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31章 探索魔法
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31章 探索魔法
翌日からフェンリルは、どこに行くにもついてくるようになった
という事で、いつもは知らん顔して寝ていた朝食にまでついてきた。
Sクラスの食堂の入り口辺りから、フェンリルは盛大に尻尾を振り出す。 どうしたのかと思いながらドアを開けると、アニエッタがすでに座っていて、サッサと自分からアニエッタの横に座った。
お前! アニエッタだと態度が違いすぎないか?!
「おはようございます!」
ガドルとザラはすでに食べ始めていて、二人は軽く手をあげて応えた。
ホグスはいつも遅いらしく、食堂で会った事がない。
朝は苦手らしい。
ちなみにガドルとザラは、以前は俺たちの向いの席に座っていたのだが、なぜか最近は遠慮して少し離れた席に着くようになっている。
先生方にまで気を使っていただいて、申し訳ない。
俺も当然のようにアニエッタの横に座る。
先日夕食を一緒にしてから急速に仲良くなっていて、今ではここが俺の指定席になっていた。
「おはよう」
う~~ん! 今日も可愛い!
「おはようございます。 今日はフェンリルさんも一緒なのですね」
当然のように俺とアニエッタの間に尻尾を振りながら座るフェンリルの頭に、おはようと言ってアニエッタが手を出した。
やばい! 咬まれる!!···えっ?······
また咬みつくかと焦ったが、フェンリルの野郎! 気持ちよさそうに耳を伏せ、盛大に尻尾を振りながら大人しく撫でられている。
この野郎!! アニエッタさんなら撫でていいのかよ!!
耳を伏せてこんなに気持ちよさそうに頭を撫でられるフェンリルは初めて見た。 まるで子犬のように顔をこすりつけたりまでしている! あり得ないだろう!
俺にも撫でさせろ!!·········どっちを?······
レイは、いつものようにミンミと食堂中を飛び回りながら遊んでいる。
飯は食わないのかよ!!
元々趣味で食っていただけだから、今は団子より花という事か?
レイにしろフェンリルにしろ、好き勝手で困った奴だ!······俺もだけど······
「今日はお天気がいいですね」
とりあえず話題を探す。
「本当に。 訓練日和ですわ。 こういう日は回復が大忙しですのよ」
「ハハハハ、雨よりは晴れている方が、気持ちがいいですから、みんな張り切るのでしょうね」
俺も回復してもらいたい·········
そこへ俺とアニエッタの朝食が運ばれてきた。 パンとミルクと野菜スープに、今日はラム肉だ。
アニエッタは早く来た時には俺を待っていてくれる。 当然俺も早く来た時には待っていて、一緒に食べる。
どちらが決めた訳ではないのだが、なんとなくそうなっていた。
愛の力ってやつ?······ならいいな······
「それより、ヨシュアさん達はアニエッタさんに迷惑をかけていませんか?」
アニエッタは驚いた顔で、大きく顔を横に振る。
「迷惑だなんてとんでもありませんわ。 いつも休憩時間になるとケガ人が殺到するのですけれど、ヨシュアさんたちがきちんと整列させてくださいますので、混乱もなくスムーズにいきますのよ。 いつも感謝していますわ」
彼ららしい······どこに行ってもそういう役回りのようだ。
少し、下心が見えないでもないが、そこはご愛嬌だな。
毎朝のこのひとときがたまらなく幸せだ!
しかし、楽しい楽しい朝食が終わったら、俺の部屋で勉強の時間が始まる。
朝食後、すぐにスーガとガドルが部屋に来た。
「今日は昨夜言っておったように、空間探索魔法と風探索魔法について説明しよう」
ガドルの言葉にフェンリルは聞く気満々だ。 いつもこれくらい素直ならいいのに······
「まず、空間探索魔法と風探索魔法じゃが、それぞれは性能が違うのじゃ。
風探索魔法は昨夜も言った通り屋内では相手にこちらが探知魔法を使っていることがばれやすい。
というのも風をそよがせて相手を探知するからじゃの。
屋外なら多少の風は気にも留めない。 というより風がそよいだくらいで敵の気配を察知するのは至難の業なのじゃ。
しかし問題は、この魔法では相手の気配とシルエット程度しか探知できんので、こちらが知らない者の気配を探るには難しいのじゃ」
ガドルは一息つく。
「じゃが良い所は感情を認識することができる事じゃな。
例えば殺気じゃ。 それを見つける事ができるというのは相手を絞り込む事ができるので、有利に事を運ぶ事ができるとい事じゃな。
それと、魔力の強さによっても違うが、広い者では探知範囲が数十キメルク以上は可能なのじゃ」
「「ほぉ~~~っ」」
フェンリルとスーガが唸る。
「今日の午後からザラに教えるように伝えておる」
「はい!」
「楽しみだな」
フェンリルとスーガは顔を見合わせ、うなずき合った。
「そしてシークの空間探索魔法じゃが、こちらは感情までは分からんが、相手のことが目の前で見ているようにはっきりと視える。 じゃから表情で感情を察する事は可能じゃ。
個人を視ることもできるし上空から街を一望するようなこともできるし、捜索範囲を探し回ることも可能なのじゃ。 たとえ室内であってもじゃ。
探索というより透視に近いかのう。
しかし、いくら魔力が強くてもせいぜい数キメルクしか探知は出来ないようじゃ」
「それでも数キメルクは可能なのですよね」
「そうじゃな。 それを広いとみるか狭いとみるかは使い方によるじゃろうな」
「はい」
「試しにやってみようかの。 レイ殿、できるか?」
「うん! 出来ると思うよ·········できた!」
ガドルはうなずく。
「どうじゃシーク殿、探索魔法を発動できそうかの?」
「はい。 多分」
「では、ホグスを探知してみなさい。 ホグスを思い浮かべるとやりやすいかの」
『探索魔法』···俺の視線が離れていく。
壁をすりぬけて隣の空き部屋を通りぬけ、ホグスの部屋に入った。 どうやらホグスはまだ寝ている。
俺は部屋の上からホグスを見下ろしていたが、ホグスがガバッと起き上がり、しばらくキョキョロしていたが、探索魔法で見下ろしている俺と······目が合った??
