20 / 66
インセット編
7 告白
しおりを挟むソードはよく眠っていた。おそらく頭が容量超えで休みたがっていたのだと思う。頭にキスをするも起きる気配はなく目を覚ましたのは数時間後だった。
「起きた?」
頷く。
「じゃあ、ご飯食べよう」
俺に言われるまま行動をする。ご飯を食べて片付けてまた椅子に座わりずっと外を眺めている。飽きることなく一日中。声をかけなければ何もぜず見ている。
ソードに好きな本を持ってこさせると2.3冊のうち必ず一冊はあのお菓子の本が入っていた。
その本を繰り返し読む。
俺が泣いた場所は特によく見ていた。
庭を眺めているソードに俺は薬草を摘んできてと頼むと名前を言っただけですぐ摘んできてくれた。
何回か頼むといつからか自ら庭にでるようになった。ただ、座っているだけだがその内に木や花に触れるようになった。
「ソード、おやつ」
こうやって声をかけるが来る時もあればこない時もあった。こない時はだいたい花や草などをずっと見ていた。彼なりに興味のある物の追求の時間だと思いほおっておいた。
今日は来てくれたと思ったら袖を引っ張られ連れて行かれた先は薬草の花が咲いている場所。何かを訴えたかったみたいだが俺は汲み取るのに時間がかかった。
ソードが身振り手振りをした、それでもわからないと地面に絵を描いた。全てはわからなかったが毎日見ていた花が咲いて、その近くに新しい芽がでてくる。そんな感じだったと思う。最後はにこりと笑った。
彼の記憶は奥深くに沈んでしまっている。呼び起こせばここの記憶はそのうち消えてなくなるだろう。俺にとっては良いような悪いようなだがいつかこんな日もあったと思い出すよ。
数日過ぎた夜
いつものように寝ようと布団に入るとソードが俺を見た。もじもじしながら一生懸命言葉を出そうとしていた。
「ぁ…ぅ…ぅ…」
頭を撫でて黙って見つめた。
「ぶ…ぶ、ブレ…イク…」
「ん?」
「あ、あの、あの…あ…」
「ゆっくりでいい」
ソードの気持ちを落ち着かせるように頭にキスをした。背中をさすりじっと待つ。
一度深呼吸をするとポンっと言葉が吐き出された。
「ほ、本、冒険者に、なりたいって」
「お菓子の本?」
「うん、いろんな所、行って、いろんな、お菓子、食べた、いって、思った」
「へーソードは夢が叶ったんだね。凄いな」
なぜか首を振るソード。
夢は叶ってないってことか?
「俺、おれ、あの本の、隣に、ブレイクの書いた本置き、おきたい」
「ソード……」
「一緒、一緒に、ブレイクと、本、作りたい」
「ありがとう。作ろう」
ソードが俺に必死に伝えたかったのは自分が冒険者になるきっかけと俺と本が作りたい事だった。
その想いが嬉しくて今も俺の中で宝物の一つになっている。
その夜から話すことができるようになったソードだが、ソードの本当に欲しいものはまだわからないままだった。まずは伝えたい気持ちが戻って来てくれて良かった。
「紙と、書くもの、くだ、下さい」
渡すと絵本の魔獣を細かく模写した。隣には特徴を書き添えて。誰から見てもわかりやすくかかれた魔獣だった。
「上手だね」
何枚か書き終えるとソードが思い出したかのようにしゃべる。
「家に行けば、もっと、いっぱい書いたやつあるよ。道具もある、あるから、もっとちゃんと書ける。俺、こいつと戦った」
「俺もそいつと戦った事があるよ」
「ブレイクも!?」
「ああ、冬季になりかけた時だったかな」
「……続きは?」
「ん、続き?」
「その時の話、してくれるんでしょ」
「ああ、良いよ」
話をするとソードは興味深く聞いていた。次の日もまた次の日もインセットの話を聞きたがった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
俺と父さんの話
五味ほたる
BL
「あ、ぁ、っ……、っ……」
父さんの体液が染み付いたものを捨てるなんてもったいない。俺の一部にしたくて、ゴクンと飲み込んだ瞬間に射精した。
「はあっ……はー……は……」
手のひらの残滓をぼんやり見つめる。セックスしたい。セックスしたい。裸の父さんに触りたい。入れたい。ひとつになりたい。
■エロしかない話、トモとトモの話(https://www.alphapolis.co.jp/novel/828143553/192619023)のオメガバース派生。だいたい「父さん、父さん……っ」な感じです。前作を読んでなくても読めます。
■2022.04.16
全10話を収録したものがKindle Unlimited読み放題で配信中です!全部エロです。ボリュームあります。
攻め×攻め(樹生×トモ兄)、3P、鼻血、不倫プレイ、ananの例の企画の話などなど。
Amazonで「五味ほたる」で検索すると出てきます。
購入していただけたら、私が日高屋の野菜炒め定食(600円)を食べられます。レビュー、★評価など大変励みになります!
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる