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第1章 追放
仕事をしない使用人 1
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(この人は何なんだろう?ねぇ大福。最近部屋に入って来るようになったこの人、誰か知ってる?)
今この部屋の中には、私と大福と、何がしたいのか分からない女の人が1人。
他の使用人と同じ服は着ているので、この家の使用人らしいんだけど、この人が仕事をしているのを見たことが無い。
お掃除はしない。私の世話もしない。
部屋に入って来ては、部屋の中を隅々まで観察し、じーっと私を見て、一方的にお話をして・・出て行く。
『レベル上げのために、鑑定してみるがいい。』
大福に言われて鑑定をかけると、鑑定で表示される画面が赤だった!
初めて色付きの画面を見た。
『低レベルの鑑定だが、危機察知はある程度できるようだな。赤は敵だ。気を付けるがいい。』
ちょっと大福さん、生後数ヶ月の赤ん坊が、どうやって気を付ければいいのよ!?
あなたは私を守護する存在じゃなかったの?守ってよ!!
名前:エマ・キャステロール
種族:人族
年齢:18
職業:暗殺者、カトレアのスパイ(一時的)
Lv:19
・
・
・
・
・
スキル:<闇魔法Lv.2><索敵Lv.1><短剣術Lv.2><弓術Lv.2><体術Lv.3>
神の恵み:<鑑定Lv.6/10><収納(小)>
加護:なし
称号:転生者
装備:貸与メイド服一式、暗器セット
(カトレア?)
『其方の生物学上の父親の、第一夫人だな。其方が優秀なスキルを持っていないか知りたいのであろう。この女の装備を見ると、もし持っているなら暗殺してしまおうと考えているようだな。』
(恐っ!)
『どうやら同じ転生者ではあるが、この者の鑑定では其方の【隠匿】は見破ることができないようだ。其方に1つもスキルがないことから、スキルがステータスに表示されるまで、毎日鑑定しに来るつもりのようだぞ。』
(うへぇ~・・あんまりじろじろ見られるの、嫌だなぁ。)
大福情報だと、彼女エマは、ほんの少しだけ前世の知識の欠片を持つ転生者とのこと。
通常8歳の鑑定の儀にならないとスキルは解放されないが、転生者の鑑定持ちの中には潜在スキルを見ることができる者がいるため、カトレアが人脈を駆使して、大金を払ってその能力を持つエマを雇ったようだ。
そろそろ子供を産むことが難しい年齢に差し掛かることもあり、未だスキルが解放されていない私を、必要であれば排除したいらしい。
カトレアは1度鑑定させればそれで終わると思っていたようだが、エマにはアリスティアナのスキルが鑑定できなかった。しかしそれはこの世界ではありえないことなので、スキルにモザイクがかかっている。ステータスにスキルが表示されるまで、時間が必要なのだろうと報告したところ、
「モザイクとは何だ!高い金を払ってやったのに、スキルの鑑定すらできないとは、この無能め!!」と石を投げつけられ、血まみれになったそうだ。
余談ではあるが、第一夫人のカトレアは気性が荒く、以前は手当たり次第にカップや花瓶を投げつけていた。
ある日「奥様、高価なティーセットや調度品を壊してしまうのは勿体のうございます。どうぞこちらをお使いください。」と、お付きの侍女長がいくつかの石を持ってきた。
実はこの石は魔道具で、衝撃が加えられると血のような液体が飛び出し、ぶつけられた方には衣類が赤く汚れてしまうという以外には、何の被害もでないという代物。
舞台の小道具として造られた魔道具をアレンジした特注品だった。
高価な物を感情的に次々と壊すカトレアに頭を抱えた執事長と侍女長が、三代目に使用人が叱られ給料を減らされたり、使用人が次々と怪我を理由に辞めてしまうことを防ぐために捻り出した、苦肉の策だった。
エマは少し特殊な家業を持つ準男爵家の次女であり、鑑定スキルがあることで、カトレアにアリスティアナのスキル鑑定を高額で依頼された。
カッとなってエマに石をぶつけて流血させてしまったカトレアだったが、背に腹は代えられず、アリスティアナのスキルがはっきりするまで、高い依頼料を支払い続けることにした。
暗殺業を生業とする家の令嬢を流血させてしまったことで、このままだと自分が暗殺されてしまうかもしれないとの考えに思い至ったためだった。
実はこのエマ、カトレアの長男ディルクに恋をしているとのこと!
エマはディルクに近付くチャンスと依頼を受けたのだが、長期間潜入するとなると、使用人としての経験が皆無であることが問題となった。
そこで、使用人歴が長い妙齢のエルというベテランの使用人と2人一組で、4人目の妻パトリシアの家族の担当に送り込まれた。
カトレアはエルに、エマはお世話になった方からお預かりしたご令嬢で、虚弱体質なので一切仕事をさせずに自由に過ごさせて欲しいと、多めの給料を約束して2人分の使用人としての仕事を依頼した。
エルは「もしもの時はアリスティアナを暗殺してしまおう計画」を知らない。
あの優しそうなおばさんもカトレアさんの関係者なんだ。
企みを知らされていないようだけど、なんかショックだ。
でも、これで2人の素性ははっきりした。
観察・鑑定されているのは気持ち悪いけど、この2人であれば気を付けていれば大事にはならないんじゃないかな。
この2人を追い払って、もっと厄介な人が送られてきたら、怖いもんね。
それにこのエマという転生者、赤ん坊には理解できないと思って、いろいろしゃべってくれるんだよねぇ。
今この部屋の中には、私と大福と、何がしたいのか分からない女の人が1人。
他の使用人と同じ服は着ているので、この家の使用人らしいんだけど、この人が仕事をしているのを見たことが無い。
お掃除はしない。私の世話もしない。
部屋に入って来ては、部屋の中を隅々まで観察し、じーっと私を見て、一方的にお話をして・・出て行く。
『レベル上げのために、鑑定してみるがいい。』
大福に言われて鑑定をかけると、鑑定で表示される画面が赤だった!