ホグスそのまま少し考えていたが、俺に向かってニッコリと笑ってきた。
「わぁ!」慌てて魔法を解く。
「先生、ホグスさんと目が合いましたよ」
そうなのじゃ、フォフォフォ! とガドルは笑う。
「この魔法は注意せんと相手にこちらが誰かまで分かってしまうのじゃ。 じゃから魔法が使える者には危険なのじゃよ。
次は探索範囲を広げてみようかのう。 町全体を視るようにして知り合いを探してみるがよい」
『探索魔法』···俺の目は街の上空にいた。
街ゆく人の一人ひとりの顔が認識できる。
フィンがいた! 白馬亭から出てきて、すぐ後ろからマルケスも出てきた。 凄い! 目の前で見ているみたいだ。
後でアニエッタさんをちょっと視てみよう!
「先生! マルケスさんとフィンさんが見えました!」
「フォフォフォ。 さすがにマスターするのが早いですな。 しかし······」
ガドルはコホンと咳払いをする。
「ゆめゆめアニエッタを視ようとするでないぞ。 彼女も魔法の使い手じゃから、すぐにバレると心せよ」
ヤバい!! 考えていることがバレバレだった!!
「そ······そんな事は考えてもいませんでしたよ」
ちょっと目が泳いでしまった。
『バカめ』
フェンリルに鼻で笑われた。
翌日からフェンリルは、どこに行くにもついてくるようになった
という事で、いつもは知らん顔して寝ていた朝食にまでついてきた。
Sクラスの食堂の入り口辺りから、フェンリルは盛大に尻尾を振り出す。 どうしたのかと思いながらドアを開けると、アニエッタがすでに座っていて、サッサと自分からアニエッタの横に座った。
お前! アニエッタだと態度が違いすぎないか?!
「おはようございます!」
ガドルとザラはすでに食べ始めていて、二人は軽く手をあげて応えた。
ホグスはいつも遅いらしく、食堂で会った事がない。
朝は苦手らしい。
ちなみにガドルとザラは、以前は俺たちの向いの席に座っていたのだが、なぜか最近は遠慮して少し離れた席に着くようになっている。
先生方にまで気を使っていただいて、申し訳ない。
俺も当然のようにアニエッタの横に座る。
先日夕食を一緒にしてから急速に仲良くなっていて、今ではここが俺の指定席になっていた。
「おはよう」
う~~ん! 今日も可愛い!
「おはようございます。 今日はフェンリルさんも一緒なのですね」
当然のように俺とアニエッタの間に尻尾を振りながら座るフェンリルの頭に、おはようと言ってアニエッタが手を出した。
やばい! 咬まれる!!···えっ?······
また咬みつくかと焦ったが、フェンリルの野郎! 気持ちよさそうに耳を伏せ、盛大に尻尾を振りながら大人しく撫でられている。
この野郎!! アニエッタさんなら撫でていいのかよ!!
耳を伏せてこんなに気持ちよさそうに頭を撫でられるフェンリルは初めて見た。 まるで子犬のように顔をこすりつけたりまでしている! あり得ないだろう!
俺にも撫でさせろ!!·········どっちを?······
レイは、いつものようにミンミと食堂中を飛び回りながら遊んでいる。
飯は食わないのかよ!!
元々趣味で食っていただけだから、今は団子より花という事か?
