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ドルメンの館
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しおりを挟む俺に襲いかかろうとした二人は残念そうにした。みるみるうちに羽としっぽは無くなりさっきの身形になる。
「「ずるい!」」
二人が声を揃えて男に言う。
「そんな容姿をしたらニオが怖がるじゃないか~脅すお前達が悪い。それに俺の客人だろ?」
「違いますよ。電話を借りに来たんです。早い者勝ちです。本当なら私の物です」
「お前が対応したからってお前の物じゃない」
また、二人は睨み合う。
俺は訳がわからなくなる。
「あ、あの…ドルメンさん?」
「ニオ、自己紹介がまだだったね。俺はこの家の家主スワロフ=ドルメン。今日から宜しくね。この二人は使用人で眼鏡をかけたのが執事のモノゴで体格のいいのが護衛のオクタだ。怖がることはない」
「はぁ…あの、それより俺帰らないと友達が」
「帰れませんけど」
「は?」
「お前はスワロフ様に名前を教えただろ」
「はい……?」
「この館に入った者は自分の名前を知られると帰れなくなりますって書いてありますよ」
何いってんの?
「玄関前に書いてあっただろ?」
急いで玄関前に行く。
あった。
全然気がつかなかったけど確かに看板に書いてある。
【この館に入った者は決して
自分の名前を知られてはならない
帰れなくなります ドルメンの館】
「ほらな、ちゃんと書いてあるだろ。見たのに入ったんだから仕方ないよな」
「私共も家に入られた以上はお名前を聞きますし。悪くないです」
二人は当然のように話したが俺にはさっぱりだった。
「名前を教えたからってなんなんですか。帰ります!」
俺は門へ走り開けようとするがびくともしない。電動か、重くて動かない!
「門を開けてください!!」
背後に現れたスワロフが「どうぞ」と言って軽々と門を開けるが出れない。それ以上進めないのだ。
「何で!何で!出してください!」
怖くなり必死に叩くが透明な壁になっていて出れない。へたへたとその場に座りこむ。そんな仁緒をスワロフが持ち上げた。
「とりあえず、お前達は下がってろ。優しい俺が説明する。それでも暴れるなら…」
「「わかりました」」
二人はさっと何処へいなくなってしまった。
館に戻るとあの豪華な扉の部屋へ連れていかれた。椅子に座わらされるとテーブルに暖かいお茶を用意された。
とても飲む気分にはなれない。
「俺はどうなるんですか……」
「契約を交わしてしまったから破棄するまでは有効かな」
「何の契約ですか…」
「自分の名前を館の者に知られればその家朽ちるまで暮らすと言う契約だよ。名前を知られた時点で成立となる。まさか、本名を言うとはな。看板は知らなかったとは言え君の不注意だ。この契約はドルメン家がしている契約だから私も解くことができない、諦めるしかない」
「暮らすって言うのは…」
「私と暮らす」
「それ以外は?」
「何も。ただ暮らせばいい。それから一番初めに名前を聞き出せた者がその人と主契約の印が付けれるんだがそれの説明はまた後にしよう」
「それより友達を探さないと…」
「君は友達を探しに来たみたいだが友達も君を探しているかもね。果たしてどっちがいなくなった方なんだろうね?」
え…俺が友達とはぐれて助けを呼んだと思ってたけど。友達はもうとっくに警察に行ってるかもしれない?
