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双葉のクローバー

親愛なる天敵

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学校では恩人であり親友である「菖蒲さん」以外、僕の家庭事情を知らない。何故なら、言う必要がないからである。同情を引こうと思えばいくらでも引けると思う。でも僕は人を選ぶ。クラスのみんなに同情して欲しくない。居心地が良いクラスだからこそ、同情してもらうことで、腫れ物扱いにされたくないと言った方が良いのかもしれない。レアケースである「菖蒲さん」を除いて、同級生には知られていないのである。だが………そう上手く隠し通せないのが味噌の豚骨。奴が否応なしに介入しようとしてくるのである。「川名」だ。

僕が今までに会ったことがない、予測不能で、奇々怪界な存在である。というのも、同じクラスでありながら殆どつるんだりしない。かといって会ったりすれば軽い話はする。だが、帰りになるとそれは変わる。どうやら一年の時から私はヤンキーキャラに近い存在に位置付けられていたらしく、誰とも(そんな訳はないのだが)つるまず、学校が終了するとともに真っ先に下校する姿を見て、

「また二木君どこかにカチコミに行くのかな?」

と少し噂になっていたようだ。…………んなばかな!!

『余り学校で喋らない=特定の人としか仲良くしてない』

この構図がいつの間にか出来上がっていた。

僕が早く下校するのは、いつも乗る電車の二つドア(普通の電車だと席が横向きだと思いますが、京〇急行には二人席の車両があり、僕が研究して必ずその位置に停まって八割の確率で座れる場所をキープするため)なのである。なので、ヤンキーキャラなんて的外れもいいとこたい!!

しかし、仮に早めに着いたとしてもすぐに電車が来るわけではない。そのうちに、いろんな友達が集まるようになった。そんな場所になってしまったのは予想外であり、少しだけ嬉しかった。そしてその中に「川名」が潜んでいた。

川名はいい奴だ。彼独特の雰囲気と人を程よく茶化す、一般的に言えば『ムードメーカー』。「あぁ、人気者っていうのはこういう人のことなんだなぁ」と感心をしていたら、ある発言に私は固まってしまった。

「そういえば、バイクあるから二木君の家に行っていい??すぐ帰るから!え?大丈夫、大丈夫!俺、前から二木君を他の奴とは違うな~って感じててさ。なんか・・・・気に入ちゃったっ!!」


…………一難去ってまた一難、どう凌げば良い!ザシ……コ………?あっ!?あの小娘、川名の横にいる!奴の肩を持つ気か!!

ここからどうなるか分からない未来が、僕には堪らなくゾクゾクさせた。ちょっぴりの不安とワクワク。今まで母親の介護以降のことを確定事項と捉え、これから高校三年間変わることがないと考えていた僕にとって、自分の行動次第次第で事が動くという「自分主体」のシチュエーションに燃えていたのかもしれない。今思えば馬鹿だが、これが「若気の至り」というものなのかもしれない。

「いいぜ。でも今日、家では風呂の点検やるとか言ってた気がするし、点検車が駐車してるから駐車スペースないと思うんだ。それに、川名のバイクを見てみたいから、バイク置き場まで僕が行くよ。」

「わかった、ズーマーなんだけどね。2人乗りできないけど良い?」

「2人できないのか~、いや残念!大丈夫……うん、大丈夫!むしろ大丈夫!!」

「むしろ?」

「あ、いや、二人乗りだと疲れるじゃん?だからね、ほら、今回は見れるだけでも十分!!だから自宅は今度にしようよ!」

「そっか!それでな、俺、もうすぐ中免取って・・・・・・・・・・・・・・」

話は思いのほか弾んだ。

「じゃ、明日な!」ブロロロロロロ

彼はバイクで去っていた。

数秒フリーズして気が付いた………お母さんの介護ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

急いで帰って母お母さんに

「ご、ごめんね………」

と言うと、お母さんは

「おかえり!」

と言った後、指をさした。ベッドのコントローラーやテレビのリモコンが地面に落ちていた。
僕は罪悪感に苛まれた。友達と話している間、母はベッドのコントローラーを失って同じ体勢だったのだ。暗くなりつつ部屋で一人、誰がいつ帰ってくるかどれほど怖かったかとか。キツく無かったのか。いや。キツく無い訳がない。

自分がなんてクソで自己中で役立たずで親を大事にしない人でなしなのか。いつものルーティーンをこなしながら、壊れたカセットテープのように「申し訳ない、申し訳ない、申し訳ない」とお母さんに言っていた。

(こんな事は今まで無かったのに……川名め!)

僕は奴が敵なのか味方なのかよく分からなくなっていた(そもそもそんな話だったか??)
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