初めて色付きの画面を見た。
『低レベルの鑑定だが、危機察知はある程度できるようだな。赤は敵だ。気を付けるがいい。』
ちょっと大福さん、生後数ヶ月の赤ん坊が、どうやって気を付ければいいのよ!?
あなたは私を守護する存在じゃなかったの?守ってよ!!
名前:エマ・キャステロール
種族:人族
年齢:18
職業:暗殺者、カトレアのスパイ(一時的)
Lv:19
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スキル:<闇魔法Lv.2><索敵Lv.1><短剣術Lv.2><弓術Lv.2><体術Lv.3>
神の恵み:<鑑定Lv.6/10><収納(小)>
加護:なし
称号:転生者
装備:貸与メイド服一式、暗器セット
(カトレア?)
『其方の生物学上の父親の、第一夫人だな。其方が優秀なスキルを持っていないか知りたいのであろう。この女の装備を見ると、もし持っているなら暗殺してしまおうと考えているようだな。』
(恐っ!)
『どうやら同じ転生者ではあるが、この者の鑑定では其方の【隠匿】は見破ることができないようだ。其方に1つもスキルがないことから、スキルがステータスに表示されるまで、毎日鑑定しに来るつもりのようだぞ。』
(うへぇ~・・あんまりじろじろ見られるの、嫌だなぁ。)
大福情報だと、彼女エマは、ほんの少しだけ前世の知識の欠片を持つ転生者とのこと。
通常8歳の鑑定の儀にならないとスキルは解放されないが、転生者の鑑定持ちの中には潜在スキルを見ることができる者がいるため、カトレアが人脈を駆使して、大金を払ってその能力を持つエマを雇ったようだ。
そろそろ子供を産むことが難しい年齢に差し掛かることもあり、未だスキルが解放されていない私を、必要であれば排除したいらしい。
カトレアは1度鑑定させればそれで終わると思っていたようだが、エマにはアリスティアナのスキルが鑑定できなかった。しかしそれはこの世界ではありえないことなので、スキルにモザイクがかかっている。ステータスにスキルが表示されるまで、時間が必要なのだろうと報告したところ、
「モザイクとは何だ!高い金を払ってやったのに、スキルの鑑定すらできないとは、この無能め!!」と石を投げつけられ、血まみれになったそうだ。
余談ではあるが、第一夫人のカトレアは気性が荒く、以前は手当たり次第にカップや花瓶を投げつけていた。
ある日「奥様、高価なティーセットや調度品を壊してしまうのは勿体のうございます。どうぞこちらをお使いください。」と、お付きの侍女長がいくつかの石を持ってきた。
実はこの石は魔道具で、衝撃が加えられると血のような液体が飛び出し、ぶつけられた方には衣類が赤く汚れてしまうという以外には、何の被害もでないという代物。
舞台の小道具として造られた魔道具をアレンジした特注品だった。
高価な物を感情的に次々と壊すカトレアに頭を抱えた執事長と侍女長が、三代目に使用人が叱られ給料を減らされたり、使用人が次々と怪我を理由に辞めてしまうことを防ぐために捻り出した、苦肉の策だった。
エマは少し特殊な家業を持つ準男爵家の次女であり、鑑定スキルがあることで、カトレアにアリスティアナのスキル鑑定を高額で依頼された。
カッとなってエマに石をぶつけて流血させてしまったカトレアだったが、背に腹は代えられず、アリスティアナのスキルがはっきりするまで、高い依頼料を支払い続けることにした。
暗殺業を生業とする家の令嬢を流血させてしまったことで、このままだと自分が暗殺されてしまうかもしれないとの考えに思い至ったためだった。
実はこのエマ、カトレアの長男ディルクに恋をしているとのこと!
エマはディルクに近付くチャンスと依頼を受けたのだが、長期間潜入するとなると、使用人としての経験が皆無であることが問題となった。
そこで、使用人歴が長い妙齢のエルというベテランの使用人と2人一組で、4人目の妻パトリシアの家族の担当に送り込まれた。
カトレアはエルに、エマはお世話になった方からお預かりしたご令嬢で、虚弱体質なので一切仕事をさせずに自由に過ごさせて欲しいと、多めの給料を約束して2人分の使用人としての仕事を依頼した。
エルは「もしもの時はアリスティアナを暗殺してしまおう計画」を知らない。
あの優しそうなおばさんもカトレアさんの関係者なんだ。
企みを知らされていないようだけど、なんかショックだ。
でも、これで2人の素性ははっきりした。
観察・鑑定されているのは気持ち悪いけど、この2人であれば気を付けていれば大事にはならないんじゃないかな。
この2人を追い払って、もっと厄介な人が送られてきたら、怖いもんね。
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