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双葉のクローバー

奇抜2

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電車から降りると川名が言った。

「二木君、少し付き合ってくれちゃってもいい??」

「別に時間がかからないなら良いよ」

僕の降りる駅は改札を出ると「スーパー」「服屋」「本屋」「食事処」がある。そして屋上には廃れたちょっとしたゲームセンターみたいなのがあり、そこを抜けると広場がある。もちろん、これといって面白いものがない、何もない所なので人がいない。

「二木君二木君!ちょいと一服」

そういうと彼はポケットからタバコを取り出し火をつけ、普通に吸い始めた。

「タバコを吸うためかよ!!」

思わず突っ込んでしまった。別に誰がタバコ吸おうが知ったことではない。そもそも自分はタバコを吸うわけでもない。かと言って「高校生がタバコを吸うなよ!」と咎めるつもりもサラサラない。つまり「タバコを吸う吸わないでその人を判断する」なんて事はしないのだ。まあ、もっと簡潔言えば「どうでもいい」のだ。すると川名が

「二木君も吸う?」

とタバコを一本差し出した。なので

「根性焼きしてもいいなら吸うけど?」

と返すと彼はゲラゲラ笑い、深くタバコ吸って吐き出したあと、

「やっぱ二木君は分かんないなぁ」

と言った。すると、警備員のおじさんらしき人が来た。

「おいお前ら、高校生だろう。何タバコを吸ってるんだ!」

と金剛力士像みたいな表情で怒鳴った。

「お前等の校章、縦高だな!名前は!学校に報告するからな!」

僕は内心(うわぁ、最悪だ……呼び出し確定じゃないか。ああああああ!!)

と思っていると川名が

「縦高の川名ッス!タバコ吸ってしまってごめんなさい。そして彼はタバコ吸ってませんよ。僕だけです、タバコ吸ってたの」

と軽い自己紹介をするかの如く言った。僕は驚いた。保身に走るどころか警備員の怒鳴り声に「普通」に顔色変えず答えたのだ。しかも、僕の無実を強調もせず伝えた。僕だったら「悪いのは自分です!彼は悪くない!」的な感じで相手を擁護するであろうに……。あくまで彼は「普通」に「サラッ」と僕の無実を伝えたのだ。

そしてその事に驚いていたのは僕だけではなかった。警備員のおじさんもこの「サラッと否定するし相手を擁護するスタイル」に鳩が豆鉄砲を食ったよう表情だった。そして僕に

「君も友達なら彼を注意してあげないとダメじゃないか」

と叱り、何故か自分語りを始めた。

「俺もなぁ、若い頃はタバコを吸いながらバイクでブイブイ言わせてたタチよ。あの頃は警察と~」

話が長い。なのに川名は

「えっ?ヤバくないっすか!マジっすか!」

の連発。そして警備員のおじさんは気を良くしたのか

「まあ、俺も若気の至りを経験した仲だ。今回は見逃す。今度からは別の所で吸いな!じゃあな」

と帰ってしまった。僕は心の中で

(吸うのは良いんかい!!)

と突っ込んでしまった。それを察知してたのかバッグの中からザシコがクスクス笑っているのが聞こえた。

「二木君、俺これから約束あるから!じゃっ!」

と言って唐突に僕達は別れた。学校に通報されるという絶望的な状況から、いつの間にか事を丸く収めた。それも自然な形で。そして脈略もなく「じゃっ!」と言って帰った。やはりこんな人間見たことがない。エレベータに乗り込む直前、僕はハッとして、バッグから顔だけピョコっと出したザシコを見つめ、

「お前……、分かっていたなぁ?」

と言った。ザシコは

「どうじゃ?面白そうな奴じゃろ?」

と嬉しそうな顔をしていた。
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