レイにしろフェンリルにしろ、好き勝手で困った奴だ!······俺もだけど······
「今日はお天気がいいですね」
とりあえず話題を探す。
「本当に。 訓練日和ですわ。 こういう日は回復が大忙しですのよ」
「ハハハハ、雨よりは晴れている方が、気持ちがいいですから、みんな張り切るのでしょうね」
俺も回復してもらいたい·········
そこへ俺とアニエッタの朝食が運ばれてきた。 パンとミルクと野菜スープに、今日はラム肉だ。
アニエッタは早く来た時には俺を待っていてくれる。 当然俺も早く来た時には待っていて、一緒に食べる。
どちらが決めた訳ではないのだが、なんとなくそうなっていた。
愛の力ってやつ?······ならいいな······
「それより、ヨシュアさん達はアニエッタさんに迷惑をかけていませんか?」
アニエッタは驚いた顔で、大きく顔を横に振る。
「迷惑だなんてとんでもありませんわ。 いつも休憩時間になるとケガ人が殺到するのですけれど、ヨシュアさんたちがきちんと整列させてくださいますので、混乱もなくスムーズにいきますのよ。 いつも感謝していますわ」
彼ららしい······どこに行ってもそういう役回りのようだ。
少し、下心が見えないでもないが、そこはご愛嬌だな。
毎朝のこのひとときがたまらなく幸せだ!
しかし、楽しい楽しい朝食が終わったら、俺の部屋で勉強の時間が始まる。
朝食後、すぐにスーガとガドルが部屋に来た。
「今日は昨夜言っておったように、空間探索魔法と風探索魔法について説明しよう」
ガドルの言葉にフェンリルは聞く気満々だ。 いつもこれくらい素直ならいいのに······
「まず、空間探索魔法と風探索魔法じゃが、それぞれは性能が違うのじゃ。
風探索魔法は昨夜も言った通り屋内では相手にこちらが探知魔法を使っていることがばれやすい。
というのも風をそよがせて相手を探知するからじゃの。
屋外なら多少の風は気にも留めない。 というより風がそよいだくらいで敵の気配を察知するのは至難の業なのじゃ。
しかし問題は、この魔法では相手の気配とシルエット程度しか探知できんので、こちらが知らない者の気配を探るには難しいのじゃ」
ガドルは一息つく。
「じゃが良い所は感情を認識することができる事じゃな。
例えば殺気じゃ。 それを見つける事ができるというのは相手を絞り込む事ができるので、有利に事を運ぶ事ができるとい事じゃな。
それと、魔力の強さによっても違うが、広い者では探知範囲が数十キメルク以上は可能なのじゃ」
「「ほぉ~~~っ」」
フェンリルとスーガが唸る。
「今日の午後からザラに教えるように伝えておる」
「はい!」
「楽しみだな」
フェンリルとスーガは顔を見合わせ、うなずき合った。
「そしてシークの空間探索魔法じゃが、こちらは感情までは分からんが、相手のことが目の前で見ているようにはっきりと視える。 じゃから表情で感情を察する事は可能じゃ。
個人を視ることもできるし上空から街を一望するようなこともできるし、捜索範囲を探し回ることも可能なのじゃ。 たとえ室内であってもじゃ。
探索というより透視に近いかのう。
しかし、いくら魔力が強くてもせいぜい数キメルクしか探知は出来ないようじゃ」
「それでも数キメルクは可能なのですよね」
「そうじゃな。 それを広いとみるか狭いとみるかは使い方によるじゃろうな」
「はい」
「試しにやってみようかの。 レイ殿、できるか?」
「うん! 出来ると思うよ·········できた!」
ガドルはうなずく。
「どうじゃシーク殿、探索魔法を発動できそうかの?」
「はい。 多分」
「では、ホグスを探知してみなさい。 ホグスを思い浮かべるとやりやすいかの」
『探索魔法』···俺の視線が離れていく。
壁をすりぬけて隣の空き部屋を通りぬけ、ホグスの部屋に入った。 どうやらホグスはまだ寝ている。
俺は部屋の上からホグスを見下ろしていたが、ホグスがガバッと起き上がり、しばらくキョキョロしていたが、探索魔法で見下ろしている俺と······目が合った??
ホグスそのまま少し考えていたが、俺に向かってニッコリと笑ってきた。
「わぁ!」慌てて魔法を解く。
「先生、ホグスさんと目が合いましたよ」
そうなのじゃ、フォフォフォ! とガドルは笑う。
「この魔法は注意せんと相手にこちらが誰かまで分かってしまうのじゃ。 じゃから魔法が使える者には危険なのじゃよ。
次は探索範囲を広げてみようかのう。 町全体を視るようにして知り合いを探してみるがよい」
『探索魔法』···俺の目は街の上空にいた。
街ゆく人の一人ひとりの顔が認識できる。
フィンがいた! 白馬亭から出てきて、すぐ後ろからマルケスも出てきた。 凄い! 目の前で見ているみたいだ。
後でアニエッタさんをちょっと視てみよう!
「先生! マルケスさんとフィンさんが見えました!」
「フォフォフォ。 さすがにマスターするのが早いですな。 しかし······」
ガドルはコホンと咳払いをする。
「ゆめゆめアニエッタを視ようとするでないぞ。 彼女も魔法の使い手じゃから、すぐにバレると心せよ」
ヤバい!! 考えていることがバレバレだった!!
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ちょっと目が泳いでしまった。
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フェンリルに鼻で笑われた。
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