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102章 ジャークの最期

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 102章 ジャークの最期


 
 俺は焦っていた。

 もう日が傾いてきたにもかかわらず、一向に決着がつきそうにない。

 決着が長引けば長引くほど、犠牲者が増えるだろうし、虫は休憩などはしないで攻撃をし続けてくる。

 もちろん一旦引くなどの駆け引きなどもしないで驚異的な身体能力で進み続けるのだが、こちらは昼夜を問わずに戦い続けることなどできないし、交代要員などもいないのだ。


 ドワーフ山脈の道に、虫たちの後ろから向かってきていた魔物の一団がもう直ぐ到着する。 また一段と激しい戦いになるだろう。 

 しかしすでに今日丸一日戦い続けているのだ。 夜が得意な魔物との戦いが夜に突入してしまう。 ここまで計算していたのだとしたらドゥーレクという男はどれだけ恐ろしく頭が切れる男なのだろうと思う。


 それに先日、ドゥーレクが率いる魔物の話しが出た時にディームが言っていた。

「我々は孤高の生き物ゆえ」だから普通に話そうよ「普段は群れずに個々で暮らしているのだが、魔物同士の交流はあるんだ。
 ワームやグールは知らないが、ガーゴイルやサイクロプスは結構気のいい奴らで、自分から世界の破壊に手を貸すとは考えられない。 それにもちろん俺もだが、他の魔物たちや妖精たちも彼らと戦うのは嫌だと思うぞ」

 きっと魔物たちもドゥーレクに操られているのだろう。



 もうすぐ魔物との戦いが始まるし、その後方にはレンドール国の兵士が続いている。

 なんとしても魔物同士の戦いは避けたいし、ましてや父の愛した国の兵士と戦うなど論外だ。 

 なんとしてもその前に決着を付けたい。





 初めにつけたドゥーレクの肩のキズは、いつの間にか傷口が塞がり、そう痛みも感じていなさそうだ。
 回復魔法は持っていないはずなのだが、何かで傷口を塞ぎ、魔法で痛みを感じないようにしているのだろう。

 俺の光魔法は少しずつだが確実にドゥーレクにダメージを与えているように感じる。
 しかしこちらも白魔法の結界だけではドゥーレクが放つ魔法を完全に防ぎきることは出来ず、魔法を食らうたびに回復をしてはいるのだが、どうしてもダメージが蓄積されていくのを防ぐことはできなかった。



 レイもジャークとの決着を早く付けようとしているのか、けっこう強引に接近戦を仕掛けている。


 少し心配だ。
 

「マージェイン様、よそ見しないでくださいよ。 貴方の戦う相手はここにいるのですから。 私たちの邪魔をするのは許せないですね」

 俺の視線がレイの方に向かった事に気づかれていた。

 その刹那、ドゥーレクからレイに向かって爆雷魔法が放たれた。


 レイは不意を突かれて避けるのが精一杯だ。


 レイがバランスを崩すのを見逃さず、ジャークがレイの喉元に咬みついた!  
 そして片翼を足で掴んでレイの動きを止め、喉に咬みつくアゴにグッと力を入れると、レイの喉から血が噴き出る。

「グググッ!!」と、レイから呻き声が漏れた。


「レイ!!」俺は思わず叫んだ。


 『大丈夫だから!!』という声が聞こえた途端、レイの足先にキラリと赤く光る鋭く長い物が伸びてきて、それをドスッ!!とジャークの鳩尾に深く突き刺さした。


「グエェェェェ~~~ッ!!」


 レイの爪をルビナで補強して長く伸ばし、鳩尾にある弱点の核を、今度こそ確実に破壊したのだ。

 余裕で見ていたドゥーレクが頭を抱えて取り乱す。



「ジャークゥ!!」


 ジャークはレイの喉元に咬みついたまま錐揉みして落ちて行く。 そしてジャークはフッと霧となって消えてしまった。 
 
 「わぁぁ~~っ! ジャークゥ~~~ッ!! うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 ジャークが消えた後、小さくなったレイがそのまま地面に向かって落ちて行った。 


「レイ!! わあっ!!」

 俺が追おうとすると、ドドドン!と爆雷魔法が放たれ、俺はレイが落ちて行った所とは違う場所に飛ばされ結界ごと地面にめり込んだ。


「貴方を決して生かしてはおきませんよ!!」



 その時、夕日に輝きながら大きな赤い塊が凄いスピードでレイの後を追って行くのが見えた。


『レイは任せろ!』

 夕日に反射して赤く見えたフェンリルだった。



「また!! またあいつか!! またあいつか!!」

 ドゥーレクはドンドンドンドン!と、フェンリルに向かって矢継ぎ早に魔法を放った。
 もちろん全て吸収されていくだけで爆発は起こらない。


 フェンリルはレイが地面に激突する直前に口で受けとめた。



 そして、チラリと俺の方を見ると、レイを口の中に入れたまま、ドゥーレクを一瞥することもなくそのまま飛んでいった。





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