」

「見た」

「あれ、間違いなくレオ様だよね」

「うん。じゃあ、隣はシルバ様って事だよね。初めて見た、なかなかシルバ様は見れないから凄い体験した」

「私も。何か失礼かもだけど可愛い。あんな可愛くされたらキスするよね?」

「する。うちの国の王凄くない?あんな可愛いのに国守ってるし。レオ様がメロメロになるのわかるわ~ありゃ罪だね」

「ほら、向かいの店のお菓子屋さん外に出てきてる。あ、あそこも。わかる~近くで見たいよね。明日、この話しでもちきりだね」

「何か今なら私も誰かに告白できる気がしてきた」

「私も!」

 こうしてトヨルのお菓子通りの店員達はこの夜から一気にシルバとレオ熱が上がった。その後、婚儀記念日が制定されると二人の神聖な場所としてこぞって記念のお菓子を出したのだった。また、誰が言ったかあの場所で知り合いキスをすると末永く結ばれると噂され告白をする男女で盛り上がるのだった。こうして二人の知らぬ間に愛の観光地化され大いにアビサルが潤うのだった。

「レオ、最近トヨルが賑わってるらしいよ。もの凄くお菓子が売れてるんだって。知ってる?」

「いや、知らん」
    
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