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第50話 小学生の文章力
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「なんか部活が上手くいってないみたいなんだ」
やめてください姫嶋さん、今は仁君の話を聞きたくないです。
「弓道ってさ、精神力の世界でしょ。なんか雑念が酷いらしくてね」
部活の掛け持ちなんてやってるからですよ、その理由もヨコシマですし。
「心配だなぁ、仁君ああ見えて、落ち込みやすいから」
全然見えないです。仁君は陽キャの塊です。
「でもね、RIA部では天成君と会話してると楽しそうなんだよね」
それはたぶん僕じゃなくて、秋川です。
「こういうとき、男友達って羨ましいなぁって思っちゃったり?」
イケメン陽キャ妖怪と幼馴染な姫嶋さんのほうが羨ましがられませんか?
「もうRIA部に専念すればいいのにね」
弓道とかけ離れ過ぎてます。
「そんで異世界転生して弓の勇者様になっちゃったり? うわ~想像しただけでカッコ良いな」
なんですぐに転生させたがるんですか。確かにカッコいいですけど。
「でもでも一緒に転生した別の冴えないダメスキル持ちの男の子をバカにして、逆にザマァされたりしちゃって」
それはあり得そうで面白いです。
「まぁ結局最後は共闘して、良きライバルみたいな?」
姫嶋さん、異世界転生モノの知識が増えてるみたいですね。
「いいな~私も男の子に生まれ変わりたい」
その容姿は勝ち組なので、もっと自信持った方がいいですよ。
「転生したいなぁ……仁君も一緒に転生してくれないかなぁ」
結局その方向にいっちゃうのですね。
「ねぇ、なんでさっきから黙ってるの?」
「あっ、いや、その」
完全に会話しているつもりだった。
心の声は饒舌だけど、リアルな僕は仁君の話題を止められないし、洒落たツッコミもいれられない。
折角、姫嶋さんと2人だけの旅行なのに心臓が破裂しそうなくらいに緊張している。
「ねぇってば、聞いてる?」
ボディタッチ止めて下さい。
「じ、仁君なら大丈夫だと思います。きっと」
根拠のないセリフで乗り切るしかない。
「どうしてそう思うの?」
「い、異世界転生が飽和状態の創作界隈は、逆張り展開が好まれる傾向にあるので」
「そっち?」
「ど、どっちですか?」
アハハハハ、と姫嶋さんの笑い声が電車内に響いた。
「そっか、そうだよね、仁君は異世界行っても大丈夫だ。ならこっちの世界で上手くいってなくても大丈夫、悲観することはないってことだ」
「そ、そういうわけでは」
「心配し過ぎもよくないしね。にしても知り合いを転生させる妄想は楽しいかもしれないね。仁君が転生したらさぁ、スローライフとか始めそうじゃない?」
「そ、そうですね」
姫嶋さんが笑顔になるのは嬉しいことだけども、出てくるのが全部、仁君だ。
嫌だな、仁君の話題を楽しそうに話す姫嶋さんが嫌なわけじゃなくて、それを嫌だと思っている自分が嫌だ。
「あ、あの、姫嶋さん」
「なに?」
「ひ、姫嶋さんは仁君のこと」
こんな嫌な自分を断ち切りたい。
いっそのこと、ここで姫嶋さんが仁君をどう思っているかをハッキリ聞いておこう。僕の思いが届かない事を知れば、この嫌な自分は居なくなる。きっと……。
「ああ、そうだ、スローライフと言えば。最近、すっごい面白い小説と出会ったんだよ」
「えっ、あっ、あの文字嫌いって」
「だって天成君がWEB小説投稿サイトが色々あって面白いって言ったじゃん」
「そ、そうですけど」
「その中で、たまたま見つけたんだけど、ちょっと待ってね」
姫嶋さんはスマホを取り出して、画面を見せてきた。
「この【異世界の素晴らしき空と海と冒険を】って小説なんだけど」
そっ、それは、僕の書いている小説。
嘘だ、なんだこれ、ドッキリ?
ヤダ、怖い、身バレしてるってこと? いつの間に?
