夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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83 帰宅

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「やっと家に着いた~」

ソードはベッドに倒れ込んだ。レイの実家から始まりソードの家までハードな旅行のような修行の様な数週間だった。

「レイさんも、お疲れ様でした。何だかんだ上手くいって良かったですね」

「まぁ、そうだな。いろんな人に報告できたしな。ロキもお疲れ」

「俺はついて行っただけだから、そんなには大丈夫でしたよ」

ソードは寝ていたベッドから飛び起き、突然自分の荷物に駆け寄り道具を取り出した。

「あ、それ。そんな沢山の投げナイフ買って何に使うの?」
「これ、凄い便利なんだよ。あ、そう言えばやることあった。今からちょっと出掛けてくる!」
「え、今!?」
「すぐ戻る!」
「荷物まだあるぞ~」
「後でやる!」

投げナイフを置いて何やら大きな袋を持って外へでた。暫く経つと袋を空にして部屋に戻ってきた。今度は外のデッキへ行き投げナイフを研ぎ始めた。
レイがソードの荷物を片付けながら話しかけた。

「何してきた?」
「罠作ってきた。捕まったら見に行こうぜ!」
「へぇ~」
「動物?」
「動物」

20本ほど磨き終わると試し投げをしに外へ行く。
エイエイ、と木に向けて投げる。

「お前らも来いよ!」

「へぇ~楽しそう!」
「俺もやりたい!」

「どんな感じて投げてもいいよ」

ソードは3本づつ両手に持ち、握るナイフを勢いよく投げた。タタタ!タタタ!と木にナイフが刺さる。刺さったナイフを木から外し二人に渡す。

「いろいろ試しながらやるといいよ。お前ら手が大きいから4本とかいけそう」
「俺、この量のナイフ投げるの初めてかも。意外と難しいな、一気に投げるの」
「俺も!!楽しい~!」
「馴れだな。使えるし、ロキには特に良いかもな」

暫く遊んでいたら風に紛れ鈍い音がした。

「早かったな、罠かかったから見に行くぞ」

「「了解」」

家から離れた場所の大木の枝に二体の見た事のある服装が逆さ釣りにぶら下がっていた。

「なっ!?お前ら!!」

「「あ、レイ様!」」

「お前ら属が何しに来たんだよ!!」

「ルーベン様より仰せつかりまして」

「はぁ!?もう狙わないんじゃないのかよ!」

「はい、お命は狙いません。あ、これソード様に」

属はぶら下がりながら器用に箱包みをソードに手渡した。素直に受け取り中身を開けると中にはお菓子と手紙が入っていた。お菓子だけ貰うと手紙は読まずにレイに渡した。

「しかし、上手く引っ掛かってくれたな。見事だ」
「「ありがとうございます!」」
「それ、誉めてるの?」
「誉めてる」

ツンツンと属をつついた。

「レイさん何て書いてあるんですか?」

「だー!!!!」

ー 親愛なるソード君へ ー

暫くは君と過ごした時間を思い出しながら過ごす予定だが、研究が一段落ついたら「約束の時間」を取って貰えないだろうか?

レイには内緒で会いたい。

君の好きなお菓子を持たせたから良かったら食べて欲しい。できれば私を思い出して食べてくれると嬉しい。

            ー ルーベン ー

「ソード、そのお菓子食うな!!!」

レイは手紙をビリビリに破いて捨てた。ロキは苦笑い。

「え?なんで?」
「いいから、食うな!!!」

「おい、お前ら無傷で帰れると思うなよ!」

レイは属を木にくくりつけ、投げナイフを取り出した。

「さっき、ソードに教えてもらったばかりだ。いいか、動くなよ」

「「ヒィ~!!!」」

ロキはロキで、もう一人を木に縛りレイと同じく投げナイフの練習をしていた。いくら命を狙わないと言われても、自分たちの生活エリアに近づき入ろうとしたのを容認できるわけもなく。ほっとけば家まで来ていたと思うと許せなかった。

「早速、役に立ちましたね。…まさか部屋選びに外に行ったのはこれの為だったとか?ふふふ。あー動かないで下さい」

「そうだよ~」

ロキは冗談のつもりでソードに言ったが、どうやら本当だったらしい。レイとロキは目を合わせ、まだまだ追い付けないなとお互い苦笑いした。

「てか、いつから居たんだよお前ら。早すぎるだろ、俺ら今日ついたんだぞ」

「初めからだよな?」

「「え!?」」

「「はい!」」

「マジか…ついてくんなよ。ソードも撒けば良かっただろ」

「まーな、でも結局バレるしな。ガルシアに顔出すって事は知ってるし、ルーベンが簡単に帰すなんて何かあるに決まってる」

「確かに…」

「だったら捕まえた方が早い。手土産くれたし、モグモグ」

「あー!だから、それ食うなよ!!」

「おいしいぞ、折角だしお前も食う?」

「要らねーよ!!」

ついでに言うとレイの家では警戒をしていてソードとはキスしかできなく二人はイライラしていた。ウェザーを出て宿についてもゼンテの家に着くまで駄目だと言われて全くさせてもらえなかった。新婚早々、お預けを食らったその理由がこれだとわかり二人は許せる筈もなかった。

「レイ、ロキその辺にしとけよ。こいつらも仕事だし」
「全然、気が済まない」
「俺もです」

やれやれと思いソードが紐を外してやり、ようやく解放された二人にはまだやることが残っていた。

「あの…」

「何だよ!ソードが許したんだから、さっさと帰れ!」

「ソード様…ルーベン様にお返事を…」


ブチ。


ソードとロキが顔を見合せダッシュで逃げる。

レイの周りが一気に冷える。両手から氷魔術がピキピキと冷気とともに吹き出し次の瞬間、逃げる属めがけ大声と共に強大な氷魔術が放たれた。

『ダメに決まってんだろー!!!』

ゼンテの家に少し早い冬が訪れた。
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