隠し事は卒業する

ばってんがー森

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隠し事は卒業する

四限目

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「出席番号十一番、永峰」

「……はい」 

不服そうな顔で返事をした彼は、衝撃の事実を知る。

「え~とね、お前、俺の子供なのね」

「は?」

「認知してないだけ。あ、あと、自分のことをクラスのムードメーカーと自称してるけど、正直みんな嫌ってるよ。以上。で、次は……」

『永峰君』は混乱しっぱなしで、

「はっ?はっ?はっ?」

としか言っていなかった。しかし、自分でクラスのムードメーカーを名乗っていた事に、皆うんざりしていたことは事実な様であり、誰一人として『永峰君』に対しての擁護はなかった。『永峰君』はうなだれる様に机に顔を伏せた。

「俺はムードメーカー永峰。負けない……負けない……」

そう机に向かって言い聞かせていた。そんな彼を尻目に教師寺田は続ける。

「出席番号十二番、沼田」

「……はい」

『沼田さん』はあまり人前で目立つ人ではなく、いつも本を読んでいるか、漫画を描いている大人しい人だ。そんな特に問題なさそうな『沼田さん』にも何かあるのだろうか。皆、『沼田さん』に恨みはないが、ここまできたらクラス全員の秘密を聞くまでは帰れない。その様な謎の一体感がクラスを包み込んでいた。というよりクラスの半分以上曝露されているんだから、

(俺が、私が恥をかかされたのだから、お前らも……)

という「死なば諸共」の精神が優っていたと言えよう。

「沼田はとても周りが見えていて、空気も読め、頭脳明晰だ。素晴らしい!」

注意深く聞いていたクラスメイトには少し物足りなかった。が、続けて教師寺田は、

「お前のこっそり描いてるBL本、途中でふたなりになってるから修正しといたほうがいいぞ!」

教師寺田は前日TVで観た

《この先生が僕の才能を発見してくれた》

みたいなものに感銘を受けたのだろう。熱くBLについて語り始めた。

「お前にしかこのBL本は描けないんだ!いいぞぉ~!そのBLを描くという才能の花を咲かせてみろ!沼田ぁ!」

女子生徒達は

(えっ!?なにそれ見たい……)

という興味津々の表情をしていたが、男子達は空気を察したのか、

(まぁ、いいんじゃ……ない?)

という同情的な表情をしていた。『沼田さん』はというと、髪の毛を掻きむしり、

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

と叫んだ後は放心状態だった。
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