夜の冒険者は牙をむく

かぷか

文字の大きさ
上 下
3 / 130

3 ソードとレイ ①

しおりを挟む

「またソード、フード被ってます」

「だな」

俺がソードと出会ったのは俺が18歳の時。まだ、冒険者として駆け出しもいいとこだった。

冒険者になるやつなら度胸試しに『夜の魔の森』と決まっていた。

 森の中は酷く暗く、寒い。上級者ですら森の3分の1すらいけないと聞いた。未開発で謎の多い森は危険区域に指定されている。許可無くして一般人は入れない。ただ、冒険者は別だ。国の依頼や討伐、調査の為に特別に許可されていた。

俺もその1人で、意気揚々と夜の魔の森へと向かった。もちろん度胸試しといえど、ちゃんと情報収集して討伐する魔獣の種類や弱点は調べあげていた。じゃないと、命がいくつ在っても足りない。

そーいや聞き込み情報で、まことしやかに噂になっていた話があった。『闇夜の者』だっけか。なんでも、夜にしか現れないそいつが魔の森を通ると魔物が避け、その漆黒の目をみたら黒炎で焼き殺されるだっけか?

魔物語りの様な話だが、会った事あるやつがいるだの話をした者がいるだのと噂されていた。
見たら焼き殺されんのに、どうやって話すんだよ。
と、そんな事を思いながら1体の魔獣を追いかけていた。意外とスタミナがあって足も速く、後少しあと少しと森の中へ引き込まれた。


奴を見失うまいと、森を深追いした。

「やべーな入りすぎたか」

帰り道はわかる。が、これ以上追うとヤバイと俺の脳が信号をだす。幸い、今日は満月だ。森が少なからず明るいし悩む。

「帰るか、命あっての冒険だしな」

悔しいが仕方ない。

向きを変えて戻ろうとした瞬間、黒い生き物が木々の間から風を斬るように通り過ぎていったのが視界に入った。

何だ!?人か!?魔獣は取り逃がしたが、もしかしたら何かレアなのが見れるかもしれない。後ろ姿は人!好奇心が勝ってとまらない。

冒険者なら見てみてぇ!
あの早さ、俺より強いのは間違いない。どうする、追うか。

迷ってる暇はねぇ!今逃したらダメな気がする!


少し追いかけた所で、開けた場所にでた。あの光景は今でも目に焼き付いて忘れられない

12…いや13体の魔獣の群れだ。思いがけない光景に俺は隠れるのも忘れ、木と木の間に立ち竦んでいた。

追うんじゃなかった、俺は心底そう思った。魔獣の何体かは俺に気づいて唾を引いていた。


「ぐっ…」

と唇を噛みしめた瞬間。

「14体か?」

どこからか声がした。
そうしたらものすごい早さで左右交互に魔獣に斬りかかり、バタバタと倒していく。倒れた魔獣を足蹴に次々斬りかかった。

早くて目で追えね!

12体目で剣がパッキンと軽い音をたてて折れた。
折れた刃先を無理やり足で押し込み倒した後、13体目に向かった。

おいおい、剣折れたぞ!やべーんじゃねぇの!

そんな俺の不安をよそにそいつは折れた剣を使い、荒々しく目を突いて倒した。その顔をみた瞬間、心を奪われてしまった。

その目の色は焔色に光り、生き物の様に輝いていた。
それはあまりにも美しすぎて、思わず俺は自分を見て欲しくて声をかけた。

「おぃ」

間抜けな掛け声。だが、こちらをハッキリ見つめた焔色の目が俺をとらえて近づく。堪らなく、手を差しのべようとしたら

「わりぃ」

といって

俺の左に納められた剣を抜き取り、斜め背後から出てきた14体目の親玉を見た。そして俺の肩を足蹴にして空中へ飛び、脳天から突き刺した。大量の血が吹き出しさらにトドメとして、2.3回ブスブスと刺した。

魔獣の肩に乗り満月をバックに、焔色の目が美しく光続けていた。俺は完全に見惚れていた。


「この剣すげー斬れるな」

といって血みどろのついた剣を振り、血を払い俺に近づいてきた。戦ってる時はよく分からなかったが今なら月光でよく見える。

黒髪に黒いマント。上は白のシャツ。ベストは黒に所々シルバーや黒の刺繍。胸元辺りのポケットには…眼鏡か?パンツとブーツも黒い。

背は俺より低いか。観察すればするほど知りたくなる。

焔色の目がまだ輝いて、見惚れた俺に剣を差し出してこう言った。

「すみませんでした!!」

「は?」

一体何を謝ってるのか「???」過ぎて剣を取りじっと目を見つめていたら、その顔がだんだん青ざめていき焔色の目は黒色に落ち着いた。

そいつは急いでその場から逃げて行った。

「……くそぉ、逃げんなよ。お礼も言えてねぇ」

何とも言えない悲しい気持ちになった俺は、倒れた魔獣へ目線をむけた。素材になるものを集めれるだけ集め月光の中、魔の森を後にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

【完結】もっと、孕ませて

ナツキ
BL
3Pのえちえち話です。

【完結】彼女のお父さんに開発されちゃった自分について

七咲陸
BL
自分には可愛くて美しい、可憐な恋人のレイチェルが居る。そのレイチェルの父である彼は自分を好きだと言う。自分も彼に惹かれてしまい…… ■侯爵家当主で彼女の父×子爵家子息 □やまもおちもいみもありません。ただただひたすらに作者の趣味と性癖を詰め込んだだけの話です。 ■広い心でお読み下さい。終始ヤッてるだけです。 □R-18です。自己責任でお願いします。 ■ちゃんとハッピーエンドです。 □全6話

元寵姫、淫乱だけど降嫁する

深山恐竜
BL
「かわいらしい子だ。お前のすべては余のものだ」  初めて会ったときに、王さまはこう言った。王さまは強く、賢明で、それでいて性豪だった。麗しい城、呆れるほどの金銀財宝に、傅く奴婢たち。僕はあっという間に身も心も王さまのものになった。  しかし王さまの寵愛はあっという間に移ろい、僕は後宮の片隅で暮らすようになった。僕は王さまの寵愛を取り戻そうとして、王さまの近衛である秀鴈さまに近づいたのだが、秀鴈さまはあやしく笑って僕の乳首をひねりあげた。 「うずいているんでしょう?」秀鴈さまの言葉に、王さまに躾けられた僕の尻穴がうずきだす——。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

処理中です...