てことは、俺…
「死んだんですか?」
「さぁ、そこまではわからない。ただ、ここにこれる人は稀でね。君は数百年ぶりの来客者という事かな」
「数…百年…貴方は何者なんですか…」
その質問をすると部屋はだんだん暗くなり灯りが消え黒い影が大きくなる。
部屋いっぱいに広げられたは
黒い羽に
黒い捻れた角
そしてお尻からは黒いしっぽが生えていた。
俺の顔に近づき舌舐めずりをすると少し牙が見える。目の前の美しい顔が余計に怖さを引き立てた。
「あ…悪魔…」
「わかってるじゃないか。俺は悪魔だ」
「ひぃぃう…」
怖さのあまり、声がひきつる。
「そんなに怖がらなく良い。取って喰ったりしない。ただ、あまりにも怖いなら俺が従順の呪文をかけてやろう」
そう言うと仁緒の両頬を掴み目を合わせた。
目が光り眼球をとらえる、そして呪文を唱えた。
じっと見つめる。
「ひぃぃ」
「ん」
「うぅ…?」
「ん?」
「な、何なんですか…」
「おい!呪文効いてないか?」
「何の事ですか」
「まて、もう一回だ!」
「……何ですか、さっきから」
「おい!!何で効かない!」
「そんな事言われても……」
初めてだ……
「目が光るの辞めてもらっていいですか?ビーム出てきそうで怖いんですけど。後、眩しいです」
「モノ!!オクタ!!」
「「はい」」
二人はすぐに部屋に入ってきた。
悪魔の姿の主に跪く。
「ニオに呪文が効かない!」
「まさか…」
「あり得ない」
「確かだ。何度やっても無理だ」
数百年生きてきたがこんな事は初めてだった。いつもなら呪文をかけて従わない相手を全て従わせてきた。人間も例外ではなかった。
だが仁緒には全く効かない。
「主の印はどうですか?」
「まだ、していない。どこに付けるか迷っている」
「迷うとは珍しいですね」
「確かに」
スワロフは呪文が効かないならと別のものを試す事にした。
「ニオ、こちらに」
仁緒はスワロフに言われ少し広い場所に立たされた。
目の前で手を数回払うようにされるとハラハラと服が落ち葉のように落ち素っ裸になる。
「な、何するんですか!」
「主印をつける」
一番恥ずかしい部分を押さえるもモノゴとオクタに腕を片方ずつ持たれスワロフの前で全て露になる。
「な!っ離せよ!」
「どこにしますか?」
「腹なんていいんじゃないですか?」
「う~ん」
「首はいかがですか?」
「う~ん」
「おかしいですね、いつもならすぐ決まるのに。どこかお加減でも悪いんですか?」
「悪魔にお加減なんて関係ねぇだろ」
「気分の問題です」
二人に腕をもたれ力を入れて外そうとするがびくともしない。
スワロフは顎に手を当て仁緒の裸をずっと舐め回すように見る。見られる仁緒は顔を横に背け早く終わることを願った。
「なんと言うか、全部なんだ」
「「全部?」」
「全部付けてもいい」
「さっきからお前ら何の話してんだよ!」
よくわからない話を三人だけでしていて自分だけ除け者扱いにされ腹立たしく思った。
「ああ~説明まだだったね。俺がニオという名前を一番に見つけたから主印を付けるんだけど、どこに付けるか迷ってる」
「しゅ、シュイン?」
「そのままの意味ですよ。主の印です。スワロフ様に名前を知られた貴方は主印を付けるんです。まぁ、付けられればわかりますが付けられると何処に居てもバレるんです。後は呼ばれたらわかると言うか。他にもいろいろ有りますが簡単に言えば主の持ち物になるみたいな。小さい頃に付けませんでしたか?自分の持ち物に名前を」
「俺は物じゃない」
「まぁ、そうなんですけど。似たようなものです。で、何処に付けるんですか?」
「う~ん、ピンとこないな」
「俺がつけてやろうか?」
「何でお前が付けるんだ。ニオは渡さん。付けるのは俺だが、お前らわかるか?」
いつの間にか二人も悪魔の容姿になりクンクンと匂いを嗅いで舌舐めずりをした。
「何となくになりますが私は首ですかね」
「俺は腹か?」
「お前達も曖昧だな」
「「確かに」」
「俺も反応はあるんだが複数になる」
「何処です?」
「舌、目、首裏、肩に、腰、下腹部、内太もも、」
靴を脱がせ靴下もとる。
片足を持つ。
「あと、足の裏」
「多いな」
「複数つけられると思うか?」
「今までした事無いですがどうなんですかね。もし一つしかつけれないなら、好きな所を選ぶのがよろしいかと」
「俺もそう思って迷ってる」
「「なるほど」」
結局よくわからない主印とやらはタトゥーみたいなものか?怖いんだけど。
「その、主印は……い、痛いのか?」
三人は一斉に仁緒を見た。
スワロフが嬉しそうに言う。
「痛くはないよ…ククク」
「本当だよな…?」
「本当だよ。ニオ~はぁ~怖がらなくていい」
こんなに何も知らない奴は初めてだ~
いいな~この顔~
「スワロフ様、顔緩んでますよ」
「だらしないな」
「ふん、お前らにはわかるまい。今日からニオは館の住人だ~歓迎しよう」
得体の知れない事が次々と起こる。怖くて仕方ないのにそれを不気味に笑う三人に仁緒が思わず言う。
「何なんだよ……お前ら…」
「「「悪魔」」」
こうして仁緒は名前を名乗ったがばかりにドルメンの館の契約住人となった。
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