52 / 66
ソード オブ ソード
12 セルロ ③
しおりを挟む片方のブーツを丁寧に回し何処かに仕込みがないが探した。紐を外し中敷きの裏も調べるがわからなかった。
もうひとつも同様で何も見つけれなかった。似てるだけで違ったのかとベッドからブーツを眺めていると靴底の側面にに線がついていた。
固い靴底の真ん中にナイフを慎重に差し込み切った。すると中に何かが入っていた。
破れないよう引っ張り出すと皮の切れ端に小さな文字が書いてあった。それを一先ず置きそれ以上無いのを確認してもう片方も切り込みを入れた。同じような紙が出てきた。
滲んだり擦れたりして読めない字もあったが文章を読んでみた。
「…は…セル…よくみつけ……が……れ…よ
…ギ…バーナ…と…ードは大…な…仲間」
…………。
「やっぱり、セルロのだった……やっぱ…りっ…」
セルロは俺の名前を書いてくれてた
俺も仲間だと思ってくれてたんだ
溢れでる涙は止まらなかった。
俺、冒険者になったよ
俺、もっとセルロ達と一緒に居たかったよ
俺、三人が大好きだったよ
どれぐらい時間が経ったかわからなかったが気がついたら夜明けだった。シャワーを浴び身支度を整え宿を出た。
武器屋の店主が言っていたが復讐などする気はなかった。店に持ってきた奴が居たというだけで証拠は無く、ましてやそこへ行ったからといって何かあるとは思えない。
そんな、顔をしていたんだろうか……
討伐依頼所へ行くと早朝にも関わらずちらほら人がいた。掲示板を見ると珍しい依頼があった。
中級者のみで三人以内、独り身の方。
時間限定で誰もいなければ一時間後に
取り消します。待ち合わせにて詳細
と書いてあった。
セルロなら受けそうな依頼だと思った。
行くと俺以外にもう一人いた。年上で体格もいい、冒険者の経験は2.3年ってところか。人を観察する癖は昔からの癖だったが冒険者にはかなり役にたつ癖だったな。
指定された場所は人気の無い森の奥だった。
「待ち合わせに誰も居ないな」
「そうですね」
森なら剣は振りづらく反応に遅れる。情報者が良い奴とは限らない。フードマントに剣を忍ばせいつでも戦えるよう準備をした。
「冷やかしだったかな?」
「ならいいですが。それにしては妙です、警戒しましょう」
「そうだな」
冷やかしにしては手がこんでいた。こんな森にしなくとももっと開けた場所でできるはず。少し待ったが現れなかった。冒険者は帰ろうと言ったので賛成した。俺達は森を抜けようと来た道を戻るもさっきと何かが違う。人の体臭のような匂いに、誰かに見られているような気配を感じた。
「待ってください、何かおかしいです」
「ん?」
俺は剣をかざし自分の前を空斬りした。剣に引っかかりがあった。プツっと斬れたら透明なものが剣に絡んだ。
弓弦…?
「罠です!」
声をかけた時には隣にいた男は首を持ってかれていた。剣を自分の周りで振り他に弦は無いかを探った。その間に3人の敵に取り囲まれたが盗賊なら少なくとも10人はいる。
俺は走って森を出ようとしたが追いかけられてなかなか広い道に出れなかった。その内に数が2人増えた。もう一人の冒険者の始末でも終わったんだろうか。
俺もいつ迄も逃げ回ってても仕方ない。大人数相手なら体力を使う。そして覚悟をした。
初めに来た奴を殺る
二人同時に襲ってきた。間違いなく俺を殺る気で逃がすつもりはないようだった。ならば俺も容赦などしなない。
俺の見た目に油断してる隙に二人を手早く片付けた。それを見た三人の内二人は俺に、一人は仲間を呼びに行く。厄介な事になった。
一人を倒しもう一人には軽く傷を負わせ人質にした。特に話す事もない。こいつらの考えには賛同できないし一方的で理不尽だ。
布を口に被せ自害しないようにさせその場で暫く待った。何か言いたげだったがこういう輩の反応などいちいち気にしてられない。それにもし追っ手がこのまま来なければこいつに伝言を頼み追うなと言う予定だった。望みは薄いが無駄な戦いは避けられる。
ついでに靴とベルトを外した。隠し武器があるかもしれない。
足跡が幾つも聞こえた。
