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フクジュソウ
正義感と言葉の刃
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優美ちゃんが自殺してから一週間後、体育館に全校生徒が集められた。校長先生の話は誰も聞いていなかった気がする。
「この学校で自殺したらしい」
「どこら辺で?」
「何年生?」
こんな言葉が飛び交ってたのは覚えている。教室に入り、担任の先生は涙を流して訴えていた。皆、目は伏せがちで、いかにも反省しているかのように。私もそうしていた。気持ちはそれぞれだと思う。ただ、圧倒的に「早く終わらないかなぁ」と思っている人が大半で、「死」を悼んでいる人なんて居たのかさえ疑問だったわ……私も含めて。むしろ、私が一番最悪なのかもしれない。度々脳裏に出てくる言葉は「何で今更学校に来たの?そして何でありがとうって告げた次の日死ぬの?」だもの。
一通りマニュアルのような説教が終わった後、イジメの有無についての紙が配られた。そこには「イジメられている所を見たことがあったか?」「イジメはどのようなものか?」「いつ頃からあったか?」とあくまでも「誰が」やったかの確信に触れない程度のものだった。私は書き殴ってやりたかった。でも出来なかった。自分のイジメで精一杯だったから。言い訳だよね。うん。
でもね、ある「勇気のある人」がこう書いたんだよ。「クラスメイトの花雲さんと出水さんと高部君が仲良くしてました」って。書かなくていいのにね……本当に。学校側は保護者説明会でイジメはなかったとしちゃった。そうよね、イジメがあったかもしれない状態から実は仲が良いクラスメイト、それも複数いましたって。そのうちさ、私達四人の喧嘩が理由で突発的に自殺したんじゃないかって学校で噂されて。三人とも顔も合わさなくなっちゃっ……た。グスッ……馬鹿すぎるよね私、自分で勝手な正義感で助けた気になってさ。仲良くしてやった的なさ。そのとばっちりを菜央ちゃんと弘康君が受けて。そしてありもしない噂でバラバラ。もう……どうすればいいか分からなかった。
三年の冬、突然メールが来たの。相手は菜央ちゃんからだった。内容はこうだった。
「小学二年の時、覚えてるかな?あの時かなりアタシビクビクしてたんだよね(笑)友達できるかなって。で、雪見が友達になってくれた。最後まで雪見が友達でいてくれた。それが何よりの幸せ。二人でお揃いの腕時計、ワザと時間を止めたよね。『このまま楽しい時間がずーっと続きますように』って願掛けでさ。私、着けていくね。」
だから、私は涙を流しながら
「当たり前だよ!菜央ちゃんは私の憧れなんだから!私の方こそ菜央ちゃんが転校してきてくれなかったら、ずっとひとりぼっちだった……時計も大事に飾ってるよ!今度一緒に持ってきて話そうよ!」
そう送ったの。返信は来なかったわ……。その日、菜央ちゃんは電車にはねられて死んでしまったの。そう、彼女が身を投げ出して自ら死を選択してしまったの。
これが私のかけがえのない友達「出水菜央」の、私の知っている全てよ。
雪見は涙を堪えながらベンチから腰を上げ、目的もなく歩き始めた。僕はかける言葉が見つからず、彼女の後に続くのが精一杯だった。
「この学校で自殺したらしい」
「どこら辺で?」
「何年生?」
こんな言葉が飛び交ってたのは覚えている。教室に入り、担任の先生は涙を流して訴えていた。皆、目は伏せがちで、いかにも反省しているかのように。私もそうしていた。気持ちはそれぞれだと思う。ただ、圧倒的に「早く終わらないかなぁ」と思っている人が大半で、「死」を悼んでいる人なんて居たのかさえ疑問だったわ……私も含めて。むしろ、私が一番最悪なのかもしれない。度々脳裏に出てくる言葉は「何で今更学校に来たの?そして何でありがとうって告げた次の日死ぬの?」だもの。
一通りマニュアルのような説教が終わった後、イジメの有無についての紙が配られた。そこには「イジメられている所を見たことがあったか?」「イジメはどのようなものか?」「いつ頃からあったか?」とあくまでも「誰が」やったかの確信に触れない程度のものだった。私は書き殴ってやりたかった。でも出来なかった。自分のイジメで精一杯だったから。言い訳だよね。うん。
でもね、ある「勇気のある人」がこう書いたんだよ。「クラスメイトの花雲さんと出水さんと高部君が仲良くしてました」って。書かなくていいのにね……本当に。学校側は保護者説明会でイジメはなかったとしちゃった。そうよね、イジメがあったかもしれない状態から実は仲が良いクラスメイト、それも複数いましたって。そのうちさ、私達四人の喧嘩が理由で突発的に自殺したんじゃないかって学校で噂されて。三人とも顔も合わさなくなっちゃっ……た。グスッ……馬鹿すぎるよね私、自分で勝手な正義感で助けた気になってさ。仲良くしてやった的なさ。そのとばっちりを菜央ちゃんと弘康君が受けて。そしてありもしない噂でバラバラ。もう……どうすればいいか分からなかった。
三年の冬、突然メールが来たの。相手は菜央ちゃんからだった。内容はこうだった。
「小学二年の時、覚えてるかな?あの時かなりアタシビクビクしてたんだよね(笑)友達できるかなって。で、雪見が友達になってくれた。最後まで雪見が友達でいてくれた。それが何よりの幸せ。二人でお揃いの腕時計、ワザと時間を止めたよね。『このまま楽しい時間がずーっと続きますように』って願掛けでさ。私、着けていくね。」
だから、私は涙を流しながら
「当たり前だよ!菜央ちゃんは私の憧れなんだから!私の方こそ菜央ちゃんが転校してきてくれなかったら、ずっとひとりぼっちだった……時計も大事に飾ってるよ!今度一緒に持ってきて話そうよ!」
そう送ったの。返信は来なかったわ……。その日、菜央ちゃんは電車にはねられて死んでしまったの。そう、彼女が身を投げ出して自ら死を選択してしまったの。
これが私のかけがえのない友達「出水菜央」の、私の知っている全てよ。
雪見は涙を堪えながらベンチから腰を上げ、目的もなく歩き始めた。僕はかける言葉が見つからず、彼女の後に続くのが精一杯だった。
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