夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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56 ニケ

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 昨日どこまで思いだしてたっけ昔の事…

 いつの間にか何で叩かれてたのかわからなくなって。魔力が自分から引っ込んだみたいになってて。無くなった?ってなったんだよな~

 一週間しても、数ヶ月しても魔力がでなくなって、両親は泣いて喜んでたな。数年ぶりに、自分の部屋に帰ってきたけど部屋が明るすぎて眩しかったの覚える。そういや、暗い所に居すぎたせいか目が悪くなってたのはかなり面倒だったな。それからは剣術一筋で、両親の進めるヒューズ学校に金を積んで入ったんだっけか。

「ソード、ソード?」

「ん?」

「大丈夫?やりすぎた?ゴメン」
「うんん、大丈夫。明日でるか」

「うん」

「眠い…」
「うん」

 あの後ロキにされるがまま抱かれたソードだった。今はロキの腕の中におさまっている。ロキの体温が暖かくて眠気を誘う。またゆっくり瞳を閉じてソードは眠りについた。レイも戻りその日はソードの体を労いながらゆっくり過ごした。そして、結局なぜ焔目がでたか誰もわからないままリッカに着いた。


 石塀が続いた先には今は開きっぱなしになっている石門がありそれを抜けるとリッカに入る。この門はソードが生まれるずっと前からありリッカの変わらない物の一つだった。

ソードの話した通り、リッカには兵士や剣術士を多く見た。それにちなんだお店が多く見うけられた。

「これだけ剣術士や冒険者の武器があるならソードが詳しくなるのよくわかる」

「あぁ、そうかも。ジャンクを含めいろんなのあるし、そっから探すのも楽しいかもな」

「セドリックが見たら喜びそうだな」

「だな、セドリックはレイの冒険者仲間な、ロキ」

「へぇーレイさん他の人と組んでたんですね」

「まぁ、たまに一緒に組む感じだったけど。あいつが居たからソードに会えたしな~懐かしい」

「そうなんですね」

「機会あったら紹介するよ」

「はい、是非」

□□□

 街から離れた閑静な場所に木々に囲まれぽつんと白色の建物がある。建物へ入ると大きな中庭があり、花壇で彩られた噴水やテラス等が設けられていた。

 テラスには一人の男性が膝掛けをして椅子に座っていた。ソードは椅子に座る男性に走り寄って声をかけた。

「ニケ!」
「ソード!」

「「久しぶり~!!」」

 二人はハグをして喜びあった。ソードはすぐに自分が支えになりハグをするために立ち上がったニケを椅子に座らせた。

「ソードは元気?」
「うん、ニケは大丈夫?」
「ぼちぼちかな、もう仕事は辞めたけどね」
「そっか」

 ソードと同じく黒髪の黒目。高身長の割に痩せたその男性は二ドル=ケイシー。ソードの友人で魔病に侵され今はこの閑静な病院で療養中。

キレイな中庭のテラスは木で日陰になっていて丁度良かった。

「ニケ待ってね、今から二人連れてくるから」
「うん」

ソードはレイとロキをニケの前に連れてきた。

「こっちがレイで、こっちがロキ」

「初めてましてソードの友達の二ドル=ケイシーです。ソードとレオにはニケって呼ばれてます」

「「初めまして」」

 ニコリと笑う笑顔が優しくて可愛らしく、つられて二人もニコリとした。机を四人で囲みニケのすぐ隣にはソードが座った。奥から職員の人がお茶を運び並べてくれた。それを見てソードはお菓子を取りだした。

「ニケ食べれるかわかんないけど、よかったら。食べれなかったらミミにあげて」
「わかった~いつもありがとう」
「ニケ、その膝掛けいいね」
「うん、ミミが選んでくれた。ソードも相変わらず可愛い髪型してるね」
「ありがとう~」

 ニコニコしながらお互いを誉めあう様子を見て、普段見ないソードの笑顔とニケに自然に甘えている態度に二人はびっくりした。まるで、恋人同士に見えるほどだった。

「そーいや、前にレオがうまいお菓子もってきてくれたよ。久しぶりに会ってビックリした。魔獣みたいに筋肉ムキムキだった」

「だろ?あいつ魔獣だと思う」

「あはは、だな。所でレイ君とロキ君はソードの友達?」

 二人はソードを見て「お前がちゃんと紹介しろ」と言う目で見てた。ニケも二人がソードを見るのにつられて顔を見た。

「なんだよ!皆で見るな!うぅ……今、付き合ってる人…」

「へぇー二人共?」

「…そう」

「そっか~いいね!二人とも宜しくね」

「「はい」」

 照れ怒りしたソードを横にニケは二人に微笑みかけた。二人はあまり驚かないニケにソードの友達だなと思った。すると、タッタッタっと軽い足音がした。「おとうさん~!」と小さな女の子がニケの椅子に駆け寄った。

「ミミご挨拶は?」
「んーはい。ミミ=ケイシーです」

ニケの一番上の娘だった。レイとロキは、よろしくねと言うと少し照れて後ろに隠れた。

「ミミ、ソード来てるよ」
「ソード!」
「ミミ久しぶり~」
「ねぇ、ソードむこういこ!」

と言って手を引っ張り噴水の方へ連れ出した。三人は手を振り見送った。

「ごめんね、ミミはソードが好きでね。いつも一緒に遊びたがるんだ」

「いいえ。俺達、ずっとニケさんに会いたかったです。ソードがニケさんの話をいつも楽しそうに話してくれるのでどんな人か知りたくて」

「そっか、ソードはね昔から可愛くてね優しかったよ。話してると凄く楽しくなるんだよ。しかも子供にも大人気」

「そうなんですね」

ニケはソードの昔の話しを教えてくれた。レイとロキはニケの話に耳を傾けてしばしの楽しい時間を過ごした。

「ふぅ…もっと話したいけど、時間みたい。ごめんね~ミミ~ソードを解放してあげて」

「「いえ、大切な時間ありがとうございました」」

ミミとソードがニケに駆け寄る。

「ソード、ごめんね。時間がなくて、二人を紹介してくれてありがとう~楽しかったよ」

「ううん、ニケこそ無理しないで。また来るから」

「うん、ソードの結婚式には出れそうにないから先にお祝い言っとくねー。ソードおめでとう、幸せにね」

「まだ結婚してないけど!!!」

「あはは、二人ともソードよろしくね。幸せに見えるけどお幸せに」

「「ありがとうございます!!」」

「じゃあ、ミミ行こうか。またね」

そう言い二人は手を振ってゆっくりテラスを後にした。途中ミミは「ソードけっこんする?」とニケに聞いていた。ニケは「そうだよ」と嬉しそうに返事をした。

「ニケさん、凄く優しくて可愛らしい方でしたね」
「だな、会えてよかった」

「うん、ニケは一番好きな友達」

ソードの嬉しそうな顔を見て二人も嬉しくなった。また、三人で会えたらいいなと思った。
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