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三つ葉クローバー
夢から覚めて
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次の日の朝、珍しく夢の内容を鮮明に覚えていた。いつもは少し時間が経つにつれて、記憶が曖昧になって、最終的に忘れてしまうのが普通なのだが。今回ばかりはそうではないらしい。お母さんの食事介助を終えた後、元栓やいろんな場所を確認をして、
「ヘルパーさんが来てる間、少し散歩してくる」
と言って、ヘルパーさんと鉢合わせにならない様に、少し早めに玄関を出た。終業式は昨日終えたのだから学校はない。だから暑い外に出る必要はないのだが、いかんせん心が落ち着かないのだ。
「えらく疲れておるのぉ。まぁ、無理ないがな。お前さん、そんな『重く』受け止める必要はないぞ?」
ザシコは僕を気遣ってくれているのか、いつもの生意気そうな口調ではなかった。
「うん。ありがとう。でもね、昨日こんな夢を見たんだ」
昨日の夢の内容を話すとザシコの目つきが変わった。
「大丈夫じゃ。ワシがついておる」
明らかに『何か』が起こる、そんな気がした。すると、玄関から出たばかりというのに、早速事が起きた。
「二木く~ん!!丁度よかった!家に来ちゃったっ⭐︎!」
出た!川名だ!何故か、彼がいつも乗っていたバイク「ズーマー」では無く、「カワサキ」になっていた。
「かっちょいいでしょ?中型免許取って、先輩に中古を売って貰ったんだ!!中古に見えないでしょ!いや~もうずっとブインブイン言わせまくりよ!!」
彼は朝から興奮しっぱなしだ。大体察しはつく。確実に「スゲー」とか褒めてくれるのは僕だという事だからだ。仕方ない、取り敢えず言っておくか。
「川名スゲーじゃん!何このバイク!カッコよすぎだろ!」
川名は「悦」の表情だった。ああ、今日はなんて朝だ。でも、さっきまでの重い雰囲気が和らいだ気がする。心の底からありがたいと思っていると
「そうだ、二木君。ニケツで海眺めに行こうよ!」
「いや、メット持ってないし……」
そう僕が言うと、彼は座席を開けてもう一個ヘルメットを取り出して僕に渡した。
「さぁ、行こうか!」
彼はバイクに跨りヘルメットを装着した。その表情は
「これから友達に良いとこ見せるぞ~!」
そのような表情だった。
そして、雪見との問題とは別の意味で、彼は僕の人生を狂わせていく……。目の前のバイクのせいで……。ザシコは僕に
「ヴァ、ヴァイクという物に乗ってみたいぞ!!」
と目を輝かせていた。僕はヘルパーさんの訪問で、川名に疑問を持たれないためにも、一刻も早くこの場から離れなければならない。そう思ったため、彼のヘルメットを装着してザシコを腰に捕まらせてバイクに跨った。その時、ふとある疑問が湧いてきた。僕は彼に聞いてみた。
「なぁ、僕の自宅、なんで知ってるの?」
川名はニコッとして
「菖蒲君の家に寄って二木君の家を聞いてきた!!」
「(菖蒲さんが?おかしいな……あの慎重な菖蒲さんがか?……何かのメッセージだろうか?いや、だったらメールや何かしらの知らせをして来るはず。何故なんだろう……)へ、へぇ」
ぎこちない返事の後、川名は
「あっそうだ!菖蒲君がね、二木君に『気張らない様に!』だってさ。なんかあったの??」
僕は少し俯いて口元を緩めた。そして
「さあ、少しだけしか時間ないけど行こうか!」
そう言ってバイクは走り出した。
「ヘルパーさんが来てる間、少し散歩してくる」
と言って、ヘルパーさんと鉢合わせにならない様に、少し早めに玄関を出た。終業式は昨日終えたのだから学校はない。だから暑い外に出る必要はないのだが、いかんせん心が落ち着かないのだ。
「えらく疲れておるのぉ。まぁ、無理ないがな。お前さん、そんな『重く』受け止める必要はないぞ?」
ザシコは僕を気遣ってくれているのか、いつもの生意気そうな口調ではなかった。
「うん。ありがとう。でもね、昨日こんな夢を見たんだ」
昨日の夢の内容を話すとザシコの目つきが変わった。
「大丈夫じゃ。ワシがついておる」
明らかに『何か』が起こる、そんな気がした。すると、玄関から出たばかりというのに、早速事が起きた。
「二木く~ん!!丁度よかった!家に来ちゃったっ⭐︎!」
出た!川名だ!何故か、彼がいつも乗っていたバイク「ズーマー」では無く、「カワサキ」になっていた。
「かっちょいいでしょ?中型免許取って、先輩に中古を売って貰ったんだ!!中古に見えないでしょ!いや~もうずっとブインブイン言わせまくりよ!!」
彼は朝から興奮しっぱなしだ。大体察しはつく。確実に「スゲー」とか褒めてくれるのは僕だという事だからだ。仕方ない、取り敢えず言っておくか。
「川名スゲーじゃん!何このバイク!カッコよすぎだろ!」
川名は「悦」の表情だった。ああ、今日はなんて朝だ。でも、さっきまでの重い雰囲気が和らいだ気がする。心の底からありがたいと思っていると
「そうだ、二木君。ニケツで海眺めに行こうよ!」
「いや、メット持ってないし……」
そう僕が言うと、彼は座席を開けてもう一個ヘルメットを取り出して僕に渡した。
「さぁ、行こうか!」
彼はバイクに跨りヘルメットを装着した。その表情は
「これから友達に良いとこ見せるぞ~!」
そのような表情だった。
そして、雪見との問題とは別の意味で、彼は僕の人生を狂わせていく……。目の前のバイクのせいで……。ザシコは僕に
「ヴァ、ヴァイクという物に乗ってみたいぞ!!」
と目を輝かせていた。僕はヘルパーさんの訪問で、川名に疑問を持たれないためにも、一刻も早くこの場から離れなければならない。そう思ったため、彼のヘルメットを装着してザシコを腰に捕まらせてバイクに跨った。その時、ふとある疑問が湧いてきた。僕は彼に聞いてみた。
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ぎこちない返事の後、川名は
「あっそうだ!菖蒲君がね、二木君に『気張らない様に!』だってさ。なんかあったの??」
僕は少し俯いて口元を緩めた。そして
「さあ、少しだけしか時間ないけど行こうか!」
そう言ってバイクは走り出した。
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