予想通りかなりの人数が来たがその中に親玉のような恰幅の良い男が離れた場所で指示をしている。
「逃がすな!兄弟が殺られたんだ!」
こっちは見ず知らずの冒険者が理不尽に殺られた。
剣を振りかざし奮起してまるで俺が悪役だが逆だ。お前らが俺らから金品奪おうと狡い真似をしたんだ。
数名が剣を握りしめ飛びかかってきた。他にも何人か俺の隙を見て攻撃してこようとしといた。二人倒したがこれじゃあ体力が持たない。
三人目は時間稼ぎがうまかった。よろけた時に腹を蹴られ地べたに手を付く。上からと後ろから、それに正面からと三方向から狙われた。
……………
「複数に狙われたら初めに正面をやれ」
「何で」
「狙いやすい。もし無理でも目眩まし位は素早くしろ。何でも良い、砂でも剣でも投げて怯ませる事が大事だ」
「わかった」
「問題は他のだ、前をすり抜けたら走って逃げるか上の奴をやれ。上の攻撃は隙が多い、着地を狙うんだ。出来れば二体同時にやれれば良いがな。魔獣は容赦ないから躊躇うな」
「わかった」
「お前は間違いなく強くなる。だから、考えを柔軟にもて。固執しすぎるなよってできてたら俺も今頃もっと強いか~」
「うん」
「おい!」
………………
短剣を素早く正面の奴の首に投げ思い切り走り股の間をすり抜けた。向きを変えそいつが離した剣を走りながら掴み残りの二人を二つの剣で同時に倒した。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
初めからこれのほうが楽だ。
俺は二本同時に剣を握り残りの輩を殲滅した。途中、叫び声が聞こえたが聞き取れなかったと言うより耳に入ってこなかった。
「ま、ま、魔獣だ!」
「頭!!あいつ目が、目がっ…ごっ」
「怯むな!っんがっっ」
後は余り覚えていない、ただただ作業が終わった。さっきの冒険者が気になりの死体を見に行った。
やはり、全て剥ぎ取られていた。奴らが来た方角へ足を進めると集落のような場所があった。
「誰だ!」
持っていた物をごろんとそいつの前に投げた。
「今さっき冒険者から剥ぎ取った防具一式返せ」
「かかか、頭!!!」
カッとなり飛びかかる男は地面に倒れた。
それを見た集落にいた女達が慌てて持ってきた。子連れもいた。
全部は持てないから持てるだけ持った。
「後は持てないからいい。俺を追ってもいいが来たら殺す、女、子供も容赦しない」
一人の女が走りだし剣を振りかざしたがすぐに床に倒れた。お前らの生活のしのぎだってことは分かるがこれは職ではなくただの人殺しだ。
「見せしめではない。今ここで全滅させてもいい」
「ごめんなさい!!ごめんなさい!殺さないで!」
「いい、言葉はいらない。人を騙して殺して剥ぎ取るな」
「ごめんなさい!!」
何に対しての謝りだ。
「1.2年前……ここに三人の……いや、何でもない。じゃあ、宣言通りだ。追ったら殺す」
俺はまた冒険者の元へ戻った。穴を堀り防具を身に付けさせ何とか埋めた。全身血まみれのどろどろだった。
夜遅く帰り依頼所に戻ると討伐依頼者が盗賊で罠だった事、組んだ奴が殺された事を伝えた。集落壊滅は国の仕事だから俺には関係ない。
武器を買い服を新調しマントも変えた。
「兄ちゃん、剣二本も買うのか?安くするよ!」
「ありがとうございます」
俺にもセルロ達みたいな冒険者仲間がいつかできるだろうか……
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
イタズラ後輩と堅物上司
凪玖海くみ
BL
堅物で真面目な会社員・真壁尚也は、いつも後輩の市川悠太に振り回されてばかり。
そんな中、ある出来事をきっかけに、二人の距離が少しずつ縮まっていく。
頼ることが苦手な尚也と、彼を支えたいと願う悠太。仕事と日常の中で繰り広げられる軽妙なやり取りの果てに、二人が見つけた関係とは――?
職場で繰り広げられる、不器用で心温まる大人のラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる