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四葉のクローバー

逆梅見

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高部は意識がないようで、地面に横たわっている。天邪鬼はかなり疲労しているようだが、ザシコに対し

「こっちのご主人様はよぉ、けけっ、俺と会った途端、やりたい放題やってやがんのな(笑)『理不尽な現実を捩じ伏せられる力が欲しい』とさ。だから少しばかし『力』と『タガ』を外してやっただけさ、ケケケケケ」

と挑発を止める気配はなかった。

「やはり下衆じゃの。我が妖刀 梅雨細波(ウメサメノサザナミ)が泣いておるわい……そろそろ……か」


「ザシコ~、ザ~シ~コ~!!!!」

後方から大きな聞き覚えのある声が二つ、恐山にこだまする。

「ようやっとか、馬鹿もんが」

ザシコ両頬を一瞬だけ緩ませ、また険しい顔に戻った。


「ケケケケッ、鴨がネギを背負ってきやがった。守りながら俺に勝てるかなぁぁぁぁぁ?!!!」

雪見は少し怯えながら言った。

「何このでかいの………とても悲しい気配がする」

「ザシコ、あれが天邪鬼の本体?」

僕はザシコにそう尋ねた。

「そうじゃ、そこにおれ。それと」

ヒュン、といなくなったと思ったら、次の瞬間気絶している高部が目の前にドサッと現れた。

「た、高部君……」

心配そうな雪見にザシコは優しく

「安心せい、『まだ』死んじゃおらん」

と諭した。

「じゃあそろそろ終演にするかの」

「マコ、これを持ってじっとしておれ」

ザシコから渡されたのは『梅雨(ウメサメ)』だった。

「ちょっと待って!この『梅雨』なしでやろうっての!?それは無謀すぎだよ!」

「そうよ!真人君がいくらザシコちゃんは強いって言っても武器なしじゃ……」

雪見も僕と同じ考えをしているようだった。

ザシコは腰に手を当てて、「はぁー」と呆れた顔をした後、僕が持っている『梅雨(ウメサメ)』を指さし、

「それは本来攻撃用ではない。それに護身妖刀なのじゃ。じゃからそれを持ってる間は、ある程度の範囲は不思議な力で守られる。わしはこれがあるけぇの」

そう言って鞘だけ持っていった。

(そうか、マコがわしのことを強いと……)

ザシコは嬉しそうだった。

「さあ、終わらせようか」

天邪鬼は本体も含め五体になり、そのうちの二体、僕たちの方へ突進してきた。

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ」

雪見は叫んだが、何故か僕は叫ばず、梅雨(ウメサメ)を鬼に向けて構えていた。

すると鬼が後一メートル位まで近づいた瞬間、骨と梅の花びらになった。もう一体上から襲ってきたやつも同様、骨と梅の花びらになった。とても綺麗な梅吹雪だった。これが『妖刀 梅雨ノ細波(ヨウトウ ウメサメノサザナミ)か……。見惚れているとザシコ方面から野太い悲鳴が上がる。間違いなく天邪鬼だ。そしてやはり野太い悲鳴の主は天邪鬼だった。

「ちくしょう、認めねぇ。こんなクソガキに負けるはずがねぇんだ。こんなに実力が……こんなに差があるわけねぇ!!さっきの二体も帰ってこねぇーしよぉぉぉぉぉ」

「言うとくが、二体が合流しようが変わらんがの。それと実力を測れるだけの力は出しておらん。」

「るっせえ!!」

「さてこの演目、このザシコが幕引きとさせて頂こうかの」

「何言ってやがる!まだだぁ!」







『梅見物語 十三章 逆梅見 』







距離が近かったわけでもないし、それほど大きな動作があったわけでもなく、可愛い少女が鞘をクルリと巧みに使って舞を舞った。ただそれだけ。ただそれだけなのに天邪鬼は言葉を発することなく骨と梅の花びらになってしまった。

「う~む、今回はイマイチじゃな」

スタッと着地する姿は梅の花が舞い散る中ということもあってだろうか、とても綺麗で優美な女性に見えた。
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