「ほ、本気ですか姫嶋さん」
「本気本気、なんか小学生みたいな文章だと思うんだけど、私好みの内容なんだよね。今の時代は小学生でも漫画家デビューしちゃう子いるもんね、いや~将来が楽しみだ」
僕の中のカタルシスが躍動を始めた。
やめてください姫嶋さん、今は仁君の話を聞きたくないです。
「弓道ってさ、精神力の世界でしょ。なんか雑念が酷いらしくてね」
部活の掛け持ちなんてやってるからですよ、その理由もヨコシマですし。
「心配だなぁ、仁君ああ見えて、落ち込みやすいから」
全然見えないです。仁君は陽キャの塊です。
「でもね、RIA部では天成君と会話してると楽しそうなんだよね」
それはたぶん僕じゃなくて、秋川です。
「こういうとき、男友達って羨ましいなぁって思っちゃったり?」
イケメン陽キャ妖怪と幼馴染な姫嶋さんのほうが羨ましがられませんか?
「もうRIA部に専念すればいいのにね」
弓道とかけ離れ過ぎてます。
「そんで異世界転生して弓の勇者様になっちゃったり? うわ~想像しただけでカッコ良いな」
なんですぐに転生させたがるんですか。確かにカッコいいですけど。
「でもでも一緒に転生した別の冴えないダメスキル持ちの男の子をバカにして、逆にザマァされたりしちゃって」
それはあり得そうで面白いです。
「まぁ結局最後は共闘して、良きライバルみたいな?」
姫嶋さん、異世界転生モノの知識が増えてるみたいですね。
「いいな~私も男の子に生まれ変わりたい」
その容姿は勝ち組なので、もっと自信持った方がいいですよ。
「転生したいなぁ……仁君も一緒に転生してくれないかなぁ」
結局その方向にいっちゃうのですね。
「ねぇ、なんでさっきから黙ってるの?」
「あっ、いや、その」
完全に会話しているつもりだった。
心の声は饒舌だけど、リアルな僕は仁君の話題を止められないし、洒落たツッコミもいれられない。
折角、姫嶋さんと2人だけの旅行なのに心臓が破裂しそうなくらいに緊張している。
「ねぇってば、聞いてる?」
ボディタッチ止めて下さい。
「じ、仁君なら大丈夫だと思います。きっと」
根拠のないセリフで乗り切るしかない。
「どうしてそう思うの?」
「い、異世界転生が飽和状態の創作界隈は、逆張り展開が好まれる傾向にあるので」
「そっち?」
「ど、どっちですか?」
アハハハハ、と姫嶋さんの笑い声が電車内に響いた。
「そっか、そうだよね、仁君は異世界行っても大丈夫だ。ならこっちの世界で上手くいってなくても大丈夫、悲観することはないってことだ」
「そ、そういうわけでは」
「心配し過ぎもよくないしね。にしても知り合いを転生させる妄想は楽しいかもしれないね。仁君が転生したらさぁ、スローライフとか始めそうじゃない?」
「そ、そうですね」
姫嶋さんが笑顔になるのは嬉しいことだけども、出てくるのが全部、仁君だ。
嫌だな、仁君の話題を楽しそうに話す姫嶋さんが嫌なわけじゃなくて、それを嫌だと思っている自分が嫌だ。
「あ、あの、姫嶋さん」
「なに?」
「ひ、姫嶋さんは仁君のこと」
こんな嫌な自分を断ち切りたい。
いっそのこと、ここで姫嶋さんが仁君をどう思っているかをハッキリ聞いておこう。僕の思いが届かない事を知れば、この嫌な自分は居なくなる。きっと……。
「ああ、そうだ、スローライフと言えば。最近、すっごい面白い小説と出会ったんだよ」
「えっ、あっ、あの文字嫌いって」
「だって天成君がWEB小説投稿サイトが色々あって面白いって言ったじゃん」
「そ、そうですけど」
「その中で、たまたま見つけたんだけど、ちょっと待ってね」
姫嶋さんはスマホを取り出して、画面を見せてきた。
「この【異世界の素晴らしき空と海と冒険を】って小説なんだけど」
そっ、それは、僕の書いている小説。
嘘だ、なんだこれ、ドッキリ?
ヤダ、怖い、身バレしてるってこと? いつの間に?
「ほ、本気ですか姫嶋さん」
「本気本気、なんか小学生みたいな文章だと思うんだけど、私好みの内容なんだよね。今の時代は小学生でも漫画家デビューしちゃう子いるもんね、いや~将来が楽しみだ」
僕の中のカタルシスが躍動を始めた。
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