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二つの領土

3 ジーバル ②

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 勢いよく扉が開き側近が嬉しそうに入ってきた。

「ソルベ様!!」

「なんだよ~」

「ナグマから要望書による詳細文章が届きました!」

「なんだと!!」

 俺は思わず座っていた椅子から立ち上がった。

「見せろ!!」

 確かにそこには拝謁許可についてと書いてありフィグルのサインがしてあった。

 やまとはいつ来るんだ?
 結構先だな。俺の訪問が先か。

 内容は城の重要人物との拝謁許可と領土民への御披露目となっていた。それとは別に俺にだけ見える内密文書がついていた。

「やまと様の拝謁許可ですよね?」

「ああ」

 内密文書なんて珍しい、封を開けるとそこには願ってもない松君さんの訪問の許可が下りたことが記してあったが。

 松君さんは…内密訪問?

 詳しいことは直接話すとしてある。会うまでは口外禁止か。やまとと一緒に来るわけではないのか。松君さんは途中合流で一泊のみ…時間の都合なら残念だが仕方ない。なにはともあれ二人に久しぶりに会えるのは嬉しいことだ。聞きたいことや案内した場所がたくさんある。

「すぐクラムに連絡を取り詳しい説明や条件を会議する。どの報告よりこちらを最優先とする。まだ民には公表するな。確実な訪問が決まってからだ」

「かしこまりました。ソルベ様、良かったですね」

「ああ…」

 けどなんで急にしかも二人ともの許可がでだんだ?やまとが来るならならわかるが松君さんも許されたのは意外だった。まぁ、来てくれるなら何でもいい。

 別日にライムと一緒にフィグルと打ち合わせとなったがやまともついてきていた。久しぶりに見たがナグマ語を大分理解できるようになっていた。内容に異議はないがフィグルから出された条件はなかなか厳しいもので特に松君さんの方は徹底していた。

「松君さんの側近はソルトだけか?」

「ああ、あとは顔の知れた最高位護衛二名をつける」

「少なくないか?」

「これでいい。松君さんは公に公表することはない。今後も折を見てからしか会わせる予定はない。だから、そちらに訪問することは伏せて欲しい」

「だから内密文書だったのか」
「なぜそんなに松君さんの公表を避ける」

「一つは異世界人というのをナグマで伏せることにした」

「理由はやはりうちか」

「ああ、全てではないがな。松君さんはやまととは違う。あちらでの生活が主である。少しでも何かあれば全てに影響しかねない。狙われる可能性も含め公表はしない」

 やまとが付け足した。

「異世界人ってだけでも狙われるみたいだから、ナグマ城の調教師って事にしてナグマ人にしました。職業は俺が考えました!」

「もう一つは調教師という職業を御披露目しろというやつがでてくる。してもいいのだがこの職業は現在ソルト本人のみに発動している。だからソルトの許可がでないと無理だ」

「そうか、松君さんがナグマ出身の調教師だというのはこちらの情報でも入ってきている。こちらで暮らし始めたのかと思ったが違うのだな」
「同じくだ、うちは職業交流の要望書も提案したそうだがそちらは今回は無しってことだな」

「ああ、先ずは二領土に行くということだけだ。それと松君さんはナグマで知り合ったやまとの友人だ」

「「わかった」」

 更にクラムが付け足すように横から話した。

「まずは、お二方の領土に慣れてもらいます。気に入ってもらえれば王のサインのみの訪問が可能といえます」

「そしたら、松君さんが良いって言えばこれからもっと簡単に会えるってことか?」

「可能です。その為に同じ顔ぶれの護衛と側近をつけていただくというのが最低条件とないます」

「「わかった」」

「松君さん専属の側近をこちらで用意するのはわかったが情報は事前に全てそのソルトに渡すのか…」

 側近の情報は基本的に重要事項で各領土公表はしない。自領土の機密も知っている彼らは、フィグとの信頼関係が無いというわけではなく簡単には頷けない部分があった。これはフィグに公開するのではなく側近に公開するのだから。

「これが無理なら訪問は無しだ」

「松君さんが異世界人と知り得る人は極力減らしたいです。ですが、守る方には知っていただかないと難しい事もありますからソルトさんが知らなければならない情報です。ですからこの条件は必須です」

「…そうか」
「側近の情報とはなかなか難しいな」

「多分、性癖知りたいんじゃない?」

「どういう事だやまと?」

「ソルトさんは物凄く松君の心配しててとってもとっても大切にしてます。何故ならナグマに来る度に松君の隠れファンが増えてるからです!松君を好きになりそうな人は駄目ってことだと思いますよ」

「うーん、難しいな。性癖なんて聞いたことないぞ」
「俺もだ、何となくしかわからない」

「ソルトの許可が下りた以上松君さんには絶対的に安心してもらわねばならない」

「ならば城での護衛配列の連携をはからせるためにナグマ城に行かせ同じ訓練を受けることでソルト自身に側近を知ってもらうというのは可能か?」

「可能だが」

「もしソルトが気に入らなければ遠慮なく弾いてもらって構わない。そちらの側近のおめがねにかなわないのなら意味がないからな」

「わかった。許可する」

「なら俺の領土もそうさせてもらう。お前のところのソルトに認められればいいんだな…正直かなり難しいがなんとかする」
 
 二人は頷くとフィグも頷き交渉成立となった。

「やっと、やまとと松君さんが来てくれる。本当に待ちに待ったんだぞ」
「そうそう、フィグルが独り占めばかりするから」

「松君が行くって行ったから俺もってなって今回フィグの許可がおりたんだよね!」

「お二方ならびに領土民の方には大変お待たせいたしました。やまとさんと一緒になら松君さんも心強いですから」

「ちなみにやまとにも側近をつけるからな」

「な!!」

「当然だ」

「それは許可しない!!」

「お前がいれば要らないのがわかるがこちらとしては付けないわけにはいかない。気にするな、飾りだよ飾り」

「おぉー!俺にもついに専属側近が召喚されますか!」

「お、やまとは嬉しいのか?なら俺のところも気の合いそうなのつけてやるな!!」

「わーい!」

「やまと、喜ぶな!!」

 その後、クラムと細かい打ち合わせをし解散した。こうしてそれぞれの領土の訪問準備が始